子どもが寝静まった夜。久しぶりに、妻の肩にそっと手を伸ばしてみた。
「やめて、疲れてるの」
払われた手と、向こうを向いた背中。その隣で、天井を見つめたまま眠れない。
「もう男として見られていないのか」
「いったい何が悪かったんだろう」
こんな悩み、友人にも同僚にも話せませんよね。
こんにちは、看護師でライフコーチ、ディマティーニメソッドのファシリテーターの愛原百麗です。

この記事は、妻に拒否されて辛い思いをしている男性に向けて書いています。
最初にお伝えしたいのは、妻の拒否は、多くの場合「あなたという人」の否定ではないということです。
この記事では、妻がセックスを拒否する理由を、女性の立場から、そして看護師として体の面からもお伝えします。そのうえで、妻との関係を改善するためにできることと、ディマティーニメソッドの「価値の序列」という見方を使った、妻の心に届く伝え方をご紹介します。
妻を責める前に、そして離婚を考える前に。妻の本音を知るところから始めてみませんか。
この記事では
・妻に拒否されて辛いのは、あなただけではない
・妻がセックスを拒否する5つの理由
・妻に拒否されたときにやってはいけないこと
・妻との関係を改善するためにできること
・ディマティーニメソッドで見る妻の「価値の序列」と拒否の両面
・離婚を考えるほど辛いときに
について解説します。
ノートとペンを用意して、読み進めてみてくださいね。
無料PDFこの記事はワークシート付きです
記事の中でご紹介する『妻の拒否を両面から見る ワークシート(夫婦のセックスレス編)』(PDF・A4/2枚)を、無料でダウンロードできます。印刷して、そのまま書き込めます。
妻に拒否されて辛いのは、あなただけではない
一般社団法人日本家族計画協会の調査(2016年)では、結婚している人の47.2%が「この1か月間セックスをしなかった」と答えています。およそ2組に1組がセックスレスという計算です。
日本性科学会では、特殊な事情が認められないのに、カップルの合意した性交やセクシャル・コンタクトがいずれも1か月以上なく、その後も長く続くと予想される状態を、セックスレスと定義しています(1994年に定め、2024年に見直し)。

出典・参考資料
- 一般社団法人 日本性科学会「セックスレスについて」(セックスレスの定義。1994年に定め、2024年6月に見直し)
- 一般社団法人 日本家族計画協会「第8回 男女の生活と意識に関する調査」(2016年10〜11月実施。全国の16〜49歳の男女3,000人が対象、回答1,263人) 協会のサイト:www.jfpa.or.jp
- 調査結果の概要:nippon.com「セックスレスの既婚者、過去最高の47.2%に:2016年男女の生活・意識調査」(2017年2月23日)
拒否される側の辛さは、言葉にしにくい
妻に拒否されると、男性は「男としての自信」を大きく揺さぶられます。
誘うたびに断られる。断られるのが怖くて、もう誘えない。気づけば、妻と目を合わせることさえ、ぎこちなくなっている。
それなのに男性は弱音を吐きにくく、「こんなことで悩むなんて」と、自分で気持ちを押しこめてしまいがちです。押しこめた悲しみは、やがて妻への怒りや無関心に変わっていきます。
50代になって、さらに辛く感じるわけ
50代になると、「このまま一生、妻と触れ合うことはないのか」という寂しさが強くなる方もいます。
一方で、妻の側も閉経前後の体の変化(更年期)を迎えていることが多い年代です。50代のセックスレスには、夫婦それぞれの体の変化が関わっていることが少なくありません。
妻がセックスを拒否する5つの理由

先ほどの日本家族計画協会の調査で、女性がセックスに積極的になれない理由のトップは「面倒くさい」(22.3%)でした。次いで「出産後何となく」(20.1%)、「仕事で疲れている」(17.4%)が続きます。
「面倒くさい」と言われると、突き放されたように感じるかもしれません。でも、この言葉の奥には、言葉にしにくい本音が隠れていることが多いのです。
1. 心と体に余力がない
家事、育児、仕事。妻の毎日は、自分のための時間がほとんどないまま過ぎていきます。
夜、ようやく子どもが寝たとき、妻がいちばんほしいのは誰にも求められない、ひとりの時間と睡眠であることが少なくありません。「面倒くさい」は、「今のわたしには、もう余力がない」という意味であることが多いのです。
2. 出産後・授乳中の体と心の変化
出産後は、女性ホルモンのバランスが大きく変わります。特に授乳中は、性欲が落ちたり、腟が乾燥しやすくなったりすることがあります。
また、一日中赤ちゃんのお世話をしていると、心が「母親モード」になり、女性としての自分に切り替えにくくなるのも自然なことです。子どもがそばで寝ている部屋では気持ちが向かない、という女性も少なくありません。
3. 性交痛・更年期など体の不調
性交のときに痛みがあるのに、言い出せずに我慢してきた女性もいます。痛みの記憶があると、誘われるだけで体がこわばってしまいます。
40代後半から50代にかけては、閉経前後の女性ホルモンの減少によって腟が乾燥しやすくなり、痛みが出やすくなります。ほてりや気分の落ち込みなど、更年期の不調で心に余裕がないこともあります。
看護師としてぜひ知っておいてほしいのは、性交痛や更年期の不調は、婦人科で相談できるということです。潤滑ゼリーを使ったり、医師の判断で治療を受けたりすることで、楽になる場合もあります。
4. 小さな不満の積み重ね
「ありがとう」を言われない。名前のない細かな家事(名もなき家事)が、いつも自分にまわってくる。きつい言い方をされた。
一つひとつは小さなことでも、積み重なると、妻の心は少しずつ夫から離れていきます。そんな中で体だけを求められると、「そのときだけ優しい」「わたしは都合のいい存在なのかな」と感じてしまうのです。
多くの女性にとって、日常の気持ちのつながりは、体のつながりの土台です。
5. 夫を「家族」と感じるようになった
長く一緒に暮らすうちに、夫を「男性」というより、子どもの父親や頼れる同居人として見るようになることがあります。
これは愛情がなくなったのではなく、愛情の形が「家族」に変わった状態です。
どの理由にしても、多くは「あなたという人」の否定ではありません。妻自身の体と心の事情や、ふたりの関係の積み重ねが表れているのです。
妻に拒否されたときにやってはいけないこと
拒否が続くと、辛さが怒りに変わり、つい選んでしまいがちな行動があります。どれも、妻の心をさらに遠ざけてしまいます。
こんなこと、していませんか
・断られると不機嫌になる、ため息をつく、口をきかなくなる
・「夫婦なんだから、応じるのが当たり前」と迫る
・「月に何回なら」と、回数や頻度で交渉する
・ほかの夫婦や、昔の妻と比べる
・浮気や風俗で満たそうとする
断られたあとの不機嫌は、妻にとって「応じなければ嫌な思いをする」というプレッシャーになります。そうなると、妻はますます身構え、スキンシップそのものを避けるようになります。
また、夫婦であっても、同意のない性行為は許されません。2023年の刑法改正では、婚姻関係の有無にかかわらず不同意性交等罪が成立することが明記されました。
浮気や風俗は、知られれば妻の信頼を大きく損ない、慰謝料などの問題にもつながります。何より、あなたが本当にほしかった「妻とのつながり」から遠ざかってしまいます。
妻との関係を改善するためにできること

妻との関係を改善したいとき、いちばん大切なのは、体より先に心の距離を縮めることです。
1. 毎日の「ありがとう」を言葉にする
ご飯を作ってくれたとき、子どもを寝かしつけてくれたとき。「ありがとう」「助かったよ」を、照れずに言葉にしてみてください。
当たり前になっていることほど、言葉にされると心に届きます。
2. 名もなき家事を「手伝う」ではなく「担当する」

ゴミをまとめる、シャンプーを補充する、子どもの持ち物をそろえる。こうした名前のない家事を、言われる前に引き受けてみましょう。
ポイントは、「手伝おうか?」ではなく、「これは自分の担当」と決めて、最後までやりきることです。「頼まなくても、やってくれている」と妻が感じられることが、何よりの安心になります。
3. 妻がひとりになれる時間をつくる
週末の午前中、子どもを連れて出かけてみてください。
ひとりで眠れる、好きなことができる時間は、妻が心と体の余力を取り戻すいちばんの近道です。
4. その先を求めないスキンシップ

肩をもむ、手をつなぐ、「おつかれさま」とハグをする。ただし、その先を求めずに終わることが大切です。
触れるたびに「その先」を求められると、妻は触れられること自体を警戒するようになります。「触れても大丈夫」という安心が戻ってくると、心の距離も縮まりやすくなります。
5. 昼間に、責めずに気持ちを話す
話し合いは、寝室ではなく、休日の昼間など落ち着いた時間に。
「なんで拒否するんだ」と責めるのではなく、「君に触れられないのは、正直さみしい」と自分の気持ちを伝えたうえで、「君の気持ちも聞かせてほしい」と、妻の話を最後まで聞いてみてください。
妻が涙ぐんだり、話したがらなかったりしても、その日に答えを求めなくて大丈夫です。
6. 体の不調がありそうなら婦人科へ
痛みや更年期の不調がありそうなときは、「無理しないで」と伝えたうえで、婦人科での相談をすすめてみてください。
そのときも、「俺のために治して」ではなく、「君の体が心配だから」という伝え方が大切です。
ディマティーニメソッドで見る妻の「価値の序列」と拒否の両面

ここからは、わたしがファシリテーターを務めるディマティーニメソッドの見方をご紹介します。
ディマティーニメソッドをはじめて知った方は、どんな方法なのかを先にこちらで読んでおくと、このあとのお話がわかりやすくなります。
「面倒くさい」は価値の序列のサイン
ディマティーニメソッドでは、人それぞれが持つ「何を大切にするかの順番」を価値の序列(価値観の優先順位)と呼びます。
人は、価値の序列の上位にあることには、言われなくても時間とエネルギーを注ぎます。反対に、下位にあることは「面倒」「あとで」と感じやすくなります。
子育て中の妻の価値の序列の上位には、子どもの成長や家族の安心、そして自分の休息があることが多いものです。妻の「面倒くさい」は、今の妻の価値の序列の中で、夫婦の性生活の順番が下がっているというサインかもしれません。それは、あなたへの愛情がなくなったこととは別の話です。
妻が大切にしているものに沿って伝える
価値の序列がわかると、伝え方が変わります。
人は、自分の価値の序列の上位にあるものにつながる話には、自然と耳を傾けます。たとえば、妻がいちばん大切にしているのが子どもと家族の安心なら、こんなふうに伝えてみます。
「子どもが寝たら、15分だけふたりでお茶を飲みたい。君がひと息つける時間にもしたいし、俺たちが仲よくしていることは、子どもにとっても安心だと思うから」
このように、あなたの望みが、妻の大切にしているものにどう役立つかを添えて伝えるのです。
「拒否」にも見えていなかった面がある
ディマティーニメソッドには、A面・B面・C面という3つの見方があります。A面は相手の好きで賞賛している言動を、B面は相手の嫌いで許せない言動を、C面は亡くなった人や去っていった人との別れ、新しく現れた人との出会いを扱います。
妻に拒否されて辛い、許せないという気持ちは、このB面で扱うテーマです。B面では、嫌だと感じる言動が自分にもたらしていたプラス面を探していきます。たとえば、こんなプラス面です。
・家事や育児の分担を見直すきっかけになった
・妻の疲れや体の変化に気づけた
・自分の健康や生活習慣を見直せた
・妻との話し方を学び直すきっかけになった
そして、自分の中にも同じ面がないかも探します。
疲れている日に、妻の「ちょっと話を聞いて」を「あとでね」と後回しにしたことはないでしょうか。妻が求めていたものに、応えられなかったときはないでしょうか。
「拒否されてよかった」と思う必要はありません。ただ、「妻だけがひどい」という見方がゆるむと、妻への怒りが静まり、妻をひとりの人として落ち着いて見られるようになっていきます。
無料ダウンロード
妻の拒否を両面から見る ワークシート(夫婦のセックスレス編)(PDF・A4/2枚)
辛かった場面を書き出し、妻が大切にしているもの(価値の序列)と、「拒否」のマイナス面・プラス面、自分の中にある同じ面を探していくシートです。印刷して書き込めます。
※ディマティーニメソッドの考え方をもとにした、愛原百麗オリジナルのワークシートです(公式教材ではありません)。
離婚を考えるほど辛いときに
妻の拒否が何年も続くと、「離婚」という言葉が頭をよぎることもあると思います。
正当な理由のない拒否が長く続く場合、法律上の離婚理由(婚姻を継続しがたい重大な事由)として認められることがあります。ただし、産後や病気、更年期などの事情がある場合や、夫の側にも原因がある場合など、判断は事情によって大きく分かれます。具体的なことは、弁護士や法テラスに相談してください。
そのうえで、離婚を決める前に、次のことを振り返ってみてほしいと思います。
・妻の毎日の負担を、具体的に知っているか
・責めずに、妻の気持ちを最後まで聞いたことはあるか
・会話や信頼、感謝など、性以外のつながりは残っているか
・子どもがいる場合、子どもにとって何がいちばんいいか
怒りや悲しみが大きいときの決断は、あとで後悔につながりやすいものです。まずは自分の心を整えてから、これからを考えても遅くはありません。
よくある質問

Q. 妻が拒否するのは、もう愛情がないからですか?
そうとは限りません。疲れや体の変化、小さな不満の積み重ねなど、愛情とは別の理由で拒否していることが多いものです。
性への気持ちと、あなたへの愛情は、分けて考えてみてください。家族としての愛情は、しっかり残っていることも少なくありません。
Q. 妻に性欲がないわけではなさそうなのに、なぜ自分だけ拒否されるのでしょうか?
性欲があることと、「この人と触れ合いたい」と思えることは、別のものです。
妻の心に、まだ言葉にできていない不満や疲れがたまっているのかもしれません。まずは日常の信頼を取り戻すところから始めてみてください。
Q. 産後から拒否されています。いつまで待てばいいですか?
産後の体と心が回復するまでの期間には、個人差があります。授乳中や子どもが小さいうちは、性欲が戻りにくい女性も少なくありません。
「いつまで」と期限を決めて待つより、その間に家事・育児の分担や会話を通して、ふたりの関係を育てておくことが、再開のきっかけになります。
Q. 何年も拒否されています。もう改善しませんか?
長い年月のセックスレスでも、関係が変わっていく夫婦はいます。
ただ、改善を「回数を取り戻すこと」と考えると、焦りが生まれます。「ふたりが納得できる関係を見つけること」と考えるほうが、心が楽になり、結果として妻との距離も縮まりやすくなります。
Q. 男性でも相談できますか?
はい、もちろんです。妻に拒否されて辛い気持ちは、男性ほど誰にも話せずに抱えこみやすいものです。
わたしのセッションでは、男性からのご相談もお受けしています。カメラオフで参加できる無料Zoom相談もありますので、気軽にご利用ください。
妻に拒否されて辛いあなたへ

妻に拒否されて辛いのは、あなたが妻とのつながりを大切に思っているからです。その気持ちは、恥ずかしいものでも、わがままでもありません。
ただ、その辛さを怒りや不機嫌で表すと、妻の心はさらに遠ざかってしまいます。
妻を変えようとする前に、まず自分の心を整える。妻の大切にしているものを知り、ふたりの毎日を少しずつ変えていく。遠回りに見えて、それが妻の心に近づくいちばんの近道だと、わたしは思っています。
セッションを受けた方の声「妻と穏やかな雑談もできるようになりました」
妻との関係をテーマにセッションを受けてくださった男性から、こんな感想をいただきました。
セッションをありがとうございました。
妻とは長年冷え切った関係だと思ってました。
(中略)
ですが、妻のことのみならず原因は思春期の時の自分の容姿を、からかわれたことにまで遡っていました。
また、兄弟は男だし、子どもも息子3人で女性の気持ちは分からないと思い込んでました。
(中略)
セッション後、妻とは冷静に穏やかな雑談もできるようになりました。
Y・K(40代・男性)
Y・Kさんは、妻との関係の悩みを入り口に、思春期に容姿をからかわれた経験や、「女性の気持ちは分からない」という思い込みにも向き合いました。
妻との関係の悩みに見えて、その奥に自分自身の過去の経験や思い込みが隠れていることは少なくありません。そこに気づくと、妻の見え方も、ふたりの間の空気も変わっていきます。
ひとりでプラス面を探すのがむずかしいときは、誰かと一緒に探したほうが早いところだと思っています。
セックスレスで妻が拒否する理由と改善のまとめ
- 結婚している人のおよそ2組に1組がセックスレス。妻に拒否されて辛いのは、あなただけではない
- 妻が拒否する理由は余力がない・出産後の変化・痛みや更年期・小さな不満の積み重ね・夫を家族と感じるの5つ。多くは「あなたという人」の否定ではない
- 不機嫌や「夫婦の義務」で迫ることは、妻をさらに遠ざける。夫婦でも同意のない性行為は許されない
- 改善のカギは「ありがとう」・名もなき家事の担当・妻のひとり時間・その先を求めないスキンシップで、体より先に心の距離を縮めること
- 妻の「面倒くさい」は価値の序列のサイン。妻の大切にしているものに沿って伝えると、言葉が届きやすくなる
- B面の見方で「拒否」のプラス面と自分の中の同じ面を探すと、妻への怒りが静まっていく
今日、妻に「ありがとう」をひとつ、言葉にして伝えてみてくださいね。
妻との心の距離を、もう一度縮めたいあなたへ
誰にも言えなかった辛さを、まずは安心して話してみませんか。妻の価値の序列と「拒否」の見えていなかった面を、一緒に探します。男性からのご相談もお受けしています。
文章でのご相談もできます。無理な勧誘はいたしません。
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