「どうして、あんな話を信じてしまったんだろう」
「家族にも友だちにも、恥ずかしくて言えない」
「夜になると、だまし取られたお金のことばかり考えてしまう」
詐欺にあってから、そんな気持ちで、眠れない夜を過ごしていませんか。
こんにちは、看護師でライフコーチ、ディマティーニメソッドのファシリテーターの愛原百麗です。看護師として働いて、39年になります(2026年時点)。

じつは、形はちがいますが、わたし自身にも、信じた相手に大きなお金を差し出した経験があります。20歳のころに入信した新興宗教で、「救われるためには献金が必要だ」という指導のもと、最終的には数千万円を献金しました。教会の責任者にすすめられて、消費者金融から借金をしてまで、献金を続けた時期もあります。「こんなにまじめに尽くしてきたのに、どうしてわたしは幸せになれないのか」。そう嘆きながら、長いあいだ、苦しさを抱えて生きてきました(くわしくはプロフィールに書いています)。
この記事では、詐欺にあってメンタルがつらいあなたに、いまの心の状態がわかるセルフチェックと、まずやるべき手続き、そして詐欺被害から立ち直るための心のケアをお伝えします。
先に結論をお伝えすると、詐欺にあってメンタルがつらいのは、あなたが弱いからでも、愚かだからでもありません。詐欺は、人の心のしくみを知りつくした相手が、あなたのいちばん大切なものをねらって仕掛けてくるものです。眠れない、自分を責める、誰にも言えない。それは、大きなショックを受けたときの自然な心の反応です。まずは手続きで「やるべきこと」を済ませ、心は「責める」より「いたわる」。そして、気持ちが落ち着いてきたら、この体験のもう片方の面を見ていくことで、少しずつ立ち直っていけます。
いまも、お金を求められているときは:この記事を読むより先に、警察(急ぐときは110番、相談は #9110)と、振込先の金融機関に連絡してください。
この記事では
・詐欺にあった後のメンタルをチェック(セルフチェック付き)
・詐欺にあうのは、あなたが愚かだからではない
・詐欺にあったら、まずやること(二次被害に注意)
・詐欺被害から立ち直る方法|心のケア6ステップ
・家族が詐欺にあったときの接し方
・看護師として伝えたい、受診・相談の目安
・ディマティーニメソッドで見る詐欺被害
・書き込める『詐欺被害から心を立て直すワークシート』
について解説します。
自分を責めながら、この記事を開いてくださった方もいるかもしれません。あなたは悪くありません。そのことも、あわせてお伝えしていきますね。
無料PDFこの記事はワークシート付きです
記事の中でご紹介する『詐欺被害から心を立て直すワークシート』(PDF・A4/2枚)を、無料でダウンロードできます。印刷して、そのまま書き込めます。
詐欺にあった後のメンタルをチェック|いまの心の状態を知る
詐欺にあったあとは、心にもさまざまな反応が起こります。まずは、いまのあなたにあてはまるものをチェックしてみましょう。
セルフチェック
詐欺にあったあとの、いまの心の状態をチェック
あてはまるものに、チェックを入れてください(10問)。
※この結果は、ご自身の心の状態をふり返るための目安です。医学的な診断ではありません。
チェックした項目は、次の5つの心の反応にわかれています。どれも、大きなショックを受けたときの自然な反応です。ひとつずつ見ていきましょう。

1. 眠れない・何度も思い出す
詐欺にあったと気づいた日から、夜になかなか眠れない。眠っても、途中で目がさめてしまう。家事をしていても、ふとした瞬間に、電話の声やメッセージの文面がよみがえる。
これは、強いショックを受けたときに、心と体が「危険はもう去ったのか」を確かめようとして起こる反応です。事故や災害、突然の別れなど、大きな出来事のあとには、多くの方に同じような反応が見られます。
イギリスで、約800人の詐欺被害者やその家族に聞きとりをした研究(Button ら, 2014)でも、詐欺の被害は、お金だけでなく、心の不調や体の不調、家族関係のこじれにまで広がることが報告されています。詐欺は「お金だけの問題」ではありません。心が傷つくのは、当然のことなのです。
2. 「どうして気づけなかったのか」と自分を責める
「あのとき、電話を切っていれば」「どうして、あんな話を信じたんだろう」。詐欺にあった方の多くが、何度も自分を責めます。

けれども、それは心理学で「後知恵(あとぢえ)バイアス」と呼ばれる心のくせかもしれません。結果を知ったあとでふり返ると、人は「最初からわかっていたはずだ」「気づけて当然だった」と感じやすくなります。アメリカの心理学者フィッシュホフの実験(1975年)では、出来事の結果を知らされた人は、知らされていない人よりも、「その結果は予想できた」と高く見積もりました。
その場にいたあなたには、いまのあなたが知っている「答え」は、見えていませんでした。しかも相手は、あなたが気づかないように、何重にも手を打っていたのです。
3. 恥ずかしくて、誰にも言えない
「だまされたなんて、恥ずかしくて言えない」「家族に知られたら、責められる」。そう思って、ひとりで抱えこんでいる方は、とても多いものです。
でも、ひとりで抱えるほど、自分を責める声は大きくなります。詐欺をする側は、被害にあった人が「恥ずかしくて言えない」ことも、計算に入れています。「このことは、誰にも言わないでください」と口止めするのも、そのためです。話せないのは、あなたが悪いからではなく、そう仕向けられてきたからなのです。
4. 「お金を取り戻したい」と焦ってしまう

失ったお金を、早く取り戻したい。そう思うのは、ごく自然なことです。けれども、この焦りにつけこむ「二次被害」があります。「詐欺の被害金を取り戻します」とうたう業者に、調査費や着手金を払ったのに、何も戻ってこなかった、というものです。くわしくは、このあとの「まずやること」でお伝えしますね。
5. 人を信じるのがこわくなる
知らない番号から電話が鳴るだけで、胸がドキッとする。人の親切や、ちょっとしたいい話も、「何か裏があるのでは」と疑ってしまう。
信じていた相手に裏切られたのですから、心が警戒モードになるのは自然なことです。しばらくは、その警戒心があなたを守ってくれます。ただ、警戒がずっと続くと、まわりの人とのつながりまで細くなり、心はますます孤立してしまいます。安心できる人とのつながりを、少しずつ取りもどしていきましょう。
詐欺にあうのは、あなたが愚かだからではない
詐欺は、心のしくみを知りつくしたプロの手口
警察庁のまとめでは、2025年(令和7年)の特殊詐欺の被害は、約2万7,800件・約1,423億円でした。SNSで知り合った相手にだまされる投資詐欺やロマンス詐欺もあわせると、4万件をこえ、被害額は3,200億円以上になります。毎日100件をこえる被害が、どこかで起きている計算です。
イギリスの公正取引庁が2009年にまとめた研究では、詐欺の被害にあった人は、あわなかった人よりも、その分野(宝くじや投資など)の知識や経験が多いことも少なくなかったと報告されています。また、被害にあった人は、話をよく考えずに飛びついたのではなく、むしろ時間をかけて検討していた傾向もありました。
詐欺の手口は、「信頼」や「権威」、そして「不安」や「欲」といった気持ちに訴えて、冷静に考える力を弱めるように作られています。研究者たちも、被害にあった人を「欲深い」「だまされやすい」と決めつけるのは役に立たない、と述べています。
だまされたのは、大切なものを守ろうとしたから

詐欺の手口をよく見ると、どれも、その人がいちばん大切にしているものをねらっていることがわかります。
家族を大切にしている人には、「息子さんが事故を起こした」。将来の安心を大切にしている人には、「必ずもうかる」。愛やつながりを大切にしている人には、「あなただけを愛している」。まじめで、信用を大切にしている人には、「あなたの口座が犯罪に使われている」。2025年に大きく増えた、警察官をかたる詐欺も、このまじめさにつけこむ手口です。
大切なものがおびやかされると、人は「早く守らなければ」と急ぎます。急ぐほど、立ち止まって考える余裕はなくなります。あなたがだまされたのは、愚かだったからではありません。大切なものを、必死で守ろうとしたからです。
詐欺にあったら、まずやること|心を守るための手続き
心のケアの前に、まず、これ以上被害を広げないための手続きをしておきましょう。「やるべきことはやった」と思えることも、心を落ち着かせる助けになります。
1. 振込先の金融機関に、すぐ連絡する
相手の口座が凍結されれば、「振り込め詐欺救済法」にもとづいて、口座に残ったお金が被害者に分配されることがあります。時間がたつほど、お金は引き出されてしまいます。
2. 警察に相談する
最寄りの警察署か、警察相談専用電話「#9110」へ。いまもお金を求められているなど、急ぐときは110番へ。
3. カード会社・電子マネーの会社にも連絡する
クレジットカードや電子マネー、暗号資産などで支払ったときは、その会社にも連絡します。
4. 消費者ホットライン「188」に相談する
最寄りの消費生活センターにつながり、何をすればいいかを一緒に考えてくれます。
5. 記録を残す
メッセージ、通話の履歴、振込明細、相手の名前や口座、サイトの画面など。消してしまわずに、スクリーンショットなどで残しておきます。
「お金を取り戻せる」という連絡に注意(二次被害)
詐欺の被害にあった人のもとには、「被害金を取り戻します」「あなたの被害は回復できます」といった連絡や広告が届くことがあります。なかには、調査費や着手金だけを払わせて何もしない業者や、それ自体が詐欺というケースもあります。消費生活センターなども、「被害を救済します」とうたう業者や、「返金します」と言ってLINEなどに誘導する手口に、注意をよびかけています。
「必ず取り戻せる」と言いきる。急いで契約させようとする。LINEなどで連絡をとろうとする。そんなときは、すぐにお金を払わずに、消費者ホットライン「188」や、法テラス(日本司法支援センター)、各地の弁護士会の相談窓口に相談してください。あなたの「取り戻したい」という気持ちは、まっとうなものです。だからこそ、その気持ちをねらわれないように守りましょう。
「声をあげるのは、攻撃的では」とためらうとき
相手が知り合いや、信頼していた人だったとき。「相手にも家族がいる」「悪い人には見えなかった」と、被害を届け出たり、相談したりすることに、ためらいを感じる方もいます。
わたしにも、そんな時期がありました。相手の方々にも家庭があるし、一生懸命なのだから、と同情する気持ちがわき、声をあげるのは、むしろわたしが攻撃的になることではないかと悩みました。自分だけががまんすれば、平和に丸くおさまる。そう思って、長いあいだ黙ってきたのです。
でも、被害にあった人にできることは、自分がどんな体験をしたのか、事実をありのままに伝えること。そして、そのあとの判断は、専門家にゆだねることです。
被害を届け出たり、専門家に相談したりすることは、相手を攻撃することではありません。事実を明らかにして、判断を、その役割をもつ人たちにまかせることです。それは、同じ被害にあう人を減らすことにもつながります。相手の中だけで通じるルールがあるときは、当事者どうしで話しても、平行線になりがちです。そんなときこそ、ひとりで向き合わずに、専門家に間に入ってもらいましょう。
詐欺被害から立ち直る方法|心のケア6ステップ
手続きを済ませたら、次は心のケアです。ここからは、詐欺被害から立ち直るための6つのステップをお伝えします。順番どおりでなくてもかまいません。いまのあなたにできそうなものから、ひとつずつ試してみてください。

1. まず、眠る・食べる・休む
ショックを受けたあとの心は、体の状態に大きく左右されます。眠れない日が続くと、自分を責める考えは、どんどん大きくなります。まずは温かいものを口にして、横になる時間をとってください。
眠れないときは、目を閉じて横になるだけでも、体は休まります。お酒で眠ろうとすると、眠りが浅くなり、夜中に目がさめやすくなるので、控えましょう。
2. 自分を責める声に、「友だちならどう言う?」で返す
「わたしはバカだ」という声が聞こえてきたら、こう考えてみてください。大切な友だちが同じ目にあったら、あなたはなんと声をかけますか?
きっと、「バカだったね」とは言わないはずです。「あんなに巧妙だったら、誰だってだまされるよ」「話してくれて、ありがとう」。その言葉を、自分にもかけてあげてください。
自分への思いやりのことを、心理学では「セルフ・コンパッション」と呼びます。アメリカのブラインズとチェンの研究(2012年)では、失敗をふり返るときに、自分を責めるのではなく、思いやりをもって受けとめた人のほうが、同じ失敗をくり返さないための努力を、より多くする傾向がありました。自分をいたわることは、甘やかしではありません。次に進むための力になるのです。
3. 信頼できる人に、ひとりだけ話してみる
全員に話す必要はありません。家族、友だち、昔からの知り合い。「この人なら、責めずに聞いてくれそう」と思える人に、ひとりだけ話してみてください。身近な人に話しにくいときは、消費生活センターや、よりそいホットライン(0120-279-338・24時間)のような相談窓口でもかまいません。
口に出して話すと、頭の中でぐるぐるしていた考えが、少しずつ整理されていきます。そして、「話しても、責められなかった」という体験が、こわばっていた心をゆるめてくれます。
4. 気持ちを紙に書き出す
誰かに話すのがまだつらいときは、紙に書くことから始めましょう。アメリカの心理学者ペネベーカーらの研究(1986年)では、つらい出来事と、そのときの気持ちを、1日15分ほど、4日間続けて書いた人たちは、その後の数か月、体調をくずして受診する回数が少なかったと報告されています。
きれいな文章にしなくて大丈夫です。誰にも見せない前提で、起きたこと、そのとき感じたこと、いま感じていることを、思いつくまま書いてください。書いている最中は、一時的に気持ちが沈むこともありますが、それも自然な反応です。苦しくなりすぎたら、そこで手を止めてくださいね。
5. 「失ったお金」と「自分の価値」を切り離す
大きなお金を失うと、「わたしには価値がない」「家族に迷惑をかけるだけの人間だ」と感じてしまうことがあります。けれども、失ったのはお金であって、あなたの価値ではありません。
あなたがこれまで家族のためにしてきたこと、仕事でつちかってきたこと、誰かを思いやってきたこと。それは、だまし取られたお金とは、まったく別のところにあります。お金の問題は、お金の問題として、専門家と一緒に整理していきましょう。生活費が足りない、借金の返済が難しいといったときは、法テラスや、お住まいの自治体の生活の相談窓口に相談できます。
6. 「取り戻す」より「これからを守る」に力を使う
気持ちが少し落ち着いてきたら、「これからの自分を守るルール」を決めてみましょう。たとえば、「お金の話は、その場で決めない」「振り込む前に、必ず家族に話す」「知らない番号には出ずに、留守番電話にする」などです。
わたし自身、以前、弁護士さんから教わった大切なことがあります。それは、「相手の話を聞いても、その場では決めない。話や連絡先を聞いたら、いったん持ち帰り、家族や友人、知人、専門家に尋ねる」ということです。このルールがあるだけで、「わたしがなんとかしなければ」という焦りに、振りまわされずにすむのです。
家族が詐欺にあったときの接し方
親やパートナーが詐欺にあったと知ったとき、「どうしてそんなものにひっかかったの!」と言いたくなるかもしれません。でも、いちばん自分を責めているのは、被害にあった本人です。

・まず「話してくれて、ありがとう」と伝える
・「どうして」と、理由を問いつめない
・金融機関・警察・188への連絡を、一緒に進める
・お金の管理は、責める形ではなく、「これから一緒に守る」形で話し合う
・眠れない、食べられないといった様子が続くときは、受診をすすめる
高齢の親が、短いあいだに何度も被害にあう、同じ話を何度もくり返す、お金の管理がむずかしくなってきた。そんなときは、物忘れなど、認知機能の変化がかくれていることもあります。看護師としては、地域包括支援センターや、かかりつけ医に一度相談してみることをおすすめします。
看護師として伝えたい、受診・相談の目安
次のようなときは、ひとりで立ち直ろうとするよりも、心療内科や精神科に相談してください。
・眠れない、食べられない、何も手につかない状態が2週間以上続いている
・仕事や家事が、ほとんどできなくなっている
・だまされた場面が何度もよみがえり、強い動悸や息苦しさがある
・お酒の量が増えている
・「消えてしまいたい」「死んでしまいたい」と思うことがある
大きなお金を失ったあとに、うつ状態になる方もいます。受診は、弱さではありません。心が回復するための、大切な手段のひとつです。
「消えてしまいたい」と感じるときは
ひとりで抱えずに、いますぐ話を聴いてもらってください。
・こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
・よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
・詐欺の相談:警察相談専用電話 #9110/消費者ホットライン 188
※番号は変わることがあります。厚生労働省「まもろうよ こころ」でも、相談窓口を探せます。
ディマティーニメソッドで見る詐欺被害|「失っただけの体験」で終わらせない

手続きを済ませ、少しずつ眠れるようになってきても、「あの体験さえなければ」という思いは、なかなか消えないかもしれません。
わたしがファシリテーターを務めるディマティーニメソッドでは、つらい出来事にも、見えている面と、まだ見えていない面の両方があると考えます。詐欺にあったあと、心は「失ったもの」と「自分の落ち度」だけで、いっぱいになります。けれども、その体験があなたにもたらしたものも、じつは同じだけ存在しています。そこに少しずつ光をあてていくことで、体験は「失っただけの出来事」ではなくなっていきます。
※これは、相手のしたことを「よかった」と認めたり、相手を許したりするためのものではありません。詐欺の責任は、だました側にあります。手続きや法的な対応は、それとは別に、きちんと進めてください。また、気持ちがまだ生々しいうちは、無理に取り組まなくて大丈夫です。
わたしが、教会の責任者に感謝の手紙を書けるまで
20歳のころ、わたしは、准看護師として働きはじめた職場で出会った先輩の看護師をとおして、キリスト教から派生した新興宗教に入信しました。幼いころからのつらい体験で、明るい未来を思い描けなかったわたしは、「なんとかしなければ」と、藁にもすがる思いでした。
「救われるためには献金が必要だ」という指導のもと、最終的には数千万円を献金しました。教会の責任者にすすめられ、消費者金融から借金をしてまで献金を続けた時期もあります。どれだけ献金しても、次から次へと求められ、「わたしはいつ救われるのか」「ゴールはどこなのか」とたずねても、はっきりした答えは返ってきませんでした。
長いあいだ、わたしは「こんなにまじめに尽くしてきたのに、どうして幸せになれないのか」と嘆き、人や社会のせいにして生きていました。
転機は、ディマティーニ博士から直接ファシリテーションを受けたセミナー(ブレイクスルー・エクスペリエンス)でした。わたしが、いちばん大きな感情の負荷を抱えていた教会の責任者に、涙ながらに感謝の手紙を書くことができたのです。自分が見ていた世界がとてもかたよっていたこと、そのかたよりが自分の人生をつくってきたことが、頭ではなく、心でわかりました。
そして、献金と借金の体験そのものにも、ディマティーニメソッドで向き合いました。
ディマティーニメソッドのB面(相手の嫌いで許せない言動を扱う見方)には、相手の中に見ている姿を、自分の中にも探していく「鏡」のような見方があります。それを続けるうちに、わたしは、自分が責めていた相手と同じ面が、自分の中にもあったことに気づきました。自分のことをより深く知り、人間や世界のバランスが見えたとき、わたしは号泣しました。
※これは、わたし自身が、長い時間をかけてたどりついた気づきです。被害にあったばかりの方が、自分を責めるために使うものではありません。詐欺の責任は、だました側にあります。
事実を伝えて判断を専門家にゆだねることと、体験の両面を見ていくことは、どちらか一方を選ぶものではありません。前者は事実を明らかにすること、後者は、自分の心のかたよりを整えることだからです。
あの体験そのものが、消えたわけではありません。それでも、わたしにとって、あの体験は「失っただけの出来事」ではなくなりました。いまこうして、同じように苦しんでいる方のお話を聴かせていただけるのも、あの体験があったからです。わたしの歩みは、プロフィールにくわしく書いています。
セッションを受けてくださった方からも、こんな声をいただいています。
一昨年から新店舗をオープンしたものの、ネガティブなお客様の対応や、信頼していたスタッフの裏切りと借金が膨らむ状態。(中略)セッションを受けて涙が止まりませんでした。(中略)息子の態度や夫への不満も、スタッフの裏切りも全てが私の理想へいくための試練だったと腑に落ちたのです。感謝で号泣しました。
サロン経営 M.Mさん
長男、次男の小さな頃にしてしまった出来事に対し、自己否定し続けて、今でもずっと罪悪感を感じていたけど、その出来事から今現在の彼らの心身の成長や素晴らしい特性に気付けて、当時の自分を昇華してあげることができたことが、ものすごく大きかった。
ひーくん(30代)
一番印象的だったのは、出来事の瞬間に戻る度に、感じ方が変わっていくのに驚きを感じました。自分の物語から抜け出し、ただの出来事になるような感覚。眺めるような感覚になりました。
くにえ(40代)
※個人の感想です。感じ方は人それぞれで、同じ結果をお約束できるものではありません。
ひとりでできる「両面を見る」ワーク
気持ちが少し落ち着いてきたら、次の順番で書き出してみてください。
- この体験で「失ったもの・つらかったこと」を書き出す
- いまの心のつらさを、0〜10でつける
- この体験があなたにもたらしたもの(気づいたこと・身についた力・人とのつながり・これからに生かせること)を、失ったものと同じ数になるまで探す
- だまされたとき、自分が守ろうとしていた「大切なもの」を書く
- 書き終えたら、もう一度、心のつらさを0〜10でつける
例:投資の話にだまされて、貯金の一部を失った
→ 失ったもの:貯金の一部/家族に心配をかけた/人を信じる気持ち
→ もたらしたもの:お金のことを、家族と正直に話し合えるようになった/「困ったら相談していい」と思えた/同じ目にあった人の気持ちが、わかるようになった
→ 守ろうとしていた大切なもの:老後の安心と、家族に迷惑をかけないこと
最初は、ひとつも出てこないかもしれません。それで大丈夫です。つらさが大きいほど、失ったものばかりが大きく見えるからです。何日かに分けて、ゆっくり探してみてください。
参考
- 警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」
- 金融庁「振り込め詐欺等の被害にあわれた方へ」
- Button, M., Lewis, C., & Tapley, J. (2014). Not a victimless crime: The impact of fraud on individual victims and their families. Security Journal, 27(1), 36–54.
- Fischhoff, B. (1975). Hindsight ≠ foresight: The effect of outcome knowledge on judgment under uncertainty. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 1(3), 288–299.
- Lea, S., Fischer, P., & Evans, K. (2009). The psychology of scams: Provoking and committing errors of judgement. Office of Fair Trading.
- Breines, J. G., & Chen, S. (2012). Self-compassion increases self-improvement motivation. Personality and Social Psychology Bulletin, 38(9), 1133–1143.
- Pennebaker, J. W., & Beall, S. K. (1986). Confronting a traumatic event: Toward an understanding of inhibition and disease. Journal of Abnormal Psychology, 95(3), 274–281.
- 厚生労働省「まもろうよ こころ(電話相談)」
- Dr. John Demartini 公式サイト(日本語)
詐欺被害から心を立て直すワークシート(無料PDF)
この記事でご紹介した方法を、そのまま試せるワークシートを用意しました。印刷して、書き込んで使えます。
1枚目は「いまの気持ちを整理する」です。手続きのチェックリストと、いまの心のつらさ(0〜10)、心の中にある気持ち、自分を責める言葉と「大切な友だちならなんと声をかけるか」、そして気持ちの書き出しです。
2枚目は「体験の両面を見る」です。この体験で失ったものと、それがあなたにもたらしたものを、同じ数だけ書き出します。守ろうとしていた大切なものと、これからの自分を守るルールも書いて、最後にもう一度、心のつらさを記録します。
無料ダウンロード
詐欺被害から心を立て直すワークシート(PDF・A4/2枚)
1枚目は「いまの気持ちを整理する」。手続きのチェック、心のつらさ、自分を責める言葉と、友だちにかけるような言葉を書きます。2枚目は「体験の両面を見る」。失ったものと、それがあなたにもたらしたものを、同じ数だけ書き出します。
※2枚目の「体験の両面を見る」は、ディマティーニメソッドの考え方をもとにした愛原百麗オリジナルのものです(公式教材ではありません)。
よくある質問

Q. 詐欺にあったショックから、どのくらいで立ち直れますか?
人によって大きくちがいます。被害の大きさや、まわりの支え、もともとの心と体の状態によって、数週間で落ち着く人もいれば、何か月もかかる人もいます。大切なのは、「早く立ち直らなければ」と自分を急かさないことです。眠れない・食べられない状態が2週間以上続くときは、心療内科や精神科に相談してください。
Q. だまされた自分が恥ずかしくて、家族に言えません
家族に言えない気持ちは、とても自然なものです。ただ、ひとりで抱えるほど、苦しさは大きくなります。いきなり全部を話さなくても大丈夫です。「じつは、困っていることがあって」と、ひと言から始めてみてください。家族に言いにくいときは、まず消費者ホットライン(188)や、警察相談専用電話(#9110)に相談するのも、ひとつの方法です。
Q. 詐欺で失ったお金は、返ってきますか?
必ず返ってくるとは言えません。ただ、振り込んだ先の口座が凍結されれば、「振り込め詐欺救済法」にもとづいて、口座に残っているお金が被害者に分配されることがあります。そのためにも、すぐに振込先の金融機関と警察に連絡することが大切です。「必ず取り戻せる」とうたう業者には、注意してください。
Q. 詐欺にあうのは、スピリチュアル的に何か意味があるのですか?
「詐欺にあうのは、波動が低いから」「引き寄せたあなたにも原因がある」といった言葉を目にすることがあるかもしれません。でも、詐欺の責任は、だました側にあります。被害にあったあなたを責める理由にはなりません。そのうえで、つらい体験から何を受けとるかは、あなた自身が、時間をかけて見つけていけばいいことです。この記事の「両面を見る」ワークも、そのためのひとつの方法です。
Q. 詐欺被害のカウンセリングは、どこで受けられますか?
心の不調が強いときは、まず心療内科や精神科を受診してください。病院によっては、公認心理師や臨床心理士のカウンセリングを受けられます。警察の相談窓口(#9110)でも、犯罪の被害にあった方からの相談を受けつけています。話を聴いてほしい、気持ちを整理したいというときは、民間のカウンセラーやコーチに相談する方法もあります。
自分を責めているあなたへ
だまされたとわかった日から、何度も自分を責めてきたかもしれません。
でも、あなたは悪くありません。悪いのは、あなたの大切なものにつけこんで、だました相手です。あなたがだまされたのは、家族や将来や、大切な人を、守ろうとしたからです。
すぐに立ち直れなくても、大丈夫です。今日は、温かいものを飲んで、少し早めに横になってください。そして、気持ちが落ち着いてきたら、この体験のもう片方の面を、ゆっくり探していきましょう。ひとりでは見つけにくいときは、誰かと一緒に探したほうが、見つかりやすくなります。
詐欺にあったメンタルの立ち直り方|まとめ
- 詐欺にあってメンタルがつらいのは、弱いからでも愚かだからでもない。眠れない・自分を責める・言えない・焦る・人がこわいは、大きなショックへの自然な反応
- 詐欺は、あなたのいちばん大切なものをねらってくる。だまされたのは、大切なものを守ろうとしたから
- まずは手続き(金融機関・警察 #9110・188・記録を残す)。「必ず取り戻せる」という業者の二次被害に注意
- 心のケアは「責める」より「いたわる」。眠る・食べる・休む、友だちならどう言うか、ひとりに話す、書く、お金と自分の価値を分ける、これからを守る
- 眠れない・食べられない状態が2週間以上続く、「消えたい」と思うときは、心療内科・精神科や相談窓口へ
- 気持ちが落ち着いてきたら、体験の両面を見ていくことで、「失っただけの体験」で終わらせずにすむ
今日は、ワークシートの1枚目のSTEP 4に、大切な友だちにかけるような言葉を、自分あてに書いてみてください。
失ったものだけを見つめる日々から、一緒に抜け出しませんか
わたし自身も、信じた相手に大きなお金を差し出し、借金まで抱えた経験があります。体験のもう片方の面は、ひとりではなかなか見えないものです。ひとりで抱えなくて大丈夫です。
まずは無料のZoom相談(30分)で、お話ししてみませんか。無理な勧誘はいたしません。
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