「ただいま」の声が聞こえると、少しだけ体がこわばる。
休みの日に家族がそろうと、夕方にはぐったりしている。トイレに座っているときや、車の中でひとりになったときだけ、やっと息がつける。
「家族のことは大切なのに、一緒にいると疲れる」「一人になりたいなんて、妻として、母として失格なのかな」
そんなふうに自分を責めながら、この記事にたどり着いたのかもしれません。
こんにちは、看護師でライフコーチ、ディマティーニメソッドのファシリテーターの愛原百麗です。

最初にお伝えしたいのは、家族といると疲れるのは、あなたが冷たいからでも、家族を愛していないからでもないということです。
わたしも結婚と同時に、夫の両親と祖母と同居しました。アルコール依存症だった義父からは毎日のように批判され、「家にいたくない」と毎日思っていました。家族の中にいるのに、ひとりぼっちのように感じる。その苦しさは、わたしにも覚えがあります。
この記事では、主婦が家族といると疲れる理由と、家の中で自分を取り戻す小さな工夫、そして家族へのモヤモヤを軽くするディマティーニメソッドの見方を、ワークシートつきでお伝えします。
この記事では
・主婦が家族といると疲れる5つの理由
・数字で見る「家族のための時間」
・「一人になりたい」は、わがままではない
・家の中で自分を取り戻す5つの小さな工夫
・家族へのモヤモヤを両面から見る方法とワークシート
・看護師から伝えたい「休んだほうがいいサイン」
について解説します。
ノートとペンを用意して、読み進めてみてくださいね。
無料PDFこの記事はワークシート付きです
記事の中でご紹介する『家族といると疲れる気持ちを両面から見る ワークシート(家族・夫編)』(PDF・A4/2枚)を、無料でダウンロードできます。印刷して、そのまま書き込めます。
主婦が家族といると疲れる5つの理由
家族といると疲れるのには、ちゃんと理由があります。多くの主婦が抱えている理由を、5つに分けてみました。

1. 気をつかう相手が、いつも家の中にいる
休日や夏休み、在宅勤務の日。夫や子どもがずっと家にいると、誰かの気配が途切れることがありません。
「お腹すいた」「あれどこ?」と、いつ声をかけられるかわからない。家族の機嫌も気になる。誰かがいるかぎり、心のスイッチが「オフ」にならないのです。家にいるのに休めないのは、そのためです。
2. 名前のない家事が、終わらない
献立を考える。トイレットペーパーの残りを確かめる。子どもの持ち物や、学校からのお便りを確認する。ゴミを分けて、袋をセットし直す。
こうした「名前のない家事」は、やってもやっても終わりがなく、誰かに気づかれることもほとんどありません。頭の中で、いつも家族の予定や家の在庫を管理している。それだけで、心はずっと働き続けています。
3. 「ありがとう」が返ってこない
ご飯ができているのも、洗濯物がたたまれているのも、家族にとっては「当たり前」。どれだけ頑張っても、誰にも認めてもらえないと感じると、疲れは何倍にも重くなります。
人は、自分のしていることが誰かの役に立っていると感じられるとき、多少の大変さは乗り越えられます。疲れの正体は、作業の量だけでなく、「わかってもらえない」さみしさでもあるのです。
4. 自分の時間と場所がない
夫には書斎があり、子どもには子ども部屋がある。でも、自分だけの部屋はない。そんな主婦の方は少なくありません。
朝は家族より早く起きて、夜は家族が寝てから片づけをする。一日のどこにも「わたしだけの時間」がないと、心が充電されるすきまがなくなってしまいます。
5. 「いい妻・いい母」でいようと頑張りすぎている
「家族の前では笑顔でいなきゃ」「イライラしてはいけない」「ちゃんとしたご飯を作らなきゃ」
家族を大切に思う人ほど、自分にたくさんの「〜しなきゃ」を課しています。自分の気持ちを後回しにして、いつも家族に合わせていると、知らないうちに心がすり減っていきます。
家族といると疲れるのは、あなたが家族のために、ずっと気を張って動いてきたしるしです。
数字で見る「家族のための時間」

総務省の「令和3年社会生活基本調査」(2021年)によると、6歳未満の子どもがいる夫婦が、家事・育児・買い物などの家事関連に使っている時間は、1日あたり(1週間の平均)で次のとおりです。
- 妻:7時間28分(うち家事2時間58分、育児3時間54分)
- 夫:1時間54分(うち家事30分、育児1時間5分)
夫の時間は5年前より増えていますが、それでも妻は夫のおよそ4倍の時間を、家族のために使っています。
しかも、この数字には、頭の中で献立や予定を考え続ける「名前のない家事」は入っていません。あなたが疲れるのは、気のせいでも、体力がないからでもないことが、数字からもわかります。
出典・参考資料
- 総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果 結果の概要」(2022年8月31日公表):要約(PDF)
「一人になりたい」は、わがままではない
心が「充電させて」と言っているサイン
「一人になりたい」と思うと、家族を拒んでいるようで、罪悪感を覚えるかもしれません。
でも、スマートフォンも使い続ければ電池が切れるように、人の心にも充電が必要です。ずっと気を張っていると、からだも心も休まりません。看護師として多くの方のからだと向き合ってきたなかでも、緊張しっぱなしの状態が長く続くと、心身の不調につながりやすいと感じています。
「一人になりたい」は、心が「少し充電させて」と言っているサインです。家族を嫌いになったわけではありません。
「家族が嫌い」なのではなく、「休みたい」
疲れているときは、家族の何気ないひと言にもイライラしてしまいます。すると、「わたしは家族が嫌いなのかもしれない」と、さらに自分を責めてしまう人もいます。
けれど、多くの場合、本当の気持ちは「嫌い」ではなく「休みたい」です。休めていない人が、イライラするのは自然なこと。まずは、そう自分に言ってあげてください。
家族の中で、ひとりぼっちに感じたわたしの経験
冒頭でお話ししたように、わたしは結婚と同時に、夫の両親と祖母と暮らし始めました。毎日のように批判されて、「どうしてこの家で暮らしているんだろう」と、家に帰るのがつらい時期がありました。
のちに、ディマティーニメソッドで義父と向き合ったとき、「義父なりに、わたしを守ろうとしていた」と気づいて、わたしは号泣しました。あれほどつらかった家族との関係も、見方が変わると、心の重さが変わっていきました。その見方は、この記事の後半でご紹介します。
家の中で自分を取り戻す5つの小さな工夫

家族と離れて暮らすことはできなくても、毎日の中に「自分に戻るすきま」をつくることはできます。今日からできる小さな工夫を、5つご紹介します。

1. 「15分だけのひとり時間」を予定に入れる
まとまった時間はなくても、15分ならつくれることがあります。家族より少し早く起きてお茶を飲む。買い物のついでに、公園のベンチで座る。車の中で、好きな音楽を1曲だけ聴く。
ポイントは、空いたらやるのではなく、手帳やスマホに「予定」として書き込むことです。予定にすると、罪悪感なく自分のために使えます。
2. 家事の「やらないこと」を決める
毎日3品作らなくても、家族は困りません。週に2回はお総菜や冷凍食品にする。洗濯物は、たたまずにかごへ入れるだけにする。
「やること」を増やすより先に、「やらないこと」を1つ決める。それだけで、気持ちにも時間にも、少し余白が生まれます。
3. 「疲れた」を、責めずに言葉にする
疲れがたまると、「どうしてわたしばっかり!」と、怒りの形で爆発しがちです。けれど、責める言葉は、家族を身構えさせてしまいます。
おすすめは、「わたし」を主語にして、具体的にお願いすることです。「手伝ってよ」ではなく、「今日はとても疲れているから、お風呂掃除をお願いしてもいい?」。何を頼めばいいかがはっきりしていると、家族も動きやすくなります。
4. からだを先に休める
心が疲れているとき、まず整えやすいのはからだです。睡眠時間を少しでも確保する。寝る前にスマホを置いて、ゆっくり息を吐く。
横になったまま、足先から頭まで順番に意識を向けていくボディスキャン瞑想は、寝る前の数分でもできるのでおすすめです。
5. 家の外にも「わたしの居場所」を持つ
仕事、習いごと、友人とのお茶、趣味の集まり。家の外に、妻でも母でもない「わたし」として過ごせる場所があると、家に帰ったときの気持ちが少し変わります。
外に出るのがむずかしい時期なら、オンラインの講座や、好きなことを発信するSNSでもかまいません。家族以外の誰かとつながっている感覚が、心の支えになります。
家族へのモヤモヤを、両面から見る
疲れの奥にある「わかってほしい」
ひとり時間をつくっても、家に戻ると、またすぐに疲れてしまう。そんなときは、疲れの奥に家族へのモヤモヤが残っていることがあります。
休日にソファから動かない夫。何度言っても片づけない子ども。「ありがとう」を言わない家族。こうした言動へのイライラの奥には、「わかってほしい」「大切にされたい」という気持ちが隠れています。
家族へのイライラは、B面で扱える

ここからは、わたしがファシリテーターを務めるディマティーニメソッドの見方をご紹介します。
ディマティーニメソッドをはじめて知った方は、どんな方法なのかを先にこちらで読んでおくと、このあとのお話がわかりやすくなります。
ディマティーニメソッドには、A面・B面・C面という3つの見方があります。
A面は、相手の好きで賞賛している言動を扱います。B面は、相手の嫌いで許せない言動を扱います。C面は、亡くなった人や去っていった人との別れ、新しく現れた人との出会いを扱います。
「休日に家事を手伝わない」「話を聞いてくれない」「ありがとうを言わない」。家族へのイライラは、B面で向き合えるテーマです。B面で扱う「言動」には、相手が「してくれないこと」も含まれます。わたしが義父と向き合ったのも、このB面でした。
家族の言動にも、プラス面がある
ディマティーニメソッドでは、どんな人や出来事にも、プラス面とマイナス面の両方があると考えます。
たとえば、「夫が休みの日に、ソファで一日スマホを見ている」ことにイライラしているとします。意識して探すと、その言動があなたや家族にもたらしているものが見つかることがあります。
・夫がしっかり休めているから、平日も元気に働けている
・家のことを回せる、自分の段取り力に気づけた
・「具体的にお願いする」練習のきっかけになった
・子どもが、父親とのんびり過ごす時間がある
・わたしも「休んでいい」と、自分に許すきっかけになった
「だから我慢しよう」という話ではありません。マイナス面とプラス面の両方が見えてくると、「わたしばかり」という重さが、少しずつ静かになっていきます。
自分の中にも、同じ面を探す
B面のワークでは、家族の嫌いな言動と同じことを、自分もしていないかも探していきます。たとえば、疲れた日のわたしも、ソファでスマホを見ながら、子どもの話を聞き流していないでしょうか。
これは、あなたを責めるためではありません。「家族だけが」という見方がゆるむと、家族をひとりの人として、落ち着いて見られるようになるからです。
ここまでの流れを、ワークシートにまとめました。前半では、疲れる場面を書き出して家事を仕分け、ひとり時間を決めます。後半では、家族の言動を両面から見ていきます。印刷して、書き込みながら進めてみてください。
無料ダウンロード
家族といると疲れる気持ちを両面から見る ワークシート(家族・夫編)(PDF・A4/2枚)
疲れる場面を書き出して家事を「やめる・減らす・頼む・続ける」に仕分け、1日15分のひとり時間を決めます。後半では、家族の言動でいちばんモヤモヤすることのプラス面と、自分の中にある同じ面を探していきます。印刷して書き込めます。
※ディマティーニメソッドの考え方をもとにした、愛原百麗オリジナルのワークシートです(公式教材ではありません)。
看護師から伝えたい「休んだほうがいいサイン」
家族といると疲れる状態が長く続いていると、からだにもサインが出てくることがあります。次のような状態が2週間以上続くときは、ひとりで抱えずに、心療内科やかかりつけ医に相談してください。
- 寝つけない、夜中や明け方に目が覚める
- 食欲がない、または食べすぎてしまう
- 理由もなく涙が出る、何をしても楽しくない
- 朝、起き上がれないほど体が重い
40代・50代でイライラやほてり、眠れなさが続くときは、更年期の変化が関係していることもあります。婦人科に相談すると、楽になる方法が見つかるかもしれません。
また、家族から暴力や暴言を受けていて「怖い」と感じるときは、疲れの問題ではありません。DV相談ナビ「#8008」に電話をすると、近くの配偶者暴力相談支援センターにつながります。DV相談+(プラス)(0120-279-889)は、24時間電話で相談できます。
相談窓口
- 内閣府男女共同参画局「配偶者からの暴力被害者支援情報(相談機関一覧)」
よくある質問

Q. 家族といると疲れるのは、わたしの性格のせいですか?
性格のせいではありません。気をつかう相手がいつも家にいて、終わりのない家事を担い、自分の時間がない。そういう状況なら、誰でも疲れます。人の気持ちに敏感な方ほど、家族の機嫌に気を配るぶん、疲れやすい傾向はありますが、それは優しさの裏返しでもあります。
Q. 一人になりたいと思うのは、母親失格ですか?
失格ではありません。一人の時間で心を充電できると、家族にも穏やかに接しやすくなります。ひとり時間は、家族のためにもなる時間です。
Q. 夫が家にいるだけで疲れます。どうすればいいですか?
在宅勤務や定年退職をきっかけに、そう感じる方は少なくありません。まずは、夫の昼ご飯は各自で用意する、午前中はそれぞれ別の部屋で過ごすなど、家の中での「区切り」を話し合ってみてください。夫へのイライラそのものは、この記事のワークシートで両面から見ていけます。
Q. 子どもにイライラしてしまう自分が嫌です
疲れているときに子どもにイライラするのは、自然なことです。イライラした自分を責めるより、「今日は疲れていたね」と自分をいたわるほうが、次の日の余裕につながります。イライラが強くて手が出そうになるときは、地域の子育て相談窓口や、児童相談所の相談ダイヤル「189」に相談してください。
Q. 家族に「疲れた」と言えません
「しっかり者」と思われている人ほど、弱音を言い出しにくいものです。いきなり全部を話さなくても大丈夫。「今日はちょっと疲れたから、先に休むね」と、小さなひと言から始めてみてください。家族に言いにくいことは、利害関係のない第三者に話すだけでも、心が軽くなります。
家族といると疲れるあなたへ
毎日、家族のご飯を考えて、家を整えて、家族の気持ちに気を配ってきた。それだけで、あなたは本当によく頑張っています。
家族といると疲れるのは、あなたが家族を大切にしてきたからです。でも、大切にする相手の中に、あなた自身も入れてあげてください。
今日、15分だけ、自分のための時間を予定に入れてみませんか。
家族へのモヤモヤのプラス面を、ひとりで探すのがむずかしいときは、誰かと一緒に探したほうが早いところだと思っています。
家族といると疲れる主婦のまとめ
- 主婦が家族といると疲れるのは、気をつかう相手がいつもいる・名前のない家事が終わらない・感謝されない・自分の時間がない・頑張りすぎているから
- 6歳未満の子どもがいる夫婦の家事関連時間は、妻7時間28分、夫1時間54分。疲れて当然の量を担っている
- 「一人になりたい」は、わがままではなく、心が充電を求めているサイン
- 15分のひとり時間を予定に入れる・やらないことを決める・「わたし」を主語にお願いするなど、小さな工夫から始める
- 家族へのイライラは、B面の見方でマイナス面とプラス面の両方を探すと、少しずつ静かになっていく
- 眠れない・涙が止まらないなどが2週間以上続くときは、専門家に相談する
今日は、ワークシートのSTEP 1だけでも書いてみてくださいね。
家族の中で、ひとりで頑張りすぎないで
家族といると疲れる。一人になりたい。そんな気持ちを、まずは安心して話してみませんか。看護師として、そして義理の家族との同居に悩んだひとりとして、家族へのモヤモヤを一緒に整えていきます。
文章でのご相談もできます。無理な勧誘はいたしません。
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