朝の光が差しこむ窓辺で、目を閉じて温かいお茶を飲み、ほっとした表情の女性の水彩イラスト。「死ぬのが怖いあなたへ 怖さの正体と眠れない夜の和らげ方 セルフチェック・ワークシート付き」

「夜、布団に入ると『いつか死ぬんだ』と考えてしまい、怖くて眠れない」

「急に『死んだら無になる』と思って、胸がドキドキした」

「親や夫が、いつかいなくなると思うと、怖くてたまらない」

そんな怖さを、誰にも言えずに抱えていませんか。

こんにちは、看護師でライフコーチ、ディマティーニメソッドのファシリテーターの愛原百麗です。看護師として働いて、39年になります(2026年時点)。いまも、がんの終末期医療にかかわる病院で、急変や看取りに立ち会っています。

ドクター・ディマティーニ・メソッド トレインド・ファシリテーター 愛原百麗(看護師×ライフコーチ)

家族としても、義父を自宅で、義母を病院で見送りました。2023年には、母同然だった義母と実父を相次いで亡くし、ため息をついては泣いてばかりの日々を過ごしました。死は、わたしにとっても、遠い話ではありません。

看取りの現場では、穏やかな表情で過ごされる方もいれば、最期の日々に「怖い」と口にされる方もいます。そばにいるご家族も、大切な人を失う怖さを抱えています。死ぬのが怖いという気持ちは、誰の心にもある、とても自然な気持ちです。

この記事では、死ぬのが怖いと感じるあなたに、何が怖いのかがわかるセルフチェックと、死への恐怖の正体、夜に怖くて眠れないときの対処法をお伝えします。

先に結論をお伝えすると、死ぬのが怖いのは、おかしなことでも、心が弱いからでもありません。人は、命を守るために「怖い」と感じるようにできています。ただ、怖さが大きくふくらむのは、たいてい「死そのもの」よりも、無になること、痛みや苦しみ、大切な人との別れ、やり残しのどれかを、夜にひとりで思い描いているときです。何が怖いのかを分けて、その怖さに合う向き合い方を選ぶこと。そして、怖さの奥にある「大切にしたいもの」に気づくと、死への恐怖は、少しずつ「今日をどう生きるか」に変わっていきます。

この記事では

・死ぬのが怖い5つの理由(セルフチェック付き)

・死恐怖症(タナトフォビア)とは?病気なの?

・夜、死ぬのが怖くて眠れないときの対処法

・大切な人が死ぬのが怖いとき、病気で怖いとき

・看護師として伝えたい、受診・相談の目安

・ディマティーニメソッドで見る死への恐怖

・書き込める『死への恐怖をほどくワークシート』

について解説します。

怖い気持ちを抱えたまま、この記事を開くのにも、勇気がいったと思います。ここでは、怖がらせるようなお話はしません。ゆっくり読み進めてくださいね。

朝の光が差しこむ窓辺のテーブルに、湯気の立つハーブティーと、白とピンクの花、緑の鉢植え、やわらかなブランケットが置かれた水彩イラスト

セルフチェックこの記事はセルフチェック付きです

死ぬのが怖い理由を、10問でチェックできます。チェックを入れるだけで、あなたがいちばん怖いと感じていることと、読み進め方がわかります。

セルフチェックへ ▼

無料PDFこの記事はワークシート付きです

記事の中でご紹介する『死への恐怖をほどくワークシート』(PDF・A4/2枚)を、無料でダウンロードできます。印刷して、そのまま書き込めます。

ワークシートのダウンロードへ ▼

死ぬのが怖いのはなぜ?5つの理由をチェック

「死ぬのが怖い」とひと言でいっても、何が怖いのかは、人によってちがいます。まずは、いまのあなたにあてはまるものをチェックしてみましょう。

セルフチェック

あなたの「死ぬのが怖い」は、どのタイプ?

あてはまるものに、チェックを入れてください(10問)。

※この結果は、ご自身の傾向をふり返るための目安です。医学的な診断ではありません。

チェックした項目は、次の5つの怖さにわかれています。ひとつずつ見ていきましょう。

「死ぬのが怖い」5つの正体(何が怖いのかを、分けてみましょう)。1 自分が消える・無になる:「死んだらどうなるの?」がわからない 2 痛み・苦しみ:死ぬときは苦しいのでは、と想像してしまう 3 大切な人との別れ:残していく・残される悲しみ 4 やり残し・後悔:「まだ、生ききっていない」という思い 5 体と心のSOS:夜・疲れ・動悸が、怖さをふくらませる。「死」そのものより、どれかひとつが大きく見えている。何が怖いかがわかれば、向き合い方が選べる

1. 「自分が消える・無になる」のが怖い

「死んだら、どうなるのだろう」「この意識が消えて、二度と戻らないなんて」。夜、ふとそう考えて、息がつまるような怖さを感じたことはありませんか。

人には、わからないものを怖がる性質があります。そして、死んだあとのことは、誰にもたしかめることができません。経験したことのない「無」を想像しようとするほど、怖さはふくらんでいきます。

慶應義塾大学大学院の教授(当時)で、幸福学の研究で知られる前野隆司さんは、自身が行ったアンケートで、「死ぬのが怖い」と答えた人が54%いたと紹介しています。興味深いのは、死後の世界があると思うかどうかと、死ぬのが怖いかどうかには、関係が見られなかったことです。前野さんは、死ぬのが怖いと感じるのは、生きものが命を守るために身につけてきた性質だと説明しています。

怖いと感じるのは、あなたの命が、生きようとしているしるしでもあるのです。

2. 死ぬときの「痛み・苦しみ」が怖い

死そのものより、「死ぬときは、きっと痛くて苦しいのだろう」という怖さを抱えている方も多いものです。病気や事故のニュースを見るたびに、自分のことのように胸が苦しくなる方もいます。

看護師として、ひとつお伝えしたいことがあります。いまの医療では、痛みや息苦しさを、薬やケアでやわらげることができます。これを「緩和ケア」といいます。国立がん研究センターのがん情報サービスでも、緩和ケアは「がんが進行してから始めるものではありません」とされ、がんと診断されたときから、心と体のつらさをやわらげるケアを受けられると説明されています。

わたしが働く病院でも、痛みをやわらげる薬の調整に加えて、手や足をやさしく撫でたり、好きな香りを届けたり、小さな扇風機で顔にやさしい風を当てたりして、患者さんが少しでも楽に過ごせるようにしています。義父は自宅での療養中、主治医の許可をもらって、在宅酸素をしながら大好きなビールを飲み、満面の笑みを見せてくれました。

「苦しいのはいやだ」という怖さは、ひとりで想像しているときに、いちばん大きくなります。医療やケアでできることを知るだけで、怖さが少し小さくなることもあります。

あわせて読みたい

3. 「大切な人との別れ」が怖い

自分の死より、「親や夫、子どもが、いつかいなくなる」と考えるほうが怖い、という方もいます。反対に、「わたしが死んだら、残された家族はどうなるのだろう」と心配になる方もいます。

死への恐怖をはかる心理学の尺度(コレット=レスター死恐怖尺度)でも、「自分の死」「自分が死にゆく過程」に加えて、「大切な人の死」「大切な人が死にゆく過程」が、別々の怖さとして扱われています。大切な人を失う怖さは、死への恐怖の大きな柱のひとつなのです。

わたしも、義母を病院で見送る前は、近いうちに義母を失う不安と悲しみで、すっかり落ちこんでいました。それでも、意識のない義母の胸をさすっているうちに、不思議と、わたし自身の心が癒されていくのを感じました。「もっと生きていてほしい」という願いが、「どうか安らかに」という祈りへと、少しずつ変わっていった時間でした。

やわらかな毛布の上で、年配の女性の手を、もうひとりの女性が両手でそっと包んでいる水彩イラスト。そばに白い花とラベンダー

別れが怖いのは、それだけ、その人とのつながりを大切にしているからです。その怖さは、「会えるうちに、伝えておきたいこと」を教えてくれてもいます。

あわせて読みたい
「祈る」と「願う」の違いとは?【ワークシート付き】意味・使い分け!看護師39年の私が看取りで知った祈りの力「祈る」と「願う」の違いとは?【ワークシート付き】意味・使い分け!看護師39年の私が看取りで知った祈りの力

義母の胸をさすりながら、願いが祈りに変わっていった時間のことを書いています。

4. 「やり残し・後悔」が怖い

「このまま死んだら、きっと後悔する」「本当は、やりたいことがあるのに」。死ぬのが怖い気持ちの奥に、こんな思いがかくれていることがあります。

死への不安を説明する心理学のモデルのひとつに、「過去のやり残し」と「未来のやり残し」への後悔が、死への不安を強めるという考え方があります(トマーとエリアソン、1996年)。かなえられなかったことへの悔いや、これからかなえられなくなることへの思いが大きいほど、死は怖くなる、というものです。

オーストラリアで長く緩和ケアの介護にたずさわったブロニー・ウェアさんは、看取った人たちが最期に語った後悔を、『死ぬ瞬間の5つの後悔』という本にまとめました。いちばん多かったのは、「自分に正直な人生を生きればよかった」という後悔だったそうです。

やり残しの怖さは、裏を返せば、「本当は、こう生きたい」というあなたの願いです。その願いに気づけたら、怖さを、今日の小さな一歩に変えていくことができます。

あわせて読みたい
価値観一覧100【セルフチェック・ワークシート付き】人生の7つの領域別リストと「本当の価値観」の見つけ方価値観一覧100【セルフチェック・ワークシート付き】人生の7つの領域別リストと「本当の価値観」の見つけ方

「本当は、こう生きたい」の奥にある、あなたが大切にしているものを見つけるヒントです。

5. 体と心が「SOS」を出している(夜・疲れ・動悸)

昼間はなんともないのに、夜、布団に入ると急に怖くなる。疲れているときや、体調が悪いときほど、死のことを考えてしまう。こうした怖さは、体と心が疲れているサインのこともあります。

夜は、昼間のように気をまぎらわせてくれるものがありません。暗く静かな部屋で、ひとりで考えていると、怖い想像ばかりが大きくなりがちです。

また、急に「このまま死ぬかもしれない」という強い怖さにおそわれて、動悸や息苦しさ、めまいが出ることもあります。「死ぬのではないか」という恐怖は、パニック発作の症状のひとつです。MSDマニュアルでは、パニック発作はとてもつらく感じられるものの、それ自体が命にかかわるものではないと説明されています。ただし、胸の痛みや息苦しさには、心臓や肺の病気がかくれていることもあります。はじめての症状のときは、まず内科などで体の検査を受けてください。

年齢とのかかわりもあります。アメリカで18〜87歳の男女を調べた研究では、死への不安は男女とも20代がいちばん高く、その後は年齢とともに下がっていました。ただし女性だけは、50代にもう一度、不安が高まる山が見られました(ラサックら、2007年)。理由ははっきりわかっていませんが、50代は親を見送ったり、更年期で眠りが浅くなったりと、心と体の変化が重なりやすい時期でもあります。

体の不調が怖さを強めているときは、まず体を休めることが、いちばんの近道です。けれども、怖さで眠れない夜もありますよね。そんなときは、眠ろうとがんばるより、瞑想や音楽で心をゆるめたり、笑える動画やペットとの時間で気をそらしたり、誰かと話したりして、ひとりで怖さを抱えこまないことを大切にしてください。具体的な方法は、このあとの「夜、死ぬのが怖くて眠れないときの対処法」でお伝えします。

▲ 目次に戻る

死恐怖症(タナトフォビア)とは?病気なの?

死への恐怖が強すぎて、毎日の暮らしに支障が出てしまう状態を、「死恐怖症」や「タナトフォビア」と呼ぶことがあります。タナトフォビアは、ギリシャ語の「死(タナトス)」と「恐怖(フォビア)」を合わせた言葉です。

ただし、死恐怖症は、正式な病名ではありません。病院では、パニック症や病気不安症などの不安症、うつ病などの症状のひとつとして診察されることが多いものです。

よくある「怖い」と、相談したほうがいい「怖い」

・よくある「怖い」:ときどき死を考えて怖くなるが、しばらくすると落ち着く。眠れる日のほうが多い。昼間はふだんどおりに過ごせている

・相談したほうがいい「怖い」:怖さで眠れない・食べられない日が続く。仕事や家事が手につかない。体の病気が心配で、何度も検査を受けたり調べたりするのが止められない。動悸や息苦しさの発作をくり返す

死への恐怖は、さまざまな心の不調の根っこにあると考える研究者もいます。そして、15の研究をまとめた分析では、カウンセリングなどの心理的な支援で、死への不安はやわらぐことが確かめられています。とくに、認知行動療法の効果が大きかったと報告されています(メンジーズら、2018年)。

「死ぬのが怖いのは、性格だから仕方ない」と、あきらめなくて大丈夫です。

▲ 目次に戻る

夜、死ぬのが怖くて眠れないときの対処法|「その場」と「昼間」に分ける

ここからは、夜、死ぬのが怖くて眠れないときの対処法をお伝えします。体を休めることが、いちばんの近道です。けれども、怖さで眠れない夜は、眠ろうとがんばるほど、目がさえてしまうものです。そんな夜は、眠ることより、ひとりで怖さを抱えこまないことを目標にしてください。考えごとは、明るい時間にまわして大丈夫です。

三日月の見える夜、ランプの温かい灯りの下で、毛布にくるまって温かい飲みものを手に、目を閉じてほっとしている女性と、足もとで眠る猫の水彩イラスト
夜、死ぬのが怖くて眠れないとき(眠ろうとがんばるより、ひとりで抱えないこと)。その場で:1 明かりをつけて、息を長く吐く(体を起こして、4つ吸って8つ吐く) 2 「いま、怖いと感じている」(言葉にすると、怖さと少し距離がとれる) 3 瞑想や音楽に、耳をすます(瞑想の音声・クラシックなど、やさしい音を) 4 楽しいことで、気をそらす(笑える動画・ペットとの時間) 5 誰かと話す・電話する(家族や友人、夜中でもつながる相談窓口へ)。昼間に:6 「心配タイム」を決める(考えるのは、昼間の決まった時間だけ) 7 怖いことを書いて、分ける(変えられること・変えられないこと) 8 今日、会う・伝える(「ありがとう」を、先のばしにしない)。死や病気を調べつづける(ネット・動画で検索)と、怖さはかえってふくらみやすい。心がゆるむものに頼る(音楽・笑い・人との会話)と、安心が少しずつもどってくる

その場で1:明かりをつけて、吐く息を長くする

布団の中で怖さと向き合いつづけると、「布団に入る=怖くなる」と、体が覚えてしまうことがあります。怖くて眠れないときは、いったん明かりをつけて、体を起こしましょう。カフェインの入っていない温かい飲みものを飲んだり、手や足をさすったりするだけでも、怖さの流れが切りかわります。

そして、4つ数えながら鼻から吸い、8つ数えながら、口からゆっくり吐いてみてください。吐く息を長くすると、体をリラックスさせる副交感神経が働きやすくなります。胸やおなかに手を当てて、手のあたたかさを感じながら行うと、より落ち着きやすくなります。

その場で2:「いま、怖いと感じている」と言葉にする

心の中で、「いま、わたしは怖いと感じている」とつぶやきます。「死んだらどうしよう」と考えをめぐらせるのではなく、いまの気持ちに名前をつけるのがポイントです。感情を言葉にすると、不安や恐れにかかわる脳の扁桃体(へんとうたい)の反応がおだやかになることが、研究で確かめられています。

怖さに、0〜10で点数をつけるのもおすすめです。「いまは7くらい」と数字にすると、怖さに飲みこまれている状態から、一歩下がって怖がっている自分を見ている状態に移ることができます。

その場で3:瞑想や音楽に、耳をすます

頭の中で考えがぐるぐるまわるときは、自分の考えに耳をすますより、やさしい音に耳をすますほうが楽になります。瞑想のガイド音声を流して、声にそって呼吸をしたり、体の力を抜いたりしてみてください。

マインドフルネス瞑想についての18の研究をまとめた分析では、瞑想に取り組んだ人は、比較のための活動をした人よりも、睡眠の質がよくなる傾向がありました(ラッシュら、2019年)。このブログでも、3分の音声で心を落ち着ける瞑想と、寝ながらできる瞑想を紹介しています。

音楽も、心強い味方です。わたしの場合は、クラシック音楽を聴くことでした。眠れない悩みをもつ人を対象にした13の研究をまとめた分析では、毎日25〜60分ほど音楽を聴いた人は、聴かなかった人よりも、眠りの質がよくなったと感じていました(ジェスパーセンら、2022年)。歌詞のない、ゆったりした曲を、小さめの音で流してみてください。

瞑想をしていて、かえって怖さが強くなるときは、無理に続けなくて大丈夫です。目を開けて、明かりの下で、呼吸だけにもどしましょう。瞑想が合わない人もいます。くわしくは「マインドフルネスをやってはいけない人」にまとめています。

その場で4:笑える動画や、ペットとの時間で気をそらす

怖さで頭がいっぱいのときは、まったく別のことで、気持ちをそらすのもひとつの方法です。バラエティ番組やお笑いの動画など、思わず笑ってしまうものを見てみてください。死や病気について調べる動画ではなく、気持ちが明るくなるものを選ぶのがポイントです。画面の明るさは少し落として、見る時間を決めておくと、そのあと眠りにもどりやすくなります。

動物を飼っている方は、動物との時間も、大きな癒しになります。そばにいる犬や猫をなでる、寝息を聞く、ぬくもりを感じる。言葉がなくても、ひとりではないと感じられる時間です。

怖さのやわらげ方は、人によってちがいます。自分が「ほっとできるもの」を、元気なときにいくつか見つけておくと、眠れない夜の助けになります。

その場で5:ひとりで抱えず、誰かと話す

怖さは、ひとりで抱えているときに、いちばん大きくなります。家族や友人が起きているなら、「ちょっと怖くなっちゃって」と、ひと言だけでも声をかけてみてください。話しているうちに、体の力が少しずつ抜けていきます。

夜中で、話せる人がいないときは、電話やチャットの相談窓口を頼ってください。「死にたい」という気持ちがなくても、「怖くて眠れない」という相談で大丈夫です。

夜中でもつながる相談窓口

・よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料。どんな悩みでも相談できます。IP電話からは050-3655-0279)

・いのちの電話:0570-783-556(午前10時〜午後10時)/フリーダイヤル 0120-783-556(毎日午後4時〜9時)

・文字で相談したいとき:あなたのいばしょ(チャット相談)(24時間・無料・匿名)

入院中の方は、夜中でも遠慮なくナースコールを押して、看護師に「怖くて眠れない」と伝えてください。夜の不安な気持ちを聞くことも、わたしたち看護師の大切な仕事です。

昼間に1:「心配タイム」を決める

夜、死のことが頭に浮かんだら、「これは、明日の心配タイムに考えよう」と、メモに書いて置いておきます。そして、昼間の決まった時間に、15〜30分だけ、そのことを考える時間をとります。

心配ごとを決まった時間まで先のばしにするこの方法は、アメリカの心理学者ボルコベックらが1983年に発表したもので、いまも不安の認知行動療法で使われています。「考えてはいけない」と押さえこむのではなく、「考えるのは、あとで」と時間を決めるのがコツです。

昼間に2:怖いことを書いて、分ける

心配タイムには、怖いことを紙に書き出してみましょう。そして、この記事の5つの怖さのうち、どれにあたるかを分けます。さらに、「変えられないこと」と「いま、わたしにできること」に分けてみます。

人がいつか死ぬことは、変えられません。でも、健康診断を受ける、体を休める、家族に気持ちを伝える、もしものときの希望を話しておく。いま、できることは、意外とたくさんあります。ワークシートの1枚目で、この作業ができます。

昼間に3:今日、会う・伝える

死への恐怖は、「いつか」のことを考えるほど大きくなります。反対に、「今日」に目を向けると、少し小さくなります。会いたい人に会う、電話をする、「ありがとう」を伝える。今日できることを、ひとつだけやってみてください。

※夜中に、死や病気のことをネットや動画で調べつづけるのは、おすすめしません。怖い情報ほど目にとまりやすく、怖さがかえってふくらみやすいからです。気になることはメモに書いて、昼間に、信頼できる情報や医療者に確かめましょう。

大切な人が死ぬのが怖いとき

親や夫、子どもを失うのが怖いときは、「その日」のことより、「いま、一緒にいられる時間」に目を向けてみてください。

もしものときに、どんな医療やケアを受けたいか、どこで過ごしたいかを、家族や医療・介護の人たちと前もって話し合っておくことを、「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」といいます。厚生労働省は、11月30日を「人生会議の日」としています。縁起でもないと感じるかもしれませんが、元気なうちに話しておくと、いざというときに、本人の思いを大切にした選択がしやすくなります。

義父が自宅で療養していたときも、不安でいっぱいだったわたしたちを支えてくれたのは、主治医、訪問看護師、ヘルパーさん、ケアマネジャーさんでした。みなさんと、これからのことを一緒に話し合えたことで、不安が少しずつ消えていきました。怖さは、話し合うことで、ひとりで抱えるより小さくなります。

病気で、死を身近に感じて怖いとき

病気の診断を受けたり、治療が思うように進まなかったりして、死を身近に感じている方もいるかもしれません。

そんなときは、主治医や看護師に、「怖い」と言っていいのです。痛みや息苦しさだけでなく、不安や怖さも、緩和ケアでやわらげる対象です。がんの場合は、全国のがん診療連携拠点病院などにある「がん相談支援センター」で、その病院にかかっていなくても、無料で相談できます。ご家族も相談できます。

看護師にとって、患者さんの「怖い」に耳を傾けることも、大切な仕事のひとつです。遠慮なく、声をかけてくださいね。

▲ 目次に戻る

看護師として伝えたい、受診・相談の目安

次のようなときは、ひとりで抱えずに、心療内科や精神科に相談してください。

・死への恐怖で、眠れない、食べられない、仕事や家事が手につかない状態が2週間以上続いている

・急な動悸や息苦しさ、めまいとともに、「死ぬかもしれない」という強い恐怖におそわれる発作をくり返す

・体の病気が心配で、何度も検査を受けたり、調べたりするのが止められない

・死ぬのが怖くて、外出や乗りもの、病院などを避けるようになった

・「死ぬのが怖い」のに、「消えたい」「死にたい」という気持ちも浮かぶ

はじめて動悸や胸の痛み、息苦しさが出たときは、まず内科などで体の検査を受けてください。胸の強い痛みや、冷や汗をともなう息苦しさがあるとき、意識がおかしいときは、迷わず119番に電話しましょう。

お子さんや10代の方の場合は、小児科やかかりつけ医、学校のスクールカウンセラーにも相談できます。

「消えたい」「死にたい」という気持ちもあるときは

死ぬのが怖いのに、つらさが強いときには、「消えたい」という気持ちが同時に浮かぶことがあります。ひとりで抱えずに、いますぐ相談してください。

・#いのちSOS:0120-061-338(24時間・無料)

・よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料。IP電話からは050-3655-0279)

・いのちの電話:0570-783-556(午前10時〜午後10時)

・こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556

受診は、弱さではありません。怖さに飲みこまれずに、毎日を過ごす力を取りもどすための、ひとつの手段です。

▲ 目次に戻る

ディマティーニメソッドで見る死への恐怖|怖さの奥にある「大切なもの」

ドクター・ジョン・F・ディマティーニ
ドクター・ジョン・F・ディマティーニ(出典:ディマティーニ公式サイト https://drdemartini.com/ja/)

夜の対処法は、怖さをしのぐためには役に立ちます。けれども、何度も同じ怖さがよみがえるときは、怖さの奥にあるものに目を向けてみましょう。

わたしがファシリテーターを務めるディマティーニメソッドでは、人は、自分が大切にしているもの(価値の序列)を失うと感じたときに、強い恐れを感じると考えます。そして恐れは、これから起こることの「マイナスの面」ばかりを思い描いているときに、大きくなります。

「怖い」の奥には、大切なものがある(怖さは、失いたくないものを教えてくれるサイン)。自分が消える・無になる → わたしとして生きている、この時間。痛み・苦しみ → 安心して、穏やかに過ごすこと。大切な人との別れ → あの人とのつながり。やり残し・後悔 → 自分らしく生ききること。死ぬのが怖いのは、それだけ大切にしたいものがあるから

死ぬのが怖いとき、あなたは、何を失いたくないのでしょうか。家族と過ごす時間、子どもの成長を見守ること、まだかなえていない夢。怖さの大きさは、あなたが大切にしているものの大きさでもあります。

そしてディマティーニメソッドでは、物事には必ず両方の面があると考えます。命に限りがあることは、つらいことです。けれども、限りがあるからこそ、今日会えることがありがたく思えたり、本当にやりたいことに気づけたりもします。見えていなかったもう片方の面が見えてくると、怖さは、我慢しなくても、少しずつ落ち着いていきます。

義母と実父を見送った年に、わたしに起きたこと

2023年、わたしは、母同然だった義母と、実父を相次いで亡くしました。実母は、2017年にすでに他界していました。ため息をついては泣いてばかりで、食欲もなくなり、心も体も、真っ暗な世界に落とされたような日々でした。

その年の暮れ、わたしはブレイクスルー・エクスペリエンス(BTE)というセミナーに参加し、オンラインで、Dr.ディマティーニから直接セッションを受けました。失ったと感じていたものが、形を変えて、いまもわたしのまわりにあることに気づいたとき、喪失感は、体の奥からわきあがる感謝の涙に変わりました。

義父は、亡くなる間際に「ありがとう」と言って、何度もわたしの手を握ってくれました。最期の「ありがとう」を受け取ったとき、見送ることは、つらいだけの時間ではないのだと感じました。

死への恐怖の多くは、いつか来る別れや、失うことへの怖さです。その怖さもまた、両方の面を見ていくことで、少しずつほどけていくのだと、わたしは感じています。

セッションを受けてくださった方からも、大切な人との別れについて、こんな声をいただいています。

夫を3ヶ月前に看取りました。(中略)夫をなくした以降は、夫との思い出の場所へいくと胸がしめつけられて息もできなくなるほど辛くなりました。毎日が灰色にみえるのです。(中略)愛原さんのセッションをうけたら、号泣しました。今は、夫がいなくても私は幸せなのだと思えるようになったのです!

HANさん(50代)

※個人の感想です。感じ方は人それぞれで、同じ結果をお約束できるものではありません。

ひとりでできる「怖さの奥を見る」ワーク

死ぬのが怖い気持ちが、何度もよみがえるときは、昼間の落ち着いた時間に、次の順番で書き出してみてください。

  1. いまの怖さの強さを、0〜10でつける
  2. 「死ぬのが怖い」のは、何を失いたくないからかを書く
  3. その奥で、あなたが本当に大切にしたいものを書く
  4. 命に限りがあることの「つらいところ」を書く
  5. 限りがあるからこそ気づけたこと・大切にできていることを、4と同じ数になるまで探す
  6. 書き終えたら、もう一度、怖さの強さを0〜10でつける

例:子どもの成長を見られなくなるのが怖い

→ 本当に大切にしたいもの:家族と一緒に過ごす時間

→ 限りがあることのつらいところ:いつか、子どもと別れる日がくる

→ 限りがあるからこそ気づけたこと:今日の「おかえり」がありがたいと思える/ケンカをしても、その日のうちに仲直りしようと思える/いま、子どもに伝えたい言葉がはっきりした

最初は、つらいところばかりが浮かぶと思います。それで大丈夫です。怖さが強いときほど、マイナスの面が大きく見えるものだからです。同じくらいの数になるまで、ゆっくり探してみてください。

※このワークは、死を「よいこと」と思いこむためのものではありません。書いている途中で苦しくなったら、そこでやめて大丈夫です。怖さで眠れない日が続くときは、先に「受診・相談の目安」を参考にしてください。

参考

▲ 目次に戻る

死への恐怖をほどくワークシート(無料PDF)

この記事でご紹介した方法を、そのまま試せるワークシートを用意しました。印刷して、書き込んで使えます。夜に怖くなったときではなく、気持ちが落ち着いている昼間に書いてくださいね。

1枚目は「怖さを見つめる」です。いちばん怖いことと怖さの強さ(0〜10)、怖さが強くなる場面、そのときの体の状態を書き、怖さを「変えられないこと」と「いま、わたしにできること」に分けます。

2枚目は「怖さの奥にある大切なもの」です。何を失いたくないのか、本当に大切にしたいものは何かを書き、命に限りがあることの「つらいところ」と「限りがあるからこそ気づけたこと」を、同じ数だけ書き出します。最後に、今日伝える「ありがとう」を書きます。

無料ダウンロード

死への恐怖をほどくワークシート(PDF・A4/2枚)

1枚目は「怖さを見つめる」。いちばん怖いこと、怖さが強くなる場面、体の状態を書き、「変えられないこと」と「いまできること」に分けます。2枚目は「怖さの奥にある大切なもの」。限りがあることのつらいところと、限りがあるからこそ気づけたことを、同じ数だけ書き出します。

PDFをダウンロードする ›

※2枚目は、ディマティーニメソッドの考え方をもとにした愛原百麗オリジナルのものです(公式教材ではありません)。医療の診断や治療の代わりにはなりません。

▲ 目次に戻る

よくある質問

木製のクエスチョンマーク

Q. 死ぬのが怖いのはおかしいですか?どのくらいの人が怖いと感じていますか?

おかしくありません。前野隆司さんが行ったアンケートでは、54%の人が「死ぬのが怖い」と答えていました(調べ方のくわしい内容は公表されていません)。半分以上の人が、同じ怖さを抱えているということです。怖さが強すぎて生活に支障が出ているときは、この記事の「受診・相談の目安」を参考にしてください。

Q. 死ぬのが怖いと感じやすいのは、何歳くらいですか?

アメリカの研究では、死への不安は男女とも20代がいちばん高く、その後は年齢とともに下がる傾向がありました。ただし女性は、50代にもう一度、不安が高まる山が見られました。子どもも、小学生のころから「死」を意識して、怖がることがあります。何歳で感じても、おかしなことではありません。

Q. 死恐怖症(タナトフォビア)は治りますか?何科に行けばいいですか?

死恐怖症は正式な病名ではありませんが、生活に支障が出るほどの怖さは、心療内科や精神科で相談できます。15の研究をまとめた分析では、カウンセリングなどの心理的な支援で死への不安がやわらぐことがわかっていて、とくに認知行動療法の効果が大きかったと報告されています。動悸や息苦しさなどの体の症状があるときは、まず内科で体の検査を受けておくと安心です。

Q. 子どもに「死ぬのが怖い」と言われたら、どう答えればいいですか?

まずは「そうだよね、怖いよね」と、気持ちを受けとめてあげてください。「そんなこと考えないの」と打ち消すと、子どもは怖さをひとりで抱えこんでしまいます。そのうえで、年齢に合わせて、正直に、でも安心できる言葉で伝えましょう。たとえば「多くの人は、おじいちゃん、おばあちゃんになるまで、長い時間を生きるんだよ」「ママもパパも、元気でいられるように気をつけているよ」など。寝る前に怖がるときは、そばにいて背中をさすってあげるだけでも、安心できます。怖さが長く続いて眠れない、学校に行けないときは、小児科やスクールカウンセラーに相談してください。

Q. 死んだら、どうなるのですか?

正直にお伝えすると、看護師のわたしにも、わかりません。ただ、看取りの現場では、不思議なお話を聞くことがあります。ある患者さんは、「大きな川をわたってみたら、草もないような荒れ地だった。それなら、草がボーボーになっている我が家のほうがマシだと思って、家に帰ってきた」と話してくれました。亡くなる前の方が、ほかの人には見えない人や風景について話すことは、在宅で家族を看取った遺族への調査でも、約4割の方が経験していたと報告されています(いわゆる「お迎え」)。信じるかどうかは自由です。穏やかな表情で話される方もいることを、お伝えしておきますね。くわしくは「せん妄に家族ができること」でも書いています。

Q. 死ぬのが怖いのに、「消えたい」と思うこともあります

矛盾しているように感じるかもしれませんが、つらさが強いときには、両方の気持ちが同時に浮かぶことがあります。ひとりで抱えずに、#いのちSOS(0120-061-338)やよりそいホットライン(0120-279-338)に電話してください。どちらも24時間・無料です。心療内科や精神科にも、相談してくださいね。

▲ 目次に戻る

死ぬのが怖いと感じているあなたへ

花の咲く朝の野原で、ベンチに座ってやわらかな朝日を見つめる女性のうしろ姿の水彩イラスト

夜、ひとりで怖さと向き合ってきた時間は、とても心細かったと思います。

でも、死ぬのが怖いのは、あなたが弱いからではありません。生きたい、大切な人と一緒にいたいと、心から思っているしるしです。

怖さを、すぐに消そうとしなくて大丈夫です。今夜は、「いま、怖いと感じている」と怖さに名前をつけて、吐く息を長くしてみてください。それでも眠れないときは、瞑想の音声や好きな音楽を流したり、誰かと話したりして、ひとりで抱えこまないでくださいね。そして明日、怖さの奥にある「大切なもの」を、ひとつだけ書いてみてください。ひとりでは、怖さの奥がなかなか見えないこともあります。そんなときは、誰かと一緒に探したほうが見つかりやすくなります。

▲ 目次に戻る

死ぬのが怖いときは|まとめ

  • 死ぬのが怖いのは、おかしなことではない。アンケートでは、半数以上の人が「死ぬのが怖い」と答えている
  • 怖さの正体は、無になる・痛みや苦しみ・大切な人との別れ・やり残し・体と心のSOSの5つ。何が怖いかを分けると、向き合い方が選べる
  • 夜に怖くなったら、明かりをつけて吐く息を長く。眠れないときは、瞑想や音楽、笑える動画やペットとの時間、誰かとの会話、夜中でもつながる相談窓口に頼って、ひとりで抱えない。考えるのは、昼間の「心配タイム」に
  • 2週間以上眠れない、発作をくり返す、「消えたい」気持ちもあるときは、心療内科・精神科や相談窓口へ
  • 怖さの奥には、あなたが本当に大切にしたいものがある。両方の面が見えてくると、怖さは少しずつ落ち着いていく

今日は、ワークシートの2枚目に、「死ぬのが怖い」のは何を失いたくないからかを、ひとつだけ書いてみてください。

最後までお読みくださりありがとうございました。

死ぬのが怖い気持ちを、ひとりで抱えなくて大丈夫です

看護師として39年、多くの方を見送り、家族としても義父と義母を見送ってきたわたしが、怖さの奥にある、あなたの大切なものを一緒に見つけていきます。
まずは無料のZoom相談(30分)で、お話ししてみませんか。無理な勧誘はいたしません。

無料Zoom相談 30分 に申し込む ›

▶ セッションの詳しい内容はこちら(VFセッションとDMセッションのご案内)

愛原百麗 公式LINE

「まだ相談は早いかな」と感じた方へ

LINEで友だち追加すると、『感情と臓器のつながり セルフケア早見表』(PDF)がすぐに届きます。ときどき、新しい記事や無料相談のご案内もお届けします。

LINEで早見表を受け取る ›

メールアドレスの入力はいりません。いつでもブロックできます。

話してみたくなったときは

▶ 無料Zoom相談(30分) カメラオフでも参加できます

▶ お問い合わせフォーム 文章でのご相談・ご質問に、愛原百麗が直接お返事します