「ホリスティック」という言葉を、最近よく耳にしませんか?
医療や看護の現場だけでなく、ヨガや瞑想、食事、美容の分野でも使われるようになりました。
ただ、「なんとなく体にやさしそう」というイメージが先に広がり、本来の意味を知る機会は意外と少ないように感じます。
こんにちは、看護師でライフコーチ、ディマティーニメソッドのファシリテーターの愛原百麗です。

わたしは看護師として39年、病棟で多くの患者さんとご家族に関わってきました。自分自身も病気の治療を経験しています。
その中で実感してきたのが、人は体だけでできているわけではないということでした。
この記事は、看護師や介護職など人をケアするお仕事の方、そして自分の心と体を大切にしたいと感じている方に向けて書いています。
この記事では
・ホリスティックとは?意味と語源
・ホリスティック医学とは?考え方の5つの要点
・心と体と環境の「つながり」
・自然治癒力を大切にする考え方と看護の現場で感じたこと
・ホリスティックケアとは?看護と日常のセルフケアでできること
・病や老いの意味と自己実現
・心のケアとしてのディマティーニメソッド
・よくある質問
について、わかりやすく解説します。
ホリスティックとは?意味と語源

ホリスティック(holistic)は、ギリシャ語で「全体」を表す「ホロス(holos)」が語源とされる言葉です。
英語の whole(全体)、heal(癒す)、health(健康)、holy(聖なる)も、同じ流れをくむ言葉だといわれています。
つまりホリスティックとは、ものごとを部分に分けずに「まるごと全体」としてとらえる見方のことです。
健康の分野でいえば、次のような意味合いを含みます。
全体性:体・心・生き方を切り離さずに見る
つながり:人と人、人と社会、人と自然との関わりを大切にする
バランス:どこか一か所ではなく、全体の調和に目を向ける
「ホリスティックな視点」「ホリスティックなアプローチ」という言い方は、症状だけでなく、その人の暮らしや気持ちまで含めて見ていこうという姿勢を表しています。
ホリスティック医学とは?考え方の5つの要点
そもそも、健康とはどういう状態でしょうか。
病気が見つからないことだけが健康、というわけではありませんよね。検査の数値に問題がなくても、眠れない、気持ちが沈む、人間関係に疲れている。そんなとき、わたしたちは「元気」とは感じにくいものです。
ホリスティック医学は、人を体・心・魂(生きる意味)・環境まで含めた存在としてとらえ、全体の調和を目指す医療の考え方です。
日本では、NPO法人 日本ホリスティック医学協会がその定義をまとめています。わたしなりに要点を整理すると、次の5つになります。
1. 人をまるごと見る
臓器や症状だけでなく、心の状態や生活環境、生きがいまで含めて健康を考えます。
2. 自然治癒力を土台に置く
人がもともと持っている回復しようとする力を尊重し、それを支えることを大切にします。
3. 本人が主役、医療者は伴走者
癒しの主体は患者さん自身。医療者はそのプロセスを支える立場だと考えます。
4. さまざまな方法を組み合わせる
西洋医学を基盤にしながら、伝統医学や心理療法、栄養、運動なども含めて、その人に合った方法を選んでいきます。
5. 病の意味に目を向け、自己実現につなげる
病気や老いを否定するだけでなく、そこから気づきを得て、自分らしい生き方へつなげていくことを目指します。
正確な定義は、協会のページで確認してみてください。
▶ 参考:NPO法人 日本ホリスティック医学協会「ホリスティック医学の定義」
ここで大切なのは、ホリスティック医学は西洋医学と対立するものではないという点です。
手術や薬物療法などの標準治療を否定したり、置き換えたりするものではありません。標準治療を土台にしながら、その人全体を支える視点を足していく考え方だと、わたしは理解しています。
心と体と環境の「つながり」
ホリスティックな考え方の中心にあるのが、「つながり」です。
まず、心と体はつながっています。
緊張すると胃が痛くなる。心配ごとがあると眠れない。うれしいことがあると体が軽く感じる。誰にでも覚えがあるのではないでしょうか。
つながりは、ひとりの人の中だけにとどまりません。
- 家族や職場、地域など、人と人とのつながり
- 暮らしている社会や文化とのつながり
- 食べもの、水、空気、季節など、自然とのつながり
わたしたちは、こうした大きな循環の一部として生きている、というのがホリスティックな見方です。
病棟でも、ご家族との関係がこじれたままの患者さんは、どこか体もこわばっているように見えることがありました。反対に、面会のあとに表情がやわらぎ、食事がすすむ方もいらっしゃいました。人とのつながりも、その人の健康の一部なのだと感じます。
目に見えるものも、目に見えないものも含めて全体を見渡す。そうすると、病気さえも「ただ悪いもの」としてではなく、全体のバランスが崩れていることを知らせるサインのひとつとして見えてくることがあります。
だからこそ、ホリスティックの考え方は医療だけでなく、教育や農業などの分野でも使われています。体は食べたものからできているので、食べものを育てる農業と健康は、切り離せない関係にあるのです。
自然治癒力を大切にする考え方と看護の現場で感じたこと

ホリスティック医学では、人がもともと持っている自然治癒力を、癒しの出発点と考えます。
傷口が自然にふさがっていくように、体には回復しようとする力が備わっています。治療は、その力が働きやすい状態を整えるもの、という見方です。
わたしが病棟で働いていたとき、アロマオイルを使ったハンドマッサージなどを取り入れる機会がありました。
香りに包まれながら手や足に触れてもらうと、「ほっとした」「呼吸がしやすく感じる」とおっしゃる患者さんもいらっしゃいました。表情がふっとやわらぐ瞬間を、何度も見てきました。
もちろん、アロマで病気が治るわけではありません。感じ方にも個人差があります。
それでも、印象に残っていることがあります。
医療スタッフがご家族にハンドマッサージのやり方をお伝えし、一緒に行ったときのことです。言葉が少なくなっていた患者さんとご家族が、手を通して深く交流するきっかけになっていました。
そして、その変化を感じた看護師や医療スタッフ自身も、あたたかい気持ちになるのです。
ケアは、受ける側だけでなく、ケアをする側も満たしていく。わたしはそこに、ホリスティックな関わりの本質があるように感じています。
ホリスティックケアとは?看護と日常のセルフケアでできること
ホリスティックケアとは、ホリスティックな考え方にもとづいて、その人の体・心・生活・人間関係を含めた全体を支えるケアのことです。
看護の世界では、患者さんの身体面だけでなく、心理的・社会的な面、そして生きがいや価値観といった面まで含めて関わることが大切にされてきました。ホリスティックケアは、看護がもともと大切にしてきた視点ともいえます。
たとえば、同じ「眠れない」という訴えでも、背景は人によって違います。痛みがあるのか、明日の検査が不安なのか、家に残してきた家族が心配なのか。
症状の奥にある「その人の事情」に目を向けること。それが、ホリスティックケアの出発点です。
看護師や医療スタッフが、医学的な治療に加えてこうした視点を持って関わる医療施設も増えてきました。これをホリスティックアプローチと呼ぶこともあります。
ホリスティックケアは、医療者だけのものではありません。自分自身に向けて行うセルフケアにも、同じ考え方が使えます。特別な道具がなくても、日常の中でできることはたくさんあります。
睡眠:眠る前の1時間はスマホを置き、照明を落とす
食事:旬のものを取り入れ、「何を食べたか」より「どう味わったか」にも目を向ける
呼吸・瞑想:1日5分、ゆっくり吐く呼吸に意識を向ける
人とのつながり:安心して話せる人と過ごす時間をつくる
感情のケア:怒りや悲しみを押し込めず、ノートに書き出してみる
看護や介護のお仕事をしている方は、つい自分のケアを後回しにしがちです。
でも、ケアする人が満たされていることは、ケアの質そのものにつながります。まずはひとつ、できそうなことから始めてみてくださいね。
呼吸や瞑想をやってみたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
病や老いの意味と自己実現

ホリスティックな考え方では、病気や障害、老い、死を、ただ否定的にとらえることはしません。
そこにある意味に気づき、生きることと死ぬことのプロセスの中で、より深く満たされた自分らしい生き方を目指していきます。
病気であってもなくても、生きているということは、いつか必ず最期を迎えるということです。
だからこそ、最期から逆算して考えてみる。
1. 日々をどう在り、どう過ごしたいのか?
2. 何を実現したいのか?
3. そのために、何を行動(アクション)するのか?
この3つの問いを持ちながら、その人が自分らしく生きることを支えていく。それが、わたしの考えるホリスティックアプローチです。
病棟で最期の時間を過ごす方の中には、「もっと早く、自分のしたいことをしておけばよかった」と話してくださる方もいました。一方で、限られた時間の中で家族に感謝を伝え、穏やかな表情で過ごされた方もいます。その違いを分けていたのは、病気の重さよりも、自分にとって何が大切かを知っていたかどうかだったように思います。
闘病中の方だけでなく、仕事や子育て、介護に追われている方にとっても、立ち止まって考える価値のある問いだと思います。
ノートを開いて、ひとつずつ書き出してみてくださいね。
心のケアとしてのディマティーニメソッド
ホリスティックケアの中で、見落とされやすいのが感情のケアです。
過去の悲しみや怒り、罪悪感。長く抱えてきた感情は、気づかないうちに心と体の負担になっていることがあります。

わたしがファシリテーターを務めるディマティーニメソッドは、こうした感情の負荷を整理していく心のワークです。
ポイントは2つあります。
- 価値の序列(その人にとっての価値観の優先順位)を明らかにし、自分が本当に大切にしているものを知る
- つらかった出来事や人について、プラスとマイナスの両面を見ていき、心のバランスを取り戻す
出来事を「なかったこと」にするのではなく、偏っていた見方を全体に戻していく。その意味で、ホリスティックな「まるごと見る」視点とも重なるところがあると感じています。
よくある質問

Q. ホリスティックとスピリチュアルは同じですか?
同じではありません。
ホリスティックは、人を体・心・環境まで含めた全体として見る「見方」のことです。医療や看護、教育などの分野で使われてきた考え方で、特定の信仰や世界観を前提にしているわけではありません。
一方で、「魂」や「生きる意味」といった目に見えない面も大切にするため、スピリチュアルと重なる部分があるのも事実です。重なる部分はあっても、イコールではない、と考えるとわかりやすいと思います。
Q. ホリスティックな考え方を取り入れたら病院の治療はやめてもいいですか?
いいえ。自己判断で治療をやめないでください。
ホリスティック医学は、標準治療に置き換わるものではありません。治療を土台にしながら、心や生活を含めて全体を支えていく考え方です。
アロマや瞑想、食事の工夫などを取り入れたいときは、まず主治医に相談してください。組み合わせ方によっては注意が必要な場合もあります。
Q. 看護師がホリスティックケアとして実践できることは?
特別なことをしなくても、始められることはたくさんあります。
- 処置の前後に、その人の気持ちや生活の話に耳を傾ける
- ご家族も含めて、その人を取り巻く関係に目を向ける
- 施設で認められている範囲で、手に触れるケアや環境の工夫を取り入れる
- そして何より、看護師自身が自分の心と体をケアする
忙しい現場だからこそ、「この人の全体を見よう」という意識そのものが、ホリスティックケアの第一歩になります。
心と体はつながっている──看護師として感じてきたこと
看護師として39年、多くの患者さんと関わる中で、心の状態が体にも影響していると感じてきました。
同じ病気、同じ治療でも、安心できる人がそばにいる方と、不安を抱えたままの方とでは、表情も回復の歩みも違って見えることがありました。
わたし自身も病気の治療を経験し、ホリスティックな考え方を学ぶ中で、ドクター・ディマティーニ・メソッドに出会いました。
体の治療は医療に委ねながら、心に抱えてきたものを少しずつ下ろしていく。その経験が、いまのわたしの活動の土台になっています。
セッションでは、過去の悲しみや怒りなど、心に抱えてきた感情の負荷を解消し、あなたらしい自己実現をサポートしています。
ホリスティックとは?意味とホリスティックケアのまとめ
- ホリスティックとは、ギリシャ語の「ホロス(全体)」が語源で、人をまるごと全体として見る考え方
- ホリスティック医学は、全体性・自然治癒力・本人主体・方法の組み合わせ・自己実現を大切にする医療観で、標準治療に置き換わるものではない
- 心と体、人と社会、人と自然はつながっている
- 看護の現場では、アロマなどのケアを通して、患者さんとご家族の交流が深まる場面もあった
- ホリスティックケアは、睡眠・食事・呼吸・人とのつながり・感情のケアなど、日常の中で始められる
- 最期から逆算する3つの問いが、自分らしい生き方の手がかりになる
- 感情のケアの方法として、価値の序列と両面を見るディマティーニメソッドがある
ホリスティックな考え方は、医療従事者だけのものではありません。治療やケアを受ける側も知っておくことで、自分の体と心への向き合い方が、少しやさしく変わっていくはずです。
※本記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療に代わるものではありません。セッションは医療行為ではありません。治療中の方は、主治医にご相談のうえご利用ください。
心と体を、ホリスティックに整える第一歩を
心の重荷をおろすことも、自分を大切にするケアのひとつです。
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