朝7時半。デイサービスの迎えの車が、もう家の前に来ている。
「今日は行かん」
父は布団をかぶったまま、動こうとしない。なだめても、説得しても、最後は「うるさい!」と怒鳴られて終わる。
迎えの職員さんに頭を下げて、車を見送る。会社には、また遅れると連絡しなければならない。
「どうして、わたしばっかり」
父親の介護がつらい。正直、もう介護したくない。そう思ってしまう自分を、責めていませんか。
こんにちは、看護師でライフコーチ、ディマティーニメソッドのファシリテーターの愛原百麗です。

最初にお伝えしたいのは、父親の介護がつらい、したくないと感じるのは、あなたが冷たい人だからではないということです。
わたし自身も、かつてアルコール依存症で、毎日のように怒鳴っていた義父を、8か月間、自宅で介護しました。最初から、穏やかな気持ちで介護に向き合えたわけではありません。
この記事では、看護師として、父親の介護がつらくなる理由と、わがまま・頑固な父親との向き合い方、ひとりで抱えないための相談先や制度をお伝えします。
そして、介護のつらさの正体を知る「B面」という見方と、わたしが義父の介護で体験したことも、写真とともにご紹介します。
この記事では
・父親の介護がつらい、したくないと感じるのは、おかしくない理由
・父親の介護がつらくなる5つの理由
・わがまま・頑固な父親との向き合い方|看護師が伝える6つのコツ
・介護をひとりで抱えないための相談先と、使える制度
・「父親の介護をしたくない」ときに知っておきたいこと(義務と選択肢)
・介護のつらさの正体を知る「B面」の見方と、わたしの体験
・我慢してはいけないケース(重要)
について解説します。
ノートとペンを用意して、読み進めてみてくださいね。
無料PDFこの記事はワークシート付きです
記事の中でご紹介する『介護のつらさをほどく 両面ワークシート(父親の介護編)』(PDF・A4/2枚)を、無料でダウンロードできます。印刷して、そのまま書き込めます。
父親の介護がつらい・したくないと感じるのはおかしいことではありません

「親なんだから、介護するのは当たり前」
「育ててもらったのに、したくないなんて」
そう思うほど、苦しくなっていませんか。
介護は、ある日突然始まることが多く、いつまで続くのかもわかりません。仕事や子育て、自分の家庭のことも抱えながら、休みなく続いていきます。
しかも相手が父親だと、母親の介護とはまた違ったむずかしさがあります。
こんな気持ち、ありませんか
・何を言っても「いらん」「自分でできる」と、言うことを聞いてくれない
・デイサービスやヘルパーさんを嫌がって、結局わたしが全部やっている
・ありがとうのひと言もなく、命令ばかりされる
・おむつ交換やお風呂の介助に、どうしても抵抗がある
・昔、怒鳴られたり否定されたりした記憶がよみがえる
・「早く終わってほしい」と思ってしまい、そんな自分が怖くなる
ひとつでも当てはまるなら、それだけひとりで頑張ってきたということです。
「介護したくない」という気持ちは、心とからだが「もう限界に近い」と知らせているサインでもあります。まずは、そう感じている自分を責めないところから始めましょう。
父親の介護がつらくなる5つの理由

父親の介護がつらくなる理由は、ひとつではありません。いくつかが重なっていることがほとんどです。
理由1:わがまま・頑固で言うことを聞いてくれない
「自分でできる」と言い張って、ふらついていても手を貸させない。一度決めたことは、絶対に曲げない。
父親の世代の男性は、「家族を守る側」「頼られる側」として生きてきた人が多いものです。そのぶん、子どもに世話をされること自体が、プライドを傷つけることがあります。
わがままや頑固さは、「まだ自分は大丈夫だ」と思っていたい気持ちの裏返しであることも多いのです。
理由2:介護サービスを嫌がって家族ばかりに負担がかかる
デイサービスに行かない。ヘルパーさんを追い返す。「他人の世話にはならん」の一点張り。
サービスを使えないと、そのぶんの負担が、全部家族にのしかかります。外の手を借りられないことが、介護をいちばんつらくしていることも少なくありません。
理由3:昔の父親との関係が介護でよみがえる
子どものころに怒鳴られた。進路を否定された。お酒を飲むと人が変わった。
そんな父親を、今度は自分が世話をする。心の整理がつかないまま介護が始まると、昔の気持ちが何度もよみがえって、つらさが何倍にもなります。
理由4:異性の親のからだのお世話への抵抗
おむつ交換、トイレの介助、お風呂。
娘が父親のからだのお世話をすることに、抵抗を感じるのは自然なことです。それは父親の側も同じで、娘に下の世話をされることを、恥ずかしく、情けなく感じていることがあります。
お互いに気まずいからこそ、プロの手を借りていい部分です。このことは、あとの向き合い方でもお伝えしますね。
理由5:仕事や家庭との両立で自分の時間がなくなる
仕事を休んで通院に付き添う。夜中に呼ばれて、眠れない。週末は実家との往復で終わる。
自分のための時間がなくなると、人は誰でも余裕をなくします。イライラしてしまうのは、あなたの性格のせいではありません。
ディマティーニメソッドでは、人が何を大切にしているかの順番を「価値の序列」(価値観の優先順位)と呼びます。
介護がつらいのは、介護があなたの価値の序列の上位にあるもの(仕事、子ども、自分の時間など)を削っているように感じるからでもあります。この見方は、あとの「B面」と、わたしの体験の中でもう一度ふれますね。
わがまま・頑固な父親との向き合い方|看護師が伝える6つのコツ

ここからは、看護師として多くの患者さんとご家族に関わってきた経験から、わがまま・頑固な父親との向き合い方をお伝えします。
まず知っておいてほしいのは、わがままや頑固に見える言動の奥には、プライドや不安、からだの変化が隠れていることが多いということです。

1. 「できること」は奪わず父親に任せる
時間がかかっても、本人ができることは本人にしてもらいます。
着替えのボタンをとめる、食事を自分で口に運ぶ、新聞をとりに行く。「まだ自分でできる」という感覚は、父親のプライドを守り、からだの機能を保つことにもつながります。
全部やってあげるほうが早くても、少しだけ待ってみてください。
2. 命令ではなく「相談」の形で伝える
「デイサービスに行って」より、「わたし、木曜は仕事を休めないんだけど、どうしたらいいと思う?」。
父親を「世話をされる人」ではなく、「頼られる人」の立場に置くと、意外なほどすんなり受け入れてくれることがあります。
3. 説得は家族より第三者から
家族の言うことは聞かないのに、主治医やケアマネジャーに言われると素直に従う。これは、とてもよくあることです。
家族は近すぎるぶん、どうしても感情がぶつかります。サービスや受診をすすめたいときは、主治医やケアマネジャーから話してもらえるよう、前もってお願いしておきましょう。
4. 怒りっぽさや拒否の裏にあるからだのサインを見る
急に怒りっぽくなった。薬を飲まなくなった。食べなくなった。
その裏には、耳の聞こえにくさ、痛み、便秘や脱水、眠れていないこと、認知症のはじまり、薬の副作用などが隠れていることがあります。
「わがままになった」と決めつける前に、いつから、どんなふうに変わったかをメモして、主治医に伝えてみてください。原因がわかって対処できると、介護がぐっと楽になることもあります。
5. 下の世話やお風呂はプロに任せていい
おむつ交換やお風呂の介助は、ヘルパーさん、訪問入浴、デイサービスのお風呂にお願いすることができます。
家族でなければいけない理由はありません。からだのお世話をプロに任せることで、家族は「家族にしかできないこと」に力を使えるようになります。
父親にとっても、娘より他人のほうが気が楽、ということは少なくありません。
6. 「その人らしさ」を大切にする
介護が始まると、つい「安全」や「正しさ」ばかりを優先してしまいます。
もちろん安全は大切です。でも、好きなものを食べる、好きな番組を見る、好きな場所に出かける。そうしたその人らしい楽しみが、本人の笑顔や、生きる力につながることがあります。
最近では、病院でも、終末期にその人らしく過ごすことを大切にして、ノンアルコールビールを出す許可をくれることがあります。
わたしの義父も、亡くなる1か月前に、主治医の許可をいただいて、大好きなビールを飲みました。そのときの写真は、あとでご紹介しますね。
看護師からのお願い
・お酒や食べものの制限は、病気やお薬によって違います。必ず主治医に相談してからにしてください
・在宅酸素を使っているときは、タバコ、ガスコンロ、ろうそく、お線香などの火気を、2m以内に近づけないでください
介護をひとりで抱えないために|相談先と使える制度
父親の介護でいちばん避けたいのは、ひとりで全部を抱えこむことです。
まずは「地域包括支援センター」へ
どこに相談すればいいかわからないときは、お住まいの地域の地域包括支援センターに連絡してみてください。高齢の方とその家族のための総合相談窓口で、相談は無料です。
本人が嫌がっていても、家族だけで相談することもできます。介護保険を使うための申請(要介護認定)の手続きも、ここで教えてもらえます。
ケアマネジャーにつらさを正直に伝える
要介護認定を受けると、ケアマネジャー(介護支援専門員)が、介護サービスの計画(ケアプラン)を一緒に考えてくれます。
「父が嫌がるので」と遠慮せずに、「わたしがもう限界です」と正直に伝えてください。家族の負担を減らすことも、ケアプランを考えるうえで大切な情報です。
家族が休むためのサービスを使う
デイサービス(通所介護):日中、施設で食事やお風呂、リハビリなどを受けられます
ショートステイ(短期入所):数日から1週間ほど、施設に泊まれます。家族が休むためや、用事で家をあけるときにも使えます
訪問介護(ヘルパー)・訪問入浴:自宅で、からだのお世話や家事を手伝ってもらえます
訪問診療・訪問看護:通院がむずかしくなったら、医師や看護師が自宅に来てくれます
仕事を辞める前に介護休業と介護休暇を
働いている方は、法律で決められた制度を使うことができます。
介護休業:介護が必要な家族1人につき、通算93日まで。3回まで分けて取れます。条件を満たせば、雇用保険から介護休業給付金が支給されます
介護休暇:介護が必要な家族が1人なら年5日、2人以上なら年10日。1時間単位でも取れます
介護休業は、自分が介護をするためだけの期間ではなく、介護の体制を整えるための期間と考えると、使いやすくなります。くわしくは、勤め先の人事担当や、お近くのハローワークに確認してみてください。
わたしの場合:チームに支えられた8か月
わたしが義父を自宅で介護したのは、8か月間でした。
そのあいだに、救急車で病院に運ばれたことが1回あります。正直、この先どうなるのだろうと、不安でいっぱいでした。
でも、義父の体調が回復していくのと一緒に、医療と介護のスタッフが集まる話し合い(サービス担当者会議)を重ねるうちに、その不安はすっかり消えていきました。

亡くなる2か月前の義父と、往診の主治医の先生、ケアマネジャーさん。義父の手には大好きなお酒
在宅介護を続けられたのは、ケアマネジャーさんや医療スタッフ、ヘルパーさんのサポートがあったからこそです。
家族だけで頑張らなくていい。これは、わたしが身をもって感じたことです。
「父親の介護はしたくない」と思ったときに知っておきたいこと
「介護したくない」と思うことは、悪いことではありません。そのうえで、知っておくと気持ちが少し楽になることがあります。
子どもには親を扶養する義務がある。でも…
民法では、親子などの直系血族は、互いに扶養する義務があるとされています。
ただし一般的には、自分の生活を犠牲にしない範囲での、経済的な援助が中心と考えられています。同居して身の回りのお世話をすることまで義務づけているわけではない、と説明されることが多いです。
義理の父親(配偶者の父)の場合
義理の父親に対しては、法律上、原則として扶養の義務はありません。特別な事情があるときに、家庭裁判所が義務を負わせることがある、という位置づけです。
義理の父親の介護をしている方は、本来は義務ではないことを、引き受けているのだと知っておいてください。それだけで、少し見え方が変わるかもしれません。
「しない」ではなく「ひとりではしない」を選ぶ
ただし、同居して介護を担っている家族が、必要なお世話を放っておくと、介護放棄(ネグレクト)として問題になることがあります。
だからこそ、限界を感じたら、「できない」と早めに声をあげて、サービスや施設につなぐことが大切です。
施設に入ってもらう、離れたところから見守る、お金の面で支える。どれも、立派な介護のかたちです。
個別の事情で迷うときは、法律の専門家に相談することもできます。特に次のようなときは、早めに相談しておくと安心です。
法律の専門家に相談したほうがいいケース
・きょうだいが介護も費用も分担してくれず、話し合いがまとまらない(家庭裁判所の「扶養請求調停」という方法もあります)
・親が認知症になり、預金の引き出しや施設との契約ができなくなった(成年後見制度)
・きょうだいが、親のお金を使い込んでいる気がする
・義理の親を介護したので、相続のときに考慮してほしい(相続人ではない親族も請求できる「特別寄与料」。相続を知ってから6か月以内、または亡くなってから1年以内という期限があります)
・介護施設で事故が起きた、契約や費用でトラブルになった
・介護休業を申し出たら、職場で不利な扱いを受けた(都道府県の労働局でも、無料で相談できます)
相談先は、法テラス(サポートダイヤル 0570-078374)、お住まいの市区町村の無料法律相談、弁護士会の法律相談センターなどです。法テラスでは、収入や資産が一定以下であれば、同じ問題につき30分の無料相談を3回まで受けられます。
成年後見のことは、地域包括支援センターでも、相談の入り口を教えてもらえます。
介護のつらさの正体を知る:ディマティーニメソッドの「B面」という見方
サービスを使っても、制度を知っても、父親のひと言に心がざわついて、つらさが消えない。
そんなときは、つらさの正体そのものを見ていく方法があります。

わたしがファシリテーターを務めるディマティーニメソッドには、A面・B面・C面という3つの見方があります。
A面は、相手の好きで賞賛している言動を扱います。B面は、相手の嫌いで許せない言動を扱い、そこに隠れたプラス面を見つけていきます。C面は、亡くなった人や去っていった人との別れ、新しく現れた人との出会いを扱います。
わがままで頑固な父親への怒りやつらさは、まさにこのB面で扱うテーマです。
わたしの体験:義父へのB面で介護のブロックが外れた
数年前の義父は、アルコール依存症で、毎日のように怒鳴る人でした。そして、当時のわたしが大切にしていた信仰を、批判されました。
▶ 当時のわたしと信仰のことは、プロフィールでお話ししています
介護に対して、わたしの中には大きなブロックがありました。
そこで、義父をテーマにB面に取り組みました。
怒鳴る姿や、信仰への批判と向き合っていく中で、義父は義父なりに、わたしを守ろうとしていたのだと気がつきました。
その瞬間、涙があふれて、号泣しました。
もうひとつ、大きな気づきがありました。
義母は、亡くなる前に自宅で過ごすことができませんでした。義母に叶えてあげられなかったことを、義父にはしてあげられる。そう気づいたとき、在宅介護が、わたしの大切にしているものとつながったのです。
ディマティーニメソッドでは、目の前の大きな課題と、自分の価値の序列の上位にある大切なものと結びつけることを「リンキング」と呼びます。
こうして、介護に関するわたしの中のブロックが外れていきました。

亡くなる1か月前の義父。主治医の許可をいただき、在宅酸素をしながら大好きなビールを楽しんでいるところ
亡くなる1か月前、義父は主治医の許可をいただいて、在宅酸素をしながら、大好きなビールを飲みました。この笑顔です。
そして最期のとき、義父は「ありがとう」と、何度もわたしの手を握ってくれました。
お葬式にこの写真を飾ると、たくさんの方から「酸素をしながらも、こんな笑顔で過ごせたのですね」と声をかけていただきました。
※義父がお酒を飲めたのは、終末期に主治医が義父の状態を見て判断してくださったからです。お酒については、必ず主治医に相談してください。
B面の考え方を、ひとりでも試せる形にしてお伝えしますね。ノートに書きながら進めてください。
ステップ1:介護の中でいちばん許せない父親の言動を具体的に書く
「父はわがまま」「父は頑固」では、先に進めません。
いつ、どこで、誰に、何と言ったか(何をしたか)まで、場面が浮かぶように書きます。
✖ 父はわがままで、言うことを聞かない
✔ 先週の火曜日の朝、デイサービスの迎えが来たとき、父が「行かんと言ったら行かん!」と怒鳴って、布団から出てこなかった
場面をひとつにしぼると、大きな「つらい」のかたまりが、扱える大きさになります。
ステップ2:その言動が自分にもたらした利益を書く
ここが、いちばん抵抗を感じるところです。
「怒鳴られて得したことなんて、あるわけがない」と感じて当然です。
それでも、その出来事のおかげで得たもの、身についた力、避けられたことを探してみてください。
・ケアマネジャーさんに相談するきっかけになり、頼れる人が増えた
・父の「本当は何がいやなのか」を聞くようになった
・「全部自分でやらなくていい」と、手放すことを覚えた
・介護の制度やサービスにくわしくなった
・自分の老後や、家族にしてほしいことを考えるきっかけになった
すぐには出てこなくて大丈夫です。ひとつ出てくると、次が出てきやすくなります。
また、父親の言葉の奥にある、父親自身の価値の序列にも目を向けてみてください。
たとえば「行かん!」のひと言の奥には、住み慣れた家で、自分のペースで過ごしたいという気持ちが上位にあるのかもしれません。言い方は乱暴でも、父親なりに大切なものを守ろうとしている可能性があります。
ステップ3:自分も同じ言動を誰かにしていないか探す
次に、その言動と同じことを、自分がした場面を探します。
相手は父親でなくてかまいません。形が少し違っていてもかまいません。
「手伝おうか」と言ってくれた夫やきょうだいに、「いい、自分でやるから」と突っぱねたことはないでしょうか。誰かの提案を、話も聞かずに「いやだ」と断ったことはないでしょうか。
差し出された手を、断る。それは、デイサービスを拒む父親と同じ形です。
ここで見つかると、「わたしは正しくて、父はわがまま」という張りつめた気持ちが、少しゆるみます。
ステップ4:介護を自分の大切なものとつなげる(リンキング)
最後に、あなたの価値の序列の上位にある大切なものを3つ書き出します。
そして、父親の介護が、その大切なものにどう役立っているかを、思いつくだけ書いてみてください。
・子どもが上位なら:親を大切にする姿を、子どもに見せられている
・仕事が上位なら:段取りや調整の力が、介護で鍛えられている
・学びが上位なら:医療や介護、制度の知識が、毎日増えている
わたしの場合は、それが「義母に叶えてあげられなかったことを、義父にしてあげたい」でした。
介護が「やらされていること」から「わたしの大切なものにつながっていること」に変わると、同じ毎日でも、心の重さが変わってきます。
父親を好きになる必要はありません。「そういう父親だった」と、ひとつの事実として見られたら十分です。
無料ダウンロード
介護のつらさをほどく 両面ワークシート(父親の介護編)(PDF・A4/2枚)
介護の中で許せない父親の言動を書き出し、隠れたプラス面と自分の中にある同じ言動を探して、最後に介護を自分の大切なものとつなげるシートです。印刷して書き込めます。
※ディマティーニメソッドの考え方をもとにした、愛原百麗オリジナルのワークシートです(公式教材ではありません)。
我慢してはいけないケース
ここは、看護師としてはっきりお伝えします。
ここまでの見方は、介護の中で起こる、ふつうの家族のすれ違いやつらさに向けたものです。
次のようなことが起きている場合は、見方を変えるより先に、あなたと父親の安全を守ることが優先です。
・殴る、物を投げる、脅すなどの暴力や威嚇がある
・お酒を飲むと暴れたり、暴言が止まらなくなったりする
・あなた自身が、眠れない、食べられない状態が2週間以上続いている
・父親に手をあげてしまいそう、または、あげてしまった
・「いなくなればいい」「一緒に死にたい」という考えが、頭から離れない
手をあげてしまいそうになるほど追いつめられているのは、あなたが悪い人だからではなく、ひとりで抱えすぎているからです。今日、誰かに話してください。
地域包括支援センター:介護のつらさや、虐待の心配もふくめて相談できます
精神保健福祉センター:父親のお酒の問題を、家族だけで相談できます(各都道府県・政令指定都市にあります)
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556:お住まいの地域の相談窓口につながります
警察相談専用電話「#9110」:緊急でない相談はこちらへ(身の危険があるときは110番)
よくある質問

Q. 父親の介護をしたくないのは親不孝ですか?
いいえ。介護をしたくないと感じることは、親不孝ではありません。
その気持ちは、あなたの心とからだが、休みを必要としているサインです。
大切なのは、「したくない」気持ちを押しこめることではなく、ひとりで背負わない形を探すことです。
Q. 介護サービスを拒否する頑固な父親をどう説得すればいいですか?
家族が説得しようとするほど、父親はかたくなになりがちです。
まずは、何がいやなのか、理由を聞いてみてください。「知らない人ばかりで疲れる」「年寄り扱いされたくない」など、理由がわかれば、合うサービスを選び直すことができます。
そのうえで、主治医やケアマネジャーからすすめてもらう、まずは見学や体験利用から始めるのがおすすめです。
Q. 父親の下の世話にどうしても抵抗があります
抵抗を感じるのは、とても自然なことです。無理をしなくて大丈夫です。
ヘルパーさんや訪問看護、デイサービスなど、プロに任せられる方法を、ケアマネジャーに相談してみてください。
ご自分でお世話をするときは、始める前に声をかける、見えなくていいところはタオルでおおう、手早く済ませる。これだけでも、お互いの気まずさはずいぶん減ります。
Q. 義理の父親の介護もしなければいけませんか?
法律上、義理の父親に対しては、原則として扶養の義務はありません。
ただ、実際には、夫婦や家族の事情の中で、義理の父親の介護を担っている方がたくさんいます。夫やきょうだいと役割を話し合い、ひとりで抱えない形をつくることが大切です。
わたしも義父の介護をしましたが、介護が、わたし自身の大切なものとつながったことで、心の重さが変わりました。この記事のステップ4(リンキング)も、試してみてくださいね。
Q. 介護が終わったあと後悔しませんか?
後悔するかどうかは、誰にもわかりません。
ただ、後悔しないために、あなたが倒れるまで頑張る必要はありません。サービスに頼った日も、施設にお願いした日も、それはあなたが選んだ、立派な介護です。
もし親を見送ったあとで、後悔や悲しみがあふれてきても、それはおかしなことではありません。亡くなった人への気持ちは、C面の見方で扱うことができます。
父親の介護はひとりで背負わなくていい
父親の介護がつらいのは、家族だからこそ、簡単には手放せないからだと思います。
父親を変えることはできません。何十年もその生き方をしてきた人が、急に変わることはほとんどないでしょう。
でも、頼れる人を増やすこと、そして父親の言動の受け取り方は、あなたが変えられます。
わたしも、義父の介護を通して、そのことを教えてもらいました。
ただ、B面のワークは、ひとりだとステップ2とステップ3で止まってしまう方がとても多いです。毎日顔を合わせて、ぶつかっている相手ほど、プラス面や自分の中の同じ面を見ることを、心が拒むからです。
そこは、誰かと一緒に探したほうが早いところだと思っています。
父親の介護がつらいときのまとめ
- 父親の介護がつらい、したくないと感じるのは、心とからだが限界に近いと知らせているサイン
- つらくなる理由は、わがまま・頑固、サービスの拒否、昔の関係、からだのお世話への抵抗、両立のむずかしさなど
- わがまま・頑固の奥には、プライドや不安、からだの変化が隠れていることが多い
- 向き合い方は、できることは任せる・相談の形で伝える・第三者から話してもらう・からだのサインを見る・プロに任せる・その人らしさを大切にする
- まずは地域包括支援センターとケアマネジャーに相談し、デイサービスやショートステイ、介護休業も使う
- B面の見方は言動を具体的に書く → 自分にもたらした利益を探す → 自分の同じ言動を探す → 介護を自分の大切なものとつなげる
- 暴力やお酒の問題、あなた自身の心身の限界は、我慢する問題ではありません。相談窓口を頼ってください
父親の介護で、ずっと心をすり減らしてきたなら。
それは、あなたが家族を大切に思ってきた証拠です。
父親の介護のつらさを、ひとりで抱えなくて大丈夫です
看護師として、そして義父を自宅で介護した家族として、あなたのつらさと、ひとりでは見つけにくい「隠れたプラス面」を、責めることなく一緒に探します。
どうぞお気軽にお問い合わせくださいね。無理な勧誘はいたしません。
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