夫がいなくなってから、世界の色が薄くなったように感じる。
朝、ふたり分のお茶を淹れそうになって、手が止まる。
よく一緒に行ったスーパーや公園、病院までの道。思い出のある場所の前を通るだけで、胸がしめつけられて息が苦しくなる。
周りからは「そろそろ元気にならなきゃね」と言われるけれど、どうやって元気になればいいのか分からない。
そんな毎日を過ごしていませんか。
こんにちは、看護師でライフコーチ、ディマティーニメソッドのファシリテーターの愛原百麗です。

最初にお伝えしたいのは、悲しみに期限はないということです。
長い時間を一緒に生きてきた夫を亡くしたのです。何か月たっても涙が出るのは、あなたが弱いからではありません。
この記事では、夫を亡くした人の立ち直り方を、看護師として多くの看取りに関わってきた視点と、ディマティーニメソッドの「C面」という見方の両方からお伝えします。
「立ち直る」といっても、夫を忘れることではありません。悲しみを抱えたままでも、少しずつ自分の毎日を取り戻していくことです。
この記事では
・夫を亡くした妻に起きやすい気持ちと体の変化
・「思い出の場所に行けない」「もっとできたはず」という後悔
・夫を亡くした人の立ち直り方6つ
・ディマティーニメソッドの「C面」という見方
・新しい人間関係や再婚を考えることへの罪悪感
について解説します。
つらくなったら、途中で閉じてもかまいません。読めるところから、ゆっくり読んでみてくださいね。
無料PDFこの記事はワークシート付きです
記事の中でご紹介する『喪失感をほどく「失ったもの」と「今あるもの」ワークシート(夫との死別編)』(PDF・A4/2枚)を、無料でダウンロードできます。印刷して、そのまま書き込めます。
夫を亡くした妻に起きやすい気持ちと体の変化

ここは、看護師としてお伝えします。
大切な人を亡くしたあとの反応は、悲しみ(グリーフ)として自然なものです。まずは「こうなるのは当たり前なんだ」と知っておいてください。
夫を亡くした妻の気持ち
心の変化:涙が止まらない、何も感じない、世界が灰色に見える、夫の気配を感じる、「なぜわたしだけ」と怒りがわく、自分を責める
体の変化:眠れない、夜中に何度も目が覚める、食欲がない、疲れがとれない、動悸や胃の不調、物忘れが増える
行動の変化:人に会いたくない、外に出られない、夫の物に触れられない、逆に忙しく動き続けてしまう
長く介護をしてきた方ほど、「悲しい」と「ほっとした」が同時に出てくることもあります。そして、ほっとした自分を責めてしまう。
これも、とても自然な反応です。ほっとしたのは、あなたが限界まで頑張ってきたからです。夫への愛情がなかったからではありません。
手続きや生活の変化で悲しむ時間すらない
夫が亡くなったあとは、葬儀、役所の手続き、年金や保険、相続、名義変更など、やることが次々に押し寄せます。
気が張っているあいだは涙も出ないのに、手続きがひと段落した数か月後に、どっと悲しみがやってくる方も少なくありません。周りが「落ち着いた頃かな」と思うタイミングなので、余計に言い出しにくくなります。
40代・50代で夫を亡くすということ
40代・50代で夫を亡くすと、悲しみに加えて、現実の生活の不安が重なりやすくなります。
子どもの進学や就職、自分の仕事、住まいやお金のこと、義理の家族との関係。まだ親の介護が続いている方もいます。
「わたしがしっかりしなきゃ」と気を張り続けて、泣く場所がどこにもない。同世代の友人はまだ夫婦で過ごしていて、話しづらい。そんな孤独を抱えている方も多いのです。
受診を考えてほしい目安
次のような状態が2週間以上続いているときは、心療内科や精神科に相談してください。
・ほとんど眠れない、または朝起き上がれない日が続いている
・食事がとれず、体重が落ちてきている
・仕事や家事、手続きがまったく手につかない
・何をしても気持ちが動かない状態が続いている
これは意志の弱さではありません。悲しみが体に負担をかけているサインです。受診することは、夫への思いを否定することにはなりません。
「思い出の場所に行けない」「もっとできたはず」という後悔

思い出の場所に行けないのは自然なこと
ふたりでよく歩いた道、毎年出かけた旅行先、行きつけのお店。
そこに行くと、夫がいた景色と、今の景色の違いがはっきりしてしまいます。だから、足が向かなくなるのです。
無理に行かなくて大丈夫です。避けることは、逃げではありません。心が「今はまだ」と教えてくれているだけです。
行ける日が来たら、短い時間、誰かと一緒に、から始めてみてください。
「もっとできたはず」と自分を責めてしまう
看取りのあとに残りやすいのが、後悔です。
「もっと早く病院に連れて行けばよかった」
「最期の日、そばにいてあげられなかった」
「介護で疲れて、きつい言葉を言ってしまった」
「家で過ごしたいという願いを、叶えてあげられなかった」
看護師として多くの看取りに関わってきましたが、後悔がまったく残らないお別れは、ほとんどありません。
後悔が強いのは、それだけ真剣に夫と向き合ってきたからです。そして後悔の多くは、今だから分かることで、あのときの自分を裁いているという形をしています。
あのときのあなたは、限られた時間と体力と情報の中で、そのときできる精いっぱいの選択をしていたはずです。
夫を亡くした人の立ち直り方6つ

ここでお伝えするのは、悲しみを消す方法ではありません。悲しみと一緒に、少しずつ暮らしを立て直していく方法です。できそうなものから、ひとつだけ選んでみてください。
1. 急がず「立ち直る期限」を決めない
「一周忌までには」「子どもの前では泣かないように」と、自分に期限を課していませんか。
悲しみは、押し込めるほどあとで大きく出てきます。「今日は泣いてもいい日」と、自分に許可を出してあげてください。
2. 手続きや家のことは人に頼る
手続きは、ひとりで全部抱えなくていいのです。
子どもや兄弟姉妹、友人に手伝ってもらう。役所の窓口で「何から始めればいいか」を聞く。専門家に任せられることは任せる。
頼ることは、弱さではありません。空いた時間とエネルギーは、あなた自身の心と体のために使ってください。
3. 話せる場所をもつ(遺族の会・自助グループ)
身近な人に話しにくいときは、同じように夫や妻を亡くした人が集まる場があります。
「遺族の会」「わかちあいの会」などの名前で、自治体や病院、グリーフケアに取り組む団体などが開いている自助グループです。オンラインで参加できるものもあります。
「夫を亡くした妻の会」を探している方もいると思いますが、同じ経験をした人の前では、説明しなくても分かってもらえる安心感があります。話さずに聞いているだけでもかまいません。
4. 書く・読む
話す相手がいないときは、書くことが助けになります。
夫への手紙を書く。「ありがとう」も「どうして先に逝ったの」も、思いつくまま書いてかまいません。
夫を亡くした時に読む本を探すなら、グリーフ(悲嘆)について書かれた本や、同じように配偶者を亡くした人の手記がおすすめです。「わたしだけじゃない」と思えることが、心を支えてくれることがあります。
5. 夫が毎日くれていたものを具体的に書き出す
ここが、あとでお伝えするC面の見方につながります。
「夫がいなくて寂しい」を、もう少し具体的にしてみてください。
・朝、「行ってらっしゃい」と声をかけてくれた
・わたしの話を、最後までうなずいて聞いてくれた
・重い物を持ってくれた、車で送り迎えしてくれた
・疲れていると、「今日は外で食べようか」と言ってくれた
・何かを決めるとき、「いいんじゃない」と背中を押してくれた
「寂しい」の中身は、こうした具体的な言葉や行動の集まりです。
6. 眠る・食べる・外の光を浴びる
この3つだけでも意識してみてください。
介護をしていた方は、自分の体のことが後回しになっていたはずです。今度はあなたが、自分の体をいたわる番です。
体が少し整うと、悲しみを抱える力も少し戻ってきます。
無料ダウンロード
喪失感をほどく「失ったもの」と「今あるもの」ワークシート(夫との死別編)(PDF・A4/2枚)
夫がくれていたものが、いまどんな形で、誰から届いているかを、ゆっくり書き出していくシートです。印刷して書き込めます。
※ディマティーニメソッドの考え方をもとにした、愛原百麗オリジナルのワークシートです(公式教材ではありません)。
ディマティーニメソッドの「C面」という見方

わたしがファシリテーターを務めるディマティーニメソッドには、A面・B面・C面という3つの見方があります。

A面は好きで賞賛している相手の言動を、B面は嫌いで許せない相手の言動を扱います。
そしてC面は、「何かを得た」「何かを失った」と感じている出来事を扱うものです。夫とのお別れは、このC面で向き合うことの多いテーマです。
「失って寂しい」と感じているものをひとつずつ具体的にする
C面では、まず夫がいなくなって「失って寂しい」と感じている特性や行動を、具体的に書き出します。
前の章で書いた「話を最後まで聞いてくれた」「背中を押してくれた」などが、それにあたります。
それが今どんな形で誰によってもたらされているかを探す
次に、その一つひとつについて、今、どんな形で、誰によってもたらされているかを丁寧に探していきます。
たとえば「話を最後まで聞いてくれた」なら、夫が亡くなってから、あなたの話にじっと耳を傾けてくれた人はいなかったでしょうか。子ども、友人、職場の人、病院のスタッフ、久しぶりに連絡をくれた昔の知人。
「背中を押してくれた」なら、今、あなたが何かを決めるときに、誰がどんな言葉をかけてくれているでしょうか。あるいは、あなた自身が、自分の背中を押せるようになってきていることはないでしょうか。
相手は、近くにいる人でも、遠くにいる人でもかまいません。人でも、あなた自身でもかまいません。
失ったと感じているもの:夫が毎日くれていた、具体的な言葉や行動、存在感
今あるもの:それと同じ役割を、今どこかで・誰かが・別の形で果たしてくれていること
最初は「夫の代わりなんて、どこにもいない」と感じるのが普通です。
それでも一つひとつ探していくと、夫がくれていたものが、形を変えて今の暮らしの中にあることに気づいていく方がいます。失ったものと、今あるものがつり合って見えてきたとき、灰色だった景色の見え方が変わっていくことがあります。
これは、夫を忘れることでも、誰かを夫の代わりにすることでもありません。夫がくれていたものを、今の毎日の中にもう一度見つけていく作業です。
お客さまの声
3か月前にご主人を看取られた、HANさんの感想をご紹介します。
夫を3ヶ月前に看取りました。
ながらく男性不信だったのですが、優しい夫と出会い再婚でき、
日常の様々な思い出が蘇りました。
夫をなくした以降は、夫との思い出の場所へいくと胸がしめつけられて
息もできなくなるほど辛くなりました。
毎日が灰色にみえるのです。
(中略)
愛原さんのセッションをうけたら、号泣しました。
今は、夫がいなくても私は幸せなのだと思えるようになったのです!
HANさん(50代)
※個人の感想です
ほかの方の声は、お客さまの声でもご紹介しています。
わたし自身もC面に救われたひとりです
わたしも2023年に義理の母を亡くし、施設で過ごしてもらう決断をしたことへの罪悪感で、世界が灰色に見える日々を過ごしました。同じ年のBTE(ブレイクスルー・エクスペリエンス)で、オンラインでDr.ディマティーニから直接C面のセッションを受け、喪失感が、体の奥からわきあがる感謝の涙へと変わった経験をしています。
感じ方や変化の速さは、人によって違います。ひとりで書き出してみるのもひとつですし、つらくて手が止まるときは、誰かと一緒に進めるほうが楽なこともあります。
新しい人間関係や再婚を考えることへの罪悪感

「楽しい」と感じることに罪悪感がある
友人と出かけて笑ったあと、ふと「夫がいないのに、わたしだけ楽しんでいいのかな」と沈んでしまう。
新しい習い事や仕事を始めようとして、「夫を置いていくようで申し訳ない」と感じる。
そんな罪悪感を抱える方は、とても多いです。
でも、あなたが笑うことは、夫を忘れることではありません。夫と過ごした時間があったから、今のあなたがいます。その時間は、あなたが新しい一歩を踏み出しても、なくなりません。
再婚を考えてもいいし考えなくてもいい
時間がたって、新しいパートナーとの出会いを考える方もいます。
「夫を裏切ることになるのでは」「周りにどう思われるか」と迷うのは自然なことです。けれど、新しい人と出会うことは、夫の代わりを探すことではありません。
ディマティーニメソッドのC面には、新しく現れた存在について「得たもの」の側から見ていく使い方もあります。新しい出会いがあっても、夫への思いが減るわけではない、と実感される方もいます。
一方で、「もう誰とも一緒にならない」「ひとりの時間を大切にしたい」と決める方もいます。それも、まったく問題のない選択です。
どちらにも正解はありません。今すぐ決める必要もありません。あなたが納得して選んだ道なら、それでいいのです。
「夫のところへ行きたい」と感じたときは
ここも、看護師としてはっきりお伝えします。
悲しみが深いと、「夫のところへ行きたい」「消えてしまいたい」と感じることがあります。
そう感じたら、どうかひとりで抱えないでください。ワークや記事を読むことよりも、まず誰かに話すことを優先してください。
よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
いのちの電話(ナビダイヤル):0570-783-556
「#いのちSOS」:0120-061-338
つながりにくいときは、時間をおいて、または別の窓口にかけてみてください。子どもや友人に「今つらい」とひとこと伝えるだけでもかまいません。
心療内科や精神科への相談も、大切な選択肢です。セッションは治療の代わりにはなりません。まずは、あなたの安全がいちばんです。
よくある質問

Q. 夫を亡くしてから立ち直るまでどのくらいかかりますか?
人によってまったく違います。悲しみに決まった期限はありません。
数か月で日常に戻る方もいれば、何年たっても命日や記念日に涙が出る方もいます。多くの場合、悲しみは「なくなる」というより、波の間隔が少しずつ空いていくように変わっていきます。
ただ、眠れない・食べられない状態が2週間以上続くときは、受診を考えてください。
Q. 夫の遺品が片づけられません
片づけられないうちは、そのままでかまいません。
洋服に残る匂いや、使っていた眼鏡。触れるとつらいけれど、手放したくない。そう思えるうちは、まだそのときではないのだと思います。
どうしても片づけが必要なときは、「残す箱」をひとつ決めて、迷うものは全部そこに入れるだけでも十分です。誰かに手伝ってもらいながら進めてください。
Q. ひとりで生きていける気がしません
そう感じるのは、それだけ夫と支え合って生きてきたからです。
いきなり「ひとりで」を目指さなくて大丈夫です。手続きは人に頼る、話せる場所をもつ、今日一日をなんとか過ごす。その積み重ねが、気づけば「なんとかやれている」に変わっていきます。
C面の見方で、夫がくれていた支えが今どこから届いているかを探してみると、思っていたより多くの人や自分の力に支えられていることに気づく方もいます。
Q. 子どもの前では泣かないようにしています
お子さんの前で泣いてもかまいません。
お母さんが悲しんでいる姿を見ることで、お子さんも「悲しんでいいんだ」と安心できることがあります。家族で一緒に悲しむことも、大切な時間です。
灰色の景色はずっと灰色のままではありません

夫を亡くした悲しみがこんなに深いのは、夫が、あなたの毎日にそれだけ多くのものをくれていたからです。
かけてくれた言葉。隣にいてくれた安心感。一緒に過ごした何気ない時間。
それが突然なくなったのですから、世界が灰色に見えるのは当然です。
悲しみを消そうとしなくていい。ただ、夫がくれていたものを、一つひとつ言葉にしてみてください。
そして、それが今、どんな形であなたのそばにあるかを、ゆっくり探してみてください。
ひとりで書き出すのがつらいときは、わたしがお手伝いします。
夫を亡くした人の立ち直り方のまとめ
- 夫を亡くした悲しみに期限はない。何か月たっても泣けるのは自然なこと
- 眠れない・食べられないなどの反応は自然なもの。ただし2週間以上続くときは受診を
- 手続きが落ち着いた頃に、悲しみが後からくることもある
- 思い出の場所に行けないのも、「もっとできたはず」という後悔も、真剣に向き合ってきた証拠
- 立ち直り方は、急がない・人に頼る・遺族の会など話せる場所をもつ・書く・夫がくれていたものを書き出す・体をいたわる
- C面の見方では、失ったと感じているものが、今どんな形で身の回りにあるかを探していく
- 新しい人間関係や再婚を考えるのも、ひとりで生きると決めるのも、どちらも大切な選択
- 「夫のところへ行きたい」と感じたら、まず相談窓口へ
夫を思って泣ける時間は、夫と過ごした時間の続きです。
どうか、自分を責めすぎないでくださいね。
夫がくれていたものを、一緒に探してみませんか
ひとりで向き合うのがつらいときは、あなたのペースに合わせて、ゆっくり一緒に進めます。
どうぞお気軽にお問い合わせくださいね。無理な勧誘はいたしません。
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