マインドフルネスを始めてみたら、かえって不安が強くなった。
目を閉じると、思い出したくない場面が浮かんでくる。
ネットで調べると「やってはいけない人もいる」と書いてある。
「わたしは、やめたほうがいいの?」
そんなふうに迷って、この記事にたどり着いたのかもしれませんね。
こんにちは、看護師でライフコーチ、ディマティーニメソッドのファシリテーターの愛原百麗です。

最初に結論をお伝えします。
マインドフルネスは、多くの人にとって安全に取り組めるセルフケアです。
ただし、心やからだの状態によっては、「いまは、ひとりでは始めないほうがいい人」がいます。
そして「やってはいけない」というのは、多くの場合、「一生できない」という意味ではありません。
「いまの時期」「そのやり方」「ひとりで」が合わない、ということなのです。
この記事では、看護師として、マインドフルネスをやってはいけないと言われる人と、その理由、練習中に気をつけたいサイン、そして安全に始めるための方法をお伝えします。
この記事では
・マインドフルネスを「ひとりで始めないほうがいい」5つのケース
・なぜ、やってはいけないと言われるのか(3つの理由)
・練習中に出たら中断したいサインと、落ち着くための方法
・始める前のセルフチェック
・「やってはいけない」が「一生できない」ではない理由
・安全に始めるための5つのポイント
について解説します。
いま、とてもつらい方へ
「消えてしまいたい」「死にたい」という気持ちが強いときは、この記事を読むより先に、誰かに話してください。
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(お住まいの地域の相談窓口につながります)
よりそいホットライン 0120-279-338(24時間、無料)
命に関わる緊急のときは、迷わず119番へ。
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記事の中でご紹介する『マインドフルネスを安全に始めるセルフチェックシート』(PDF・A4/2枚)を、無料でダウンロードできます。印刷して、そのまま書き込めます。
マインドフルネスを「ひとりで始めないほうがいい」5つのケース

次に当てはまる方は、ひとりで始める前に、主治医や専門家に相談してください。
1. トラウマ(つらい体験)による症状がある・PTSDの診断を受けている
事故や災害、暴力、虐待など、つらい体験の記憶が、いまも突然よみがえってくる。
そうした症状がある方は、注意が必要です。
マインドフルネスは、からだの感覚や心の中に注意を向ける練習です。心の奥にしまっていた記憶に、急に近づいてしまうことがあります。
目を閉じた静かな時間に、その場面がまるで今起きているかのようによみがえる(フラッシュバック)ことも報告されています。
2. うつ病などでいま強い落ち込みの中にいる
何をしても楽しくない、朝起き上がれない、自分を責める考えが止まらない。
そんな調子が大きく落ちている時期は、無理に始めないでください。
この時期は、考えを「眺める」余裕そのものがなくなっています。
静かに座っていると、自分を責める考えばかりが浮かんで、かえってぐるぐる考え続けてしまうことがあります。
さらに「うまくできない自分はダメだ」と、自分を責める材料になってしまうことも少なくありません。
3. 統合失調症・双極性障害などで治療中の病気がある
幻聴や妄想がある、気分の波が大きいといった症状で治療を受けている方は、まず主治医に相談してください。
とくに症状が不安定な時期には、内側に深く注意を向ける練習が、心のバランスを崩すきっかけになることがあります。
4. パニック発作や強い不安がある
マインドフルネスでは、呼吸や心臓の鼓動など、からだの感覚に注意を向けます。
パニック発作を経験した方は、呼吸や動悸に意識を向けたことで「また発作が来るかも」と不安が高まることがあります。
ふだん気にしないようにしている身体感覚に、わざわざ近づくことになるからです。
5. 解離(自分が自分でないような感覚)が起こりやすい
自分を外から見ているような感じがする。まわりの景色が現実ではないように感じる。
こうした解離や離人感が起こりやすい方は、静かに内側を見つめる練習で、その感覚が強まることがあります。
5つのケースに当てはまるかどうかを、印刷して確かめられるシートを用意しました。中断のサインや、主治医に相談するときのメモ欄もついています。
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マインドフルネスを安全に始めるセルフチェックシート(PDF・A4/2枚)
始める前のセルフチェック、中断のサインと落ち着く方法、主治医に相談するときのメモ欄をまとめました。印刷してお使いください。
※看護師でライフコーチの愛原百麗が作成したオリジナルのシートです。医療の診断や治療に代わるものではありません。
そのほか、相談してから始めたい方
・精神科や心療内科に通院中の方
・心の不調で薬を飲んでいる方(自己判断で薬をやめるのは危険です)
・大切な人を亡くした直後など、強い悲しみの中にいる方
・アルコールなどへの依存の治療中の方
大切なのは、ここに当てはまっても「あなたにはマインドフルネスは無理」という意味ではないことです。
専門家と一緒に、いまの状態に合ったやり方やタイミングを選べば、取り入れられることも多いのです。
なぜ「やってはいけない」と言われるの?3つの理由
「心を落ち着けるための練習なのに、なぜ逆効果になることがあるの?」
そう不思議に思う方も多いと思います。理由は大きく3つあります。
理由1:しまっていた記憶や感情が浮かび上がってくるから
ふだんのわたしたちは、仕事や家事、スマホなどで、心の中を見ないで過ごしています。
マインドフルネスは、その「見ないで済んでいたもの」に光を当てる練習です。
心に余裕があるときは、浮かんできた感情を「そういう気持ちがあったんだな」と眺められます。
でも、受け止めきれないほど大きな記憶や感情だった場合、眺めるより先に、飲みこまれてしまうのです。
理由2:考えを「眺める」余裕がないとぐるぐる思考が強まるから
マインドフルネスの基本は、浮かんだ考えに「気づいて、戻る」ことです。
ところが、強い落ち込みや不安の中にいるときは、気づいても戻れない。
同じ考えを何度も何度もくり返す「反すう」が、静かな時間の中でかえって強まってしまうことがあります。
理由3:からだの感覚に敏感になり不安が高まることがあるから
呼吸や鼓動、からだの緊張に注意を向けると、ふだんは気づかない小さな変化までわかるようになります。
それは本来いいことなのですが、不安が強い時期には、小さな動悸や息苦しさを「何かおかしい」と受け取ってしまい、不安が不安を呼ぶことがあります。
研究でも報告されている「好ましくない体験」
これは、一部の人の思いこみではありません。
2020年に発表された、たくさんの研究をまとめた分析では、瞑想をした人のおよそ8%に、不安や落ち込みが強まるなどの好ましくない体験が報告されています。
2017年にアメリカで行われた研究でも、瞑想を続けてきた人たちの中に、恐怖やパニック、過去のつらい体験の再体験などを経験した人がいたことが報告されています。
日本でも昔から、坐禅に打ちこみすぎて心身の調子を崩すことは「禅病」と呼ばれ、江戸時代の禅僧・白隠もその体験を書き残しています。
強い力を持つ練習だからこそ、合わない時期や合わないやり方がある。そう考えるとわかりやすいと思います。
練習中にこんなサインが出たらすぐに中断を

ここは、看護師としていちばんお伝えしたいところです。
当てはまるケースがない方でも、練習の途中や、終わったあとに次のようなことが起きたら、がまんして続けずに、その場でやめてください。
中断したいサイン
・強い不安や恐怖がわいてくる
・動悸、息苦しさ、めまい、手足のしびれが出てくる
・つらい記憶が、目の前のことのようによみがえる
・自分が自分でない感じ、まわりが現実でないような感じがする
・練習のあと、気分の落ち込みがいつもより強くなる
・眠れなくなる、または眠らなくても平気なほど気分が高ぶる
「せっかく始めたのに」「ここで乗り越えなきゃ」と、がんばる必要はありません。
マインドフルネスは、つらさに耐える修行ではないからです。
落ち着くための「5・4・3・2・1」
中断したら、注意を心の内側から、外の世界へ戻していきます。
まず目を開けて、足の裏を床にしっかりつけてください。
そのうえで、次の順番で、まわりにあるものを確かめていきます。

声に出してもかまいません。冷たい水で手を洗う、窓を開けて外の空気を吸う、温かい飲みものを飲む、といったことも助けになります。
落ち着いたら、その日はもう練習しなくて大丈夫です。
同じことが何度も起きるとき、症状がおさまらないときは、続けずに医療機関に相談してください。
「やってはいけない」は「一生できない」ではありません

ここまで読んで、「わたしは当てはまるから、もう無理なんだ」と感じた方もいるかもしれません。
でも、どうか安心してください。
医療の現場では、マインドフルネスが治療の一部として使われています。
うつ病の再発予防に使われる「マインドフルネス認知療法」
「マインドフルネス認知療法(MBCT)」は、もともとうつ病をくり返す方の再発予防のために作られたプログラムです。
ポイントは、落ちこみが強い時期ではなく、回復してきた時期に取り組むこと。
時期を選び、専門家と一緒に進めることで、うつ病の方にとっても力になる方法なのです。
トラウマに配慮したマインドフルネスもある
トラウマを抱えた方のために、「トラウマ・センシティブ・マインドフルネス(トラウマに配慮したマインドフルネス)」という考え方もあります。
たとえば、こんな工夫をします。
・目は閉じずに、開けたままでいい
・注意を向ける先を、呼吸ではなく足の裏や手の感触、まわりの音など外側のものにする
・1回を短くする。いつでもやめていいと決めておく
・静かに座るより、歩く・ストレッチなど、からだを動かす練習を選ぶ
つまり、「やってはいけない人」がいるのではなく、その人に合わない時期とやり方がある、ということです。
当てはまる方は、主治医やカウンセラーに「マインドフルネスをやってみたい」と話してみてください。いまのあなたに合った始め方を、一緒に考えてもらえます。
「向いていない」「意味ない」と感じる人へ
一方で、病気や症状があるわけではないけれど、
「何度やってもうまくできない。わたしは向いていないのかも」
「効果を感じない。意味ないんじゃない?」
と感じている方もいると思います。
その多くは、向き不向きより、やり方の問題です。
「向いていない」と感じやすいパターン
・「無にならなきゃ」と思っている:雑念は浮かんで当たり前。気づいて戻ることが練習そのものです
・いきなり長くやっている:最初は1〜3分で十分です
・疲れて眠いときにやっている:眠ってしまうのは、からだが休息を求めているサインかもしれません
・すぐに結果を求めている:研究の多くは8週間ほど続けて効果を見ています
・自分に厳しすぎる:「できなかった」と採点しないことが、マインドフルネスの大切な姿勢です
それでも合わないと感じるなら、やめてもかまいません。
心を整える方法は、マインドフルネスだけではありません。散歩や運動、ヨガ、ノートに気持ちを書き出すこと、信頼できる人に話すこと。あなたが続けられて、終わったあとに少し楽になれる方法が、あなたにとっての正解です。
基本のやり方や、うまくできないときの対処法は、こちらの記事でくわしく書いています。
安全にマインドフルネスを始めるための5つのポイント
「当てはまるものはなかった。でも少し心配」という方は、次の5つを守って始めてみてください。
1. 体調が落ち着いているときに、1〜3分から
寝不足の日や、ひどく落ちこんでいる日は休みましょう。短い時間から始めれば、何か起きてもすぐにやめられます。
2. 目は開けたままでもいい
目を閉じると不安になる方は、半分開けて、1〜2m先の床をぼんやり見ていてください。
3. 注意を向ける先は、自分で選んでいい
呼吸に集中すると苦しくなるなら、足の裏、手のひら、まわりの音でもかまいません。
4. 「いつでもやめていい」と決めておく
途中でやめることは、失敗ではありません。自分の状態に気づけた、ということです。
5. 通院中の方は、主治医にひと言相談してから
不安な方は、ひとりで独学するより、経験のある指導者のもとで始めると安心です。指導者を選ぶときは、資格や経験、心の不調があるときの対応を確認しておきましょう。
始める前の確認と、練習のふり返りに使えるシートを作りました。主治医に相談するときのメモ欄もつけています。
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マインドフルネスを安全に始めるセルフチェックシート(PDF・A4/2枚)
始める前のセルフチェック、中断のサインと落ち着く方法、主治医に相談するときのメモ欄をまとめました。印刷してお使いください。
※看護師でライフコーチの愛原百麗が作成したオリジナルのシートです。医療の診断や治療に代わるものではありません。
練習中に浮かんできた「つらい記憶」との付き合い方
マインドフルネスを続けていると、ふと、ある人の顔や、ある出来事が浮かんでくることがあります。
まず大切なのは、トラウマの症状や、日常生活に支障が出るほどのつらさがあるときは、医療機関でのケアが先だということです。
そのうえで、治療が必要なほどではないけれど、
・亡くなった人への後悔が、何年たっても胸に残っている
・ずっと許せずにいる人のことが、何度も浮かんでくる
・別れた相手のことを思い出すたびに、胸が苦しくなる
という場合、それは心の奥にある「感情の負荷」に気づけたサインかもしれません。
マインドフルネスは「気づく」ところまでを手伝ってくれますが、強い感情の結び目は、ひとりで眺めているだけでは、なかなかほどけないことがあります。
ディマティーニメソッドのセッションでは、その人や出来事について質問に答えながら、ひとりでは見えなかった面を一つずつ見つけていきます。
見え方のつり合いがとれたとき、張りついていた感情の重さが下りて、感謝が出てきた、という方もいらっしゃいます。
実際にセッションを受けた方の声は、体験談にまとめています。
マインドフルネスをやってはいけない人|よくある質問

Q. マインドフルネスをやってはいけない人はなぜやってはいけないのですか?
マインドフルネスは、心の内側やからだの感覚に注意を向ける練習だからです。
トラウマの症状、強いうつ状態、パニック発作、解離などがある方は、しまっていた記憶がよみがえったり、不安やぐるぐる思考が強まったりすることがあります。
ただし、時期とやり方を選べば取り入れられることも多いので、まずは主治医に相談してください。
Q. マインドフルネスはやめたほうがいいですか?
練習のたびに不安や落ち込みが強くなる、つらい記憶がよみがえる、という場合は、いったんやめて、医療機関や専門家に相談してください。
そうではなく「うまくできない」「効果がわからない」という理由なら、やめる前に、時間を短くする、目を開けたままにする、などやり方を変えてみるのがおすすめです。
それでも合わなければ、やめてかまいません。ほかにも心を整える方法はたくさんあります。
Q. うつ病の人がマインドフルネスをすると悪化しますか?
落ちこみが強い時期にひとりで取り組むと、自分を責める考えがかえって強まることがあります。
一方で、回復してきた時期には、うつ病の再発予防を目的とした「マインドフルネス認知療法」があり、医療の場で使われています。
どちらの時期かは自分では判断しにくいので、必ず主治医に相談してから始めてください。
Q. 瞑想中に涙が出たり怖くなったりするのは危険ですか?
涙が出ること自体は、めずらしいことではありません。気持ちがゆるんだサインのこともあり、しばらくして落ち着くなら心配はいりません。
ただ、強い恐怖、フラッシュバック、現実感がなくなる感じがあるときは、すぐに目を開けて中断してください。くり返すようなら、医療機関に相談しましょう。
Q. マインドフルネスに副作用はありますか?
研究では、不安や抑うつの高まり、つらい記憶のよみがえり、離人感、眠りの乱れなどが報告されています。
多くの人にとっては安全な練習ですが、まったくリスクがないわけではないと知っておくことが、安全に続ける第一歩です。
マインドフルネスをやってはいけない人まとめ
- マインドフルネスは多くの人にとって安全なセルフケア。ただし「いまは、ひとりで始めないほうがいい人」がいる
- 当てはまるのは、トラウマ・PTSD、強いうつ状態、統合失調症や双極性障害などで治療中、パニック発作、解離がある方
- 理由は、しまっていた記憶がよみがえる・ぐるぐる思考が強まる・からだの感覚に敏感になるから
- 強い不安、動悸、フラッシュバック、現実感のなさが出たらすぐ中断し、「5・4・3・2・1」で外の世界に注意を戻す
- 「やってはいけない」は「一生できない」ではない。時期とやり方を選べば、治療の一部として使われることもある
- 当てはまる方、通院中の方は、主治医に相談してから
「やってはいけない人」を調べたあなたは、それだけ自分の心とからだを大切にしようとしている人です。
合わない時期は休んでいい。合うやり方を選んでいい。
自分にやさしい選び方こそが、いちばんのマインドフルネスなのだと思います。
何度も浮かんでくる人や出来事を、ひとりで抱えなくて大丈夫です
看護師として、あなたの心とからだの状態を大切にしながらお話を伺います。
医療機関での相談が先だと感じたときは、正直にそうお伝えします。無理な勧誘はいたしません。
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