知性・品性・人間性とは 何を言うか・言わないか・どう伝えるか セルフチェック・ワークシート付き(職場で話を聞く30代の女性と、カフェで友人と話す50代の女性)

「言わなくていいことを言ってしまって、帰り道にひとり反省する」

「正しいことを言ったはずなのに、相手を怒らせてしまった」

「言いたいことがあるのに、いつも言えずに、のみこんでしまう」

そんなとき、ふと目にした「何を言うかが知性、何を言わないかが品性、どう伝えるかが人間性」という言葉が、心に残ったのかもしれません。

こんにちは、看護師でライフコーチ、ディマティーニメソッドのファシリテーターの愛原百麗です。看護師として働いて、39年になります(2026年時点)。

ドクター・ディマティーニ・メソッド トレインド・ファシリテーター 愛原百麗(看護師×ライフコーチ)

看護の現場では、言葉ひとつで、患者さんの不安が大きくも、小さくもなります。そして、体がつらいときでも、「ありがとう」の言葉や笑顔をくださり、ときには、わたしたち医療スタッフをねぎらってくださる患者さんがいます。そうした方の言葉には、知性も、品性も、人間性も、すべてがこもっているように感じます。

一方で、家では、毎日のように怒鳴る義父の言葉に、長いあいだ心をざわつかせてきました。

そして、わたし自身も、言葉でたくさん失敗してきました。他人からの批判がこわくて、先回りして人を攻撃したり、チクリと嫌味を言ったり。穴があったら入りたいほど、恥ずかしい失敗を重ねてきたのです。

言葉は、人を支えることも、傷つけることもできる。わたしは、看護の現場と、自分の家族の中で、そして自分自身の失敗から、そのことを学んできました。

この記事では、あなたの言葉が、知性・品性・人間性のどこでつまずきやすいかがわかるセルフチェックと、このことばの意味と元ネタ、知性・品性・人間性の違い、それぞれがある人の特徴、そして、言葉を磨く方法をお伝えします。

先に結論をお伝えすると、知性・品性・人間性は、頭のよさや、生まれつきの性格ではなく、言葉を選ぶ「習慣」です。どこかがつまずきやすくても、それは、裏側にあなたの良さがあるしるしです。そして、3つの土台にあるのは、相手を大切にする気持ちと、自分を大切にする気持ちです。

この記事では

・言葉のクセセルフチェック(12問・3つのタイプ)

・「何を言うかが知性、何を言わないかが品性、どう伝えるかが人間性」の意味と元ネタ

・知性・品性・人間性の意味と違い

・知性のある人、品性のある人、人間性が高い人の特徴

・言葉のクセ3つのタイプ

・知性・品性・人間性を磨く方法7つ

・ディマティーニメソッドで見る「心に残っている言葉」

・書き込める『言葉の知性・品性・人間性を磨くワークシート』

について解説します。

セルフチェックこの記事はセルフチェック付きです

あなたの言葉のクセを、12問でチェックできます。
チェックを入れるだけで、知性(何を言うか)・品性(何を言わないか)・人間性(どう伝えるか)のどこでつまずきやすいかがわかります。

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無料PDFこの記事はワークシート付きです

記事の中でご紹介する『言葉の知性・品性・人間性を磨くワークシート』(PDF・A4/2枚)を、無料でダウンロードできます。印刷して、そのまま書き込めます。

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言葉のクセセルフチェック|知性・品性・人間性、あなたがつまずきやすいのは?

まずは、あなたの言葉が、どこでつまずきやすいのかを確かめてみましょう。
知性や品性、人間性が「あるか、ないか」を判定するチェックではありません。
言葉でつまずくことは、誰にでもあります。
このチェックは、あなたの言葉のクセに気づくためのものです。
ここ最近の自分を思いうかべて、あてはまるものにチェックを入れてください。

セルフチェック

あなたの言葉は、どこでつまずきやすい?

ここ最近の自分を思いうかべて、あてはまるものにチェックを入れてください(12問)。

※この結果は、ご自身の言葉のクセをふり返るための目安です。あなたの知性や人柄を判定するものではありません。

1・4・7・10問めが「言葉にできない(何を言うか)」、2・5・8・11問めが「ひと言多い(何を言わないか)」、3・6・9・12問めが「言い方がきつくなる(どう伝えるか)」です。結果には、それぞれの点数(4点満点)が出ます。点数が高いところほど、つまずきやすいところです。3つのタイプについては、このあとの「言葉のクセ3つのタイプ」で、くわしくお伝えしています。

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「何を言うかが知性、何を言わないかが品性、どう伝えるかが人間性」の意味

3つの言葉が教えてくれること

このことばは、人の知性・品性・人間性が、ふだんの言葉の中にあらわれることを教えてくれます。

言葉にあらわれる3つの力。1 知性=何を言うか:相手の役に立つことを、自分の頭で考えて選ぶ力。2 品性=何を言わないか:言わなくていいことを、のみこめる力。3 人間性=どう伝えるか:相手の気持ちを思いながら、届く形で伝える力。3つがそろうと「この人の言葉なら、聞きたい」と思われる

何を言うか(知性)は、たくさん知っていることを話すことではありません。その場で、相手の役に立つことを、自分の頭で考えて選ぶ力です。

何を言わないか(品性)は、知っていても、思っていても、言わなくていいことを、そっとのみこめる力です。悪口やうわさ話、相手を追いつめる正論、自慢話などです。

どう伝えるか(人間性)は、同じ内容でも、相手の気持ちを思いながら、届く形で伝える力です。言い方、タイミング、表情、声のトーン。ここに、その人の人柄がいちばんよくあらわれます。

3つがそろうと、まわりの人は、「この人の言葉なら、聞きたい」と感じます。

元ネタは?「言うは知性、言わぬは品性」は誰の言葉?

「何を言うかが知性、何を言わないかが品性」の部分は、あるお笑い芸人の方が、2019年7月に公開された映画コラムのインタビューで、「あなたが考える”教養”とは?」と聞かれて答えた言葉がもとになっています。

「まず、本を読んで得られるのが”知識”で、”知識”が増えると話せる量が増えるでしょ。で、その”知識”を使って何をしゃべるかが”知性”であって、逆に何をしゃべらないかが”品性”だと思うの。つまり、その”知性”と”品性”を両方兼ね備えた人こそが、”教養”のある人なんじゃないかと」

出典:WEBザテレビジョン(2019年7月12日)

同じ年の10月には、テレビ番組でも「何をしゃべれるかが知性で、何をしゃべらないかが品性」と話し、多くの人に知られるようになりました。

一方、後半の「どう伝えるかが人間性」は、その後、インターネット上で広まるうちに付け加えられたもので、誰が言い始めたのかは、はっきりしていません。2021年ごろには、すでに3つがそろった形で、ブログなどに書かれていました。「言うは知性、言わぬは品性」「黙るは品性」といった短い言い方も、作者はわかっていません。

「沈黙は金」「言わぬが花」など、言葉をつつしむことの大切さは、昔から言われてきました。このことばが多くの人の心に残るのは、それを、知性・品性・人間性という3つの言葉で、わかりやすく整理しているからかもしれません。

知性・品性・人間性の意味|辞書ではどう説明されている?

それぞれの言葉を、辞書で確かめておきましょう(デジタル大辞泉)。

知性:物事を知り、考え、判断する能力。人間の、知的作用を営む能力。

品性:道徳的基準から見た、その人の性質。人格。

人間性:人間特有の本性。人間として生まれつきそなえている性質。人間らしさ。

(参考)知能:物事を理解したり判断したりする力。

辞書の意味をふまえると、このことばは、知性(知って、考えて、判断する力)と、品性(人柄・人格)と、人間性(人間らしさ)が、どれも「言葉」の中に見えてくる、と言いかえることができます。

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知性・品性・人間性がある人の特徴

知性・品性・人間性がある人は、言葉の選び方に、それぞれ特徴があります。

知性・品性・人間性がある人の特徴。知性のある人(何を言うか):わからないことを「わからない」と言える/相手に合わせた言葉で話せる/ひとつの見方にとらわれない/質問で話を深められる。品性のある人(何を言わないか):悪口やうわさ話に乗らない/正論で人を追いつめない/自慢や知識をひけらかさない/人の秘密を守る。人間性が高い人(どう伝えるか):誰にでも同じ態度で話す/相手の話を最後まで聞く/タイミングと言い方を選ぶ/まちがえたら素直に謝る

何を言うかが「知性」|知性のある人・知性を感じる人の特徴

知性のある人は、知識の量をひけらかしません。わからないことを「わからない」と言え、相手に合わせた言葉で話し、ひとつの見方にとらわれず、質問で話を深めていきます。

「自分の考えが、まちがっているかもしれない」と認められることを、心理学では「知的謙虚さ」と呼びます。知的謙虚さが高い人は、好奇心が強く、ちがう意見にも心を開きやすく、根拠がしっかりしているかどうかに注意を向けやすい傾向がありました(Leary et al., 2017)。「わからない」と言えることは、知性が足りないしるしではなく、知性のあらわれなのです。

また、相手の話を受けて、さらに質問を返す人ほど、相手から好かれやすいことも、研究でわかっています(Huang et al., 2017)。知性は、話すときより、聞くときにこそあらわれるのかもしれません。

「知性は顔に出る」と言われることがありますが、あらわれるのは顔立ちではなく、表情です。相手の話に興味をもって耳をかたむけるときの、落ち着いたまなざしや、うなずき。そうしたところに、人は「この人には知性を感じる」と惹かれるのだと思います。

何を言わないかが「品性」|品性のある人の特徴

品性のある人は、悪口やうわさ話に乗らず、正論で人を追いつめず、自慢や知識をひけらかさず、人の秘密を守ります。人のことを話すとき、聞いている側は、話に出てくる人の特徴を、話している本人の特徴のように感じてしまうことがある、という実験があります(Skowronski et al., 1998)。人の悪口ばかり話していると、その悪いイメージが、自分にもうつってしまうかもしれません。反対に、人のよいところを話すと、そのよいイメージが、自分にも重なりやすくなります。

ただし、「言わない」ことは、「がまんする」こととはちがいます。気持ちを表に出さないようにおさえこむくせがある人は、うれしい気持ちを感じることが少なく、人とのつながりも弱い傾向が見られました(Gross & John, 2003)。品性のある人は、言いたいことがない人ではなく、言うべきことと、言わなくていいことを、選べる人です。

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どう伝えるかが「人間性」|人間性が高い人・低い人の特徴

人間性が高い人は、誰にでも同じ態度で話し、相手の話を最後まで聞き、タイミングと言い方を選び、まちがえたら素直に謝ります。反対に、人間性が低いと思われやすいのは、相手の立場によって態度が変わる、話をさえぎる、不機嫌な言い方で人を動かそうとする、自分のまちがいを認めない、といったふるまいです。

同じ内容でも、伝え方で、届き方は大きく変わります。たとえば、「あなたは、いつも遅い」と言われると、責められたように感じます。「遅いと、わたしは心配になるの」と言われると、相手の気持ちが伝わってきます。心理学者のトマス・ゴードンは、このように自分を主語にした伝え方を「わたしメッセージ(アイメッセージ)」と呼びました。

人間性は、立場の弱い人への言葉にあらわれる

「店員さんへの態度で、人間性がわかる」とよく言われます。立場が上の人に、ていねいに話すのは、むずかしくありません。人間性は、自分より立場が弱い人や、何かを頼む側ではない相手に、どんな言葉を向けるかにあらわれます。

明るいパン屋のカウンターで、紙袋を受けとりながら、若い女性の店員さんに軽く頭を下げて笑顔でお礼を言う40代の女性(イメージ写真)

看護の現場でも、そう感じる場面があります。体がつらく、本来なら自分のことで精いっぱいのはずなのに、わたしたち医療スタッフに、ねぎらいの言葉をかけてくださる患者さんがいます。弱っているときほど、その人がもともと持っている人間性が、言葉にあらわれるのだと思います。

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言葉のクセ3つのタイプ|あなたの言葉がつまずきやすいところ

セルフチェックの3つのタイプは、知性・品性・人間性の、どこで言葉がつまずきやすいかをあらわしています。そして、どのタイプにも、つまずきやすいところの裏側に、あなたの良さがあります。

言葉のクセ3つのタイプ(つまずきやすいところの裏側に、あなたの良さがある)。1 言葉にできないタイプ(何を言うか):言いたいことがあるのに、まとまらない・のみこんでしまう。裏側の良さは、慎重さと聞く力。2 ひと言多いタイプ(何を言わないか):余計なひと言、うわさ話、頼まれていない正論。裏側の良さは、正直さと面倒見のよさ。3 言い方がきつくなるタイプ(どう伝えるか):正しいのに、言い方で相手が傷つく。裏側の良さは、まっすぐさと責任感。つまずくところを知れば、言葉は何歳からでも磨ける

1. 「言葉にできない」タイプ|何を言うか

意見を求められると、考えがまとまらない。言いたいことがあるのに、のみこんでしまう。「知らない」と思われたくなくて、質問できない。言葉の「中身」を出すところで、つまずきやすいタイプです。

裏側の良さ:よく考えてから話す慎重さと、人の話をじっくり聞く力。あなたが話すひと言には、重みがあります。

合う方法は、「方法1:言いたいことを『ひと言』にまとめてから話す」と「方法2:『わからない』『教えて』と言ってみる」です。言えずにのみこむことが続いて、自分に自信がなくなっている方は、こちらも参考にしてください。

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2. 「ひと言多い」タイプ|何を言わないか

つい余計なひと言を言ってしまう。うわさ話に加わってしまう。頼まれていないアドバイスや正論を言ってしまう。自分の話が長くなる。言わなくていいことを、のみこむところで、つまずきやすいタイプです。「わかってほしい」「認めてほしい」という気持ちが強いときほど、ひと言が多くなりがちです。

裏側の良さ:思ったことをかくさない正直さと、人を放っておけない面倒見のよさ。その力は、言葉を選ぶほど、人を助ける力に変わります。

合う方法は、「方法3:話す前に『本当?必要?やさしい?』と自分に聞く」と「方法4:その場にいない人の話は、よい話だけにする」です。

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3. 「言い方がきつくなる」タイプ|どう伝えるか

言っていることは正しいのに、相手が傷つく。疲れていると、言い方がきつくなる。相手の話をさえぎってしまう。文面が冷たいと言われる。伝え方のところで、つまずきやすいタイプです。多くの場合、心に余裕がないときに、言い方はきつくなります。

裏側の良さ:まちがったことをそのままにしない、まっすぐさと責任感。伝え方が変わると、あなたの言葉は、まわりから頼りにされる言葉になります。

合う方法は、「方法5:イラッとしたら、すぐに返さず、ひと呼吸おく」と「方法6:『あなたは』ではなく『わたしは』で伝える」です。怒りがおさまらずにつらい方は、こちらの記事も役に立ちます。

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知性・品性・人間性を磨く方法7つ

知性・品性・人間性は、何歳からでも、言葉の習慣で磨いていけます。方法1〜6は、セルフチェックの3つのタイプに対応しています。方法7は、どのタイプにも効く、いちばんの基本です。まずは、あなたのタイプの方法から、ひとつだけ選んでみてください。

知性・品性・人間性を磨く方法7つ。知性(何を言うか):1 言いたいことを「ひと言」にまとめてから話す 2 「わからない」「教えて」と言ってみる。品性(何を言わないか):3 話す前に「本当?必要?やさしい?」と自分に聞く 4 その場にいない人の話は、よい話だけにする。人間性(どう伝えるか):5 イラッとしたら、すぐに返さず、ひと呼吸おく 6 「あなたは」ではなく「わたしは」で伝える。3つの土台:7 相手の話を、最後まで聞いてから話す。全部やらなくていい。あなたのタイプの方法から、ひとつだけ

方法1:言いたいことを「ひと言」にまとめてから話す

話す前に、「つまり、わたしが言いたいのは〜」と、心の中でひと言にまとめてみましょう。ひと言が決まると、話がぶれにくくなります。会議の前なら、メモに一行書いておくだけでも、言葉が出やすくなります。

方法2:「わからない」「教えて」と言ってみる

「知らない」と思われるのがこわくて、質問できない方は、まずは身近な人に「それ、よくわからないから教えて」と言ってみてください。わからないことを、わからないと言えることは、知性のいちばんのしるしです。聞かれた相手も、たいていは、うれしいものです。

明るいオフィスで、ノートを手に身をのり出し、20代の女性の同僚にパソコンの画面の説明を教えてもらう、40代の男性(イメージ写真)

方法3:話す前に「本当?必要?やさしい?」と自分に聞く

言いたいことが浮かんだら、口に出す前に、次の3つを自分に聞いてみましょう。

本当?…思いこみではなく、事実?

必要?…いま、わたしが言う必要がある?

やさしい?…相手が受けとりやすい言い方?

3つとも「はい」なら、言ってかまいません。どれかが「いいえ」なら、言い方を変えるか、今回はのみこみます。全部を守ろうとしなくて大丈夫です。ひと呼吸おいて考える習慣そのものが、品性を育てます。

方法4:その場にいない人の話は、よい話だけにする

うわさ話や悪口が始まったら、「そうなんですね」と受け流して、話題を変えましょう。そして、その場にいない人の話をするときは、「〇〇さんの、こういうところが素敵」と、よい話だけにします。それだけで、まわりの人のあなたへの信頼は、少しずつ変わっていきます。

方法5:イラッとしたら、すぐに返さず、ひと呼吸おく

イラッとしたときの言葉は、たいてい、きつくなります。すぐに返さず、ひと呼吸おいて、「いま、わたしは怒っている」「悲しい」と、心の中で気持ちに名前をつけてみてください。怒った顔やおびえた顔の写真を見て、その気持ちをあらわす言葉を選んだときは、ただ写真をながめていたときよりも、脳の扁桃体(不安や恐れにかかわる部分)の反応が弱まっていました(Lieberman et al., 2007)。LINEやメールなら、送る前に一度読み返すだけでも、言い方はやわらかくなります。

夜のリビングのソファで、スマホを少し下ろし、目を閉じて深呼吸をしてから返信しようとする30代の男性(イメージ写真)

方法6:「あなたは」ではなく「わたしは」で伝える

相手に何かを伝えたいときは、「あなたは〜」ではなく、「わたしは〜と感じた」と、自分を主語にしてみましょう。

「なんで洗濯物を取りこんでくれないの?」

→「今日はくたくたで、わたしは帰ってから洗濯物を見て、泣きたい気持ちになったの。手があいていたら、取りこんでくれるとうれしいな」

伝えたい内容は同じでも、相手は責められたと感じにくくなり、あなたの気持ちが届きやすくなります。

明るいキッチンで、胸に手をあてて、自分の気持ちをおだやかに伝える40代の妻と、たたんだタオルを手に耳をかたむける夫(イメージ写真)

方法7:相手の話を、最後まで聞いてから話す

知性も、品性も、人間性も、土台にあるのは「聞く」ことです。相手の話を最後まで聞くと、何を言うべきか(知性)、何を言わなくていいか(品性)、どう伝えればいいか(人間性)が、自然と見えてきます。看護の現場でも、患者さんの話を最後まで聞くことは、どんな言葉をかけるかと同じくらい、大切にされています。

明るい病室で、ベッドのそばのいすに座り、高齢の女性の患者さんの話に、やさしくうなずきながら耳をかたむける30代の看護師(イメージ写真)

逆効果になりやすい言葉の磨き方

  • 黙っていればいい、と考える:言いたいことをのみこみ続けると、心がすり減り、いつか強い言葉になってあふれ出すことがあります。品性は、がまんではありません
  • 正しさで勝とうとする:正論は、言い方をまちがえると、相手を追いつめる言葉になります
  • 言葉づかいだけを、ていねいにする:ていねいな言葉でも、相手を見下す気持ちがあると、かえって冷たく伝わります
  • 知識を増やせば知性がつく、と考える:知識は大切ですが、知性は、それを相手のために選んで使えるかどうかにあらわれます

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ディマティーニメソッドで見る言葉|心に残っている言葉の、もう一方の面

ドクター・ジョン・F・ディマティーニ
ドクター・ジョン・F・ディマティーニ(出典:ディマティーニ公式サイト https://drdemartini.com/ja/)

わたしがファシリテーターを務めるディマティーニメソッドでは、人や出来事の片方の面だけが見えているとき、わたしたちの心はゆれ動いていると考えます。そして、相手の中に見えるものは、形を変えて、自分の中にもあると考えます。

誰かの言葉に傷ついたとき、わたしたちには、その言葉の「痛い面」しか見えていません。でも、その言葉が、あなたに何かをもたらしてくれた面も、きっとあるはずです。そして、形はちがっても、同じ向きの言葉を、あなた自身が誰かに向けていることもあるかもしれません。

怒鳴る義父の言葉の、もう一方の面が見えたとき

わたしの義父はアルコール依存症で、毎日のように怒鳴っていました。わたしが大切にしていた信仰を、批判されたこともあります。当時のわたしには、義父の言葉は、知性も品性も人間性も感じられない言葉に聞こえていました。

義父が病気になり、在宅での介護が必要になったとき、わたしはディマティーニメソッドのB面に取り組みました。B面は、相手の嫌いなところが、じつは自分にどんな利益をもたらしていたのかを見つけていくワークです。

怒鳴る姿や、信仰への批判と向き合っていくうちに、わたしは「義父は義父なりに、わたしを守ろうとしていたのだ」と気づき、号泣しました。義父は自宅で8か月を過ごし、亡くなる間際に「ありがとう」と言って、何度もわたしの手を握ってくれました。

怒鳴り声の奥にあった気持ちが見えたとき、最後の「ありがとう」は、わたしの中で、いちばん大切な言葉になりました。言葉は、その表面だけでなく、どんな気持ちから出てきたのかまで見ると、受けとり方が変わります。

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義父と向き合い、自宅で介護して見送るまでのことを、写真とともに書いています。

ひとりでできる「心に残っている言葉の両面を見る」ワーク

誰かの言葉が、いまも心に引っかかっているときは、気持ちが落ち着いている時間に、次の順番で書き出してみてください。ディマティーニメソッドのB面の考え方をもとにしたワークです。

※暴言や、人格を否定する言葉を、くり返し受けているときは、このワークより先に、あなたの安全を守ることを優先してください。夫や恋人からの暴言は、DVにあたることもあります。DV相談ナビ(#8008)などに相談できます。

  1. いまの心のざわつき度を、0〜10でつける
  2. 心に残っている言葉と、それを言った人を書く
  3. その言葉が、あなたにもたらしてくれたものを3つ書く(気づけたこと、身についたこと、守られたこと)
  4. 形はちがっても、あなたが同じ向きの言葉を誰かに向けた場面を3つ書く
  5. もう一度、心のざわつき度を0〜10でつける

例:心に残っている言葉:職場の先輩Dさんの「そんなことも知らないの?」

→ もたらしてくれたもの:わからないことを、そのままにしない習慣がついた/新人さんには、同じ言い方をしないと決められた/自分で調べる力がついた

→ わたしが同じ向きの言葉を向けた場面:家族に「前にも言ったよね?」と言った/後輩の質問に、ため息をついてしまった/子どものころの友だちに、知っていることを自慢した

相手を、むりに許すためのワークではありません。片方だけになっていた見方を、もとに戻すためのワークです。最初は、なかなか出てこないと思います。それで大丈夫です。ゆっくり探してみてください。

参考

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言葉の知性・品性・人間性を磨くワークシート(無料PDF)

この記事でご紹介した方法を、そのまま試せるワークシートを用意しました。印刷して、書き込んで使えます。

1枚目は「言葉のクセを知って、言い直してみる」です。セルフチェックの結果を書き、最近、言葉で後悔した場面を「本当?必要?やさしい?」で見直して、「わたしは」で言い直します。7日間の「言えてよかった・言わなくてよかった」ノートもあります。

2枚目は「心に残っている言葉の、もう一方の面を見る」です。心に引っかかっている言葉が、あなたにもたらしてくれたものと、あなたが同じ向きの言葉を向けた場面を書き出して、最後に、これから大切にしたい言葉を決めます。

無料ダウンロード

言葉の知性・品性・人間性を磨くワークシート(PDF・A4/2枚)

1枚目は「言葉のクセを知って、言い直してみる」。後悔した言葉を3つの問いで見直し、「わたしは」で言い直します。2枚目は「心に残っている言葉の、もう一方の面を見る」。片方だけになっていた見方を、もとに戻します。

PDFをダウンロードする ›

※2枚目は、ディマティーニメソッドの考え方をもとにした愛原百麗オリジナルのものです(公式教材ではありません)。医療の診断や治療の代わりにはなりません。

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よくある質問

木製のクエスチョンマーク

Q. 「言うは知性、言わぬは品性」は誰の言葉ですか?

「何を言うかが知性、何を言わないかが品性」のもとになったのは、あるお笑い芸人の方が、2019年のインタビューで「教養」について語った言葉です。「言うは知性、言わぬは品性」という短い形や、「どう伝えるかが人間性」という続きは、その後インターネットで広まるうちに生まれたもので、作者ははっきりしていません。くわしくは、本文の「元ネタは?」でご紹介しています。

Q. 知性と知能、知恵、教養の違いは?

辞書では、知能は「物事を理解したり判断したりする力」で、心理学では、環境に合わせて問題を解決するために考える、知的なはたらきをさします。知性は「物事を知り、考え、判断する能力」です。この記事では、知性を、知っていることをどう選んで、どう使うかまでふくめた力としてとらえています。知恵は、暮らしや人間関係の中で、物事をうまく運ぶ力。教養は、このことばのもとになった言葉をかりれば、知性と品性の両方をそなえていること、と言えるかもしれません。

Q. 知性と品性は比例しますか?

かならずしも比例しません。知識が豊富で、頭の回転が速くても、人を見下す言葉を使えば、品性があるとは感じられません。反対に、むずかしい話はしなくても、言わなくていいことを言わない人には、品性を感じます。ただ、知性を「相手の役に立つことを考えて選ぶ力」ととらえるなら、本当の知性は、品性とつながっていると言えるかもしれません。

Q. 性格と人間性の違いは?人間性は変えられますか?

性格は、明るい・慎重など、その人の考え方や行動のくせのことです。人間性は、それもふくめた、人としてのあり方や、人間らしさのことです。性格を大きく変えるのはむずかしくても、言葉の選び方や伝え方は、習慣で変えていけます。言葉が変わると、まわりの人が感じるあなたの人間性も、少しずつ変わっていきます。

Q. 人間性に問題がある人、品性がない人とは、どうつきあえばいいですか?

相手を変えようとするより、距離のとり方を決めるほうが、心は楽になります。悪口やうわさ話には乗らず、受け流して話題を変えましょう。必要なことは、短く、ていねいに伝えます。暴言や人格を否定する言葉をくり返し受けているときは、ひとりで抱えずに、信頼できる人や相談窓口に相談してください。心に引っかかっている言葉があるときは、ディマティーニメソッドの章のワークも役に立ちます。

Q. 何も言わないほうが、品性があるのですか?

いいえ。品性は、何も言わないことではなく、言うべきことと、言わなくていいことを選べることです。困っている人を見て見ぬふりをしたり、言うべき「いやです」をのみこみ続けたりするのは、品性ではありません。大切なことは、言い方を選んで、きちんと伝えましょう。

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「言葉で失敗した」と落ちこんでいるあなたへ

言わなくていいことを言ってしまった日。言いたいことを言えなかった日。言い方を後悔して、眠れなかった夜。そんな自分を、「知性も品性もない」と責めてきたかもしれません。

わたしも、そうでした。批判がこわくて、言葉で人を傷つけてきました。だからこそ、言葉で失敗して落ちこむあなたの気持ちが、よくわかります。

でも、言葉で失敗したと気づけるのは、あなたが、相手を大切にしたいと思っているからです。本当に知性も品性もない人は、自分の言葉をふり返ったりしません。

言葉がつまずくのは、多くの場合、心に余裕がないときです。今日は、言葉を磨くより先に、少しだけ自分を休ませてあげてください。そして明日、ひとつだけ、「本当?必要?やさしい?」と自分に聞いてから話してみましょう。

ひとりでは、自分の言葉のクセが、なかなか見えないこともあります。そんなときは、誰かと一緒にふり返ったほうが、見つかりやすくなります。

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知性・品性・人間性|まとめ

  • 「何を言うかが知性、何を言わないかが品性、どう伝えるかが人間性」は、人の知性・品性・人間性が、ふだんの言葉にあらわれることを教えてくれることば
  • 知性は「相手の役に立つことを考えて選ぶ力」、品性は「言わなくていいことをのみこめる力」、人間性は「相手の気持ちを思いながら、届く形で伝える力」
  • 言葉のクセは、「言葉にできない」「ひと言多い」「言い方がきつくなる」の3つ。どのタイプにも、裏側にあなたの良さがある
  • 磨く方法は、ひと言にまとめる、「教えて」と言う、「本当?必要?やさしい?」と聞く、いない人の話はよい話だけ、ひと呼吸おく、「わたしは」で伝える、最後まで聞く、の7つ
  • 「言わない」は「がまん」ではない。言うべきことと、言わなくていいことを選べることが、品性
  • 知性・品性・人間性は、頭のよさや生まれつきの性格ではなく、言葉を選ぶ習慣。何歳からでも磨いていける

今日は、ワークシートの1枚目のSTEP 2に、最近、言葉で後悔した場面をひとつ書いてみてください。

最後までお読みくださりありがとうございました。

心に残っている言葉を、ひとりで抱えなくて大丈夫です

怒鳴る義父の言葉に心をざわつかせ、そこから「ありがとう」にたどりついたわたしが、看護師として39年働いてきた経験とともに、あなたの言葉と気持ちを、責めることなく一緒に見つめます。
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