「また裏切られるかもしれないと思うと、人を好きになるのが怖い」
「優しくされても、どうせ最後は離れていくと思ってしまう」
「元恋人に言われたひと言が、何年たっても頭から離れない」
そんな自分に、疲れていませんか。
こんにちは、看護師でライフコーチ、ディマティーニメソッドのファシリテーターの愛原百麗です。看護師として働いて、39年になります(2026年時点)。

わたしは、毎日のようにけんかや暴力のある家庭で育ちました。そして、父の浮気によって生まれた憎しみを、45年以上も抱えて生きてきました。父は、暴力でわたしを黙らせる人でした。
大切な人ほど、いつか裏切るのではないか。人を、心から信じていいのだろうか。そんな怖さは、わたしにも覚えがあります。
この記事では、恋愛が怖くなってしまったあなたに、恋愛のトラウマがいまどれくらい影響しているかがわかるセルフチェックと、恋愛のトラウマとは何か、トラウマがある人の特徴、そして克服する方法の5つのステップをお伝えします。好きな人やパートナーが、恋愛のトラウマを抱えているかもしれない方に向けた接し方もまとめました。
先に結論をお伝えすると、恋愛のトラウマは、あなたが弱いからでも、恋愛に向いていないからでもありません。つらい恋の経験を脳が「危ない」と覚えていて、二度と傷つかないように、心が警報を鳴らしている状態です。だから、克服するとは、記憶を消すことではありません。「あの人」と「目の前の人」を分けて、「いまは安全」を少しずつ学びなおしていくこと。そして、傷ついた自分を責めるのをやめて、元恋人とのことを両方の面から見なおしていくこと。それが、恋愛のトラウマを克服する方法の中心です。
この記事では
・恋愛のトラウマ診断(12問のセルフチェック)
・恋愛のトラウマとは?なりやすい出来事と、PTSDとのちがい
・恋愛にトラウマがある人の特徴(5つのサイン・男性と女性)
・恋愛のトラウマを克服する方法|5つのステップ
・夜、思い出して眠れないときにできること
・恋愛にトラウマがある人を好きになったとき(接し方)
・ディマティーニメソッドで見る恋愛のトラウマ
・書き込める『恋愛のトラウマをほどくワークシート』
について解説します。
セルフチェックこの記事はセルフチェック付きです
恋愛のトラウマが、いまのあなたにどれくらい影響しているかを、12問でチェックできます。チェックを入れるだけで、あてはまるサインと、次に読んでほしいところがわかります。
無料PDFこの記事はワークシート付きです
記事の中でご紹介する『恋愛のトラウマをほどくワークシート』(PDF・A4/2枚)を、無料でダウンロードできます。印刷して、そのまま書き込めます。
恋愛のトラウマ診断|12問のセルフチェック
まずは、いまのあなたの心の状態を確かめてみましょう。過去の恋や、いまの恋愛を思いうかべながら、あてはまるものにチェックを入れてください。
セルフチェック
恋愛のトラウマは、いまのあなたにどれくらい影響している?
ここ1か月くらいのあなたを思いうかべて、あてはまるものにチェックを入れてください(12問)。
※この結果は、ご自身の状態をふり返るための目安です。医学的な診断ではありません。つらい状態が続くときは、心療内科や精神科に相談してください。
チェックの数が多いほど、過去の恋の傷が、いまの恋愛に影響していると考えられます。ただし、数よりも大切なのは、どのサインにチェックが入ったかです。結果に出たサインは、このあとの「5つのサイン」でくわしく説明しています。
「眠れない・食べられない日が2週間以上続いている」「消えてしまいたい」にチェックが入った方は、この記事を読み進めるよりも先に、相談窓口を頼ってください。
恋愛のトラウマとは?|つらい恋の経験を、心が「危ない」と覚えている状態
「トラウマ」は、もともと医学の言葉で、「心的外傷(しんてきがいしょう)」のことです。精神医学の診断基準(DSM-5-TR)では、命にかかわる出来事や大けが、性暴力などを、実際に体験したり、目の前で見たりすることを指します。
浮気や失恋、心ない言葉などは、多くの場合、この医学的な定義にはあてはまりません。ふだん「恋愛のトラウマ」というときは、もっと広く、つらい恋の経験が心の傷として残り、いまの恋愛にも影響している状態を指すことがほとんどです。医学の定義にあてはまらないからといって、あなたの痛みが小さいということではありません。

わたしたちの脳には、怖い目にあうと、その状況をしっかり覚えて、次からは早めに警報を鳴らすしくみがあります。そして、その警報は、もとの出来事に「似ているもの」にも鳴るようになります。これを、心理学では「恐怖の般化(はんか)」と呼びます。実験では、パニック障害などの不安障害やPTSDのある人で、この広がりが大きくなりやすいことが報告されています(ダイモンドら、2015年)。
浮気された人が、新しい恋人の返信が少し遅いだけで、胸がざわざわする。突然ふられた人が、優しくされるほど「どうせ最後は…」と身がまえる。それは、あなたの心が、二度と同じ痛みを味わわないように、必死に守ろうとしている反応なのです。

ただ、警報に従って恋愛から離れていると、「この人とは安全だった」という新しい経験をする機会も減ってしまいます。そのため、警報はなかなか小さくなりません。恋愛のトラウマが長引きやすいのは、このためです。
恋愛のトラウマになりやすい出来事
恋愛のトラウマのきっかけは、人によってさまざまです。たとえば、次のような経験があります。
・浮気や二股をされた、結婚していることを隠されていた
・ある日突然、別れを告げられた/音信不通になった
・長いあいだ否定されたり、見下されたりした(モラハラ)
・暴力や束縛、お金の支配を受けた(デートDV)
・性的な被害を受けた
・告白を笑われた、まわりにからかわれた
・大きな失恋で、自分の価値を見失った
・子どものころ、親の不仲や浮気、離婚を見て育った
恋人に浮気された経験のある、未婚の若い人73人を調べたアメリカの調査では、約45%が、浮気にかかわるPTSDに似た症状を示していました。そして、その症状が強い人ほど、気分の落ちこみ(抑うつ)も強い傾向がありました(ルースら、2019年)。恋愛でのつらい出来事も、心に深い傷を残すことがあるのです。
「ふられたくらいで、こんなに引きずるなんて」と、自分を責める必要はありません。
恋愛のトラウマとPTSDのちがい
PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、とても強い出来事のあとに、次のような症状が1か月以上続き、生活に支障が出ている状態に診断される病気です。
・その場面が勝手によみがえる、悪夢を見る(フラッシュバック)
・思い出させる場所や人、話題を避ける
・自分や人を否定的に考える、気分が晴れない状態が続く
・眠れない、ちょっとした物音にもびくっとする、イライラしやすい
恋愛のトラウマがある人の多くは、PTSDにはあてはまりません。ただ、デートDVや性暴力など強い出来事のあとに、これらの症状が続いているときは、PTSDの可能性もあります。PTSDには、効果が確かめられた治療があります。ひとりで抱えずに、心療内科や精神科に相談してください。
恋愛におけるトラウマの再演とは?
「トラウマの再演」とは、傷ついた経験と似た関係を、知らず知らずのうちにくり返してしまうことを指す言葉です。トラウマ研究で知られる精神科医のヴァン・デア・コークは、トラウマを受けた人の中には、ストレスがかかると、たとえ苦しくても慣れ親しんだパターンに戻ってしまう人や、自分を傷つける相手と強く結びついてしまう人がいると、論文で述べています(1989年)。
たとえば、冷たい親のもとで育った人が、冷たい相手ほど気になってしまう。浮気をくり返す人と別れたのに、また似たタイプを好きになる。そこには、「慣れ親しんだ感覚のほうが、なぜか落ち着く」「今度こそ、ちがう結末にしたい」という気持ちが、かくれていることがあります。
再演は、あなたが「好きで傷つきにいっている」という意味ではありません。そして、傷つけた側の責任が軽くなるわけでもありません。自分のパターンに気づけたとき、くり返しをとめる力は、もうあなたの手の中にあります。
「恋愛が怖い」「恋愛恐怖症」とのちがい
「恋愛恐怖症」は、恋愛や親しい関係を強く怖がってしまう状態を表す言葉ですが、正式な病名ではありません。恋愛が怖くなる理由には、過去の恋の傷のほかに、子どものころの親との関係や、人に近づくこと自体への不安などもあります。
「恋愛が怖い」と感じる理由が、過去の恋の経験にあると思い当たるなら、この記事の方法が、そのまま役に立ちます。人に近づくこと自体が怖いときは、愛着スタイル(恐れ回避型など)が関係していることもあります。
恋愛にトラウマがある人の特徴|5つのサイン
恋愛にトラウマがある人には、くり返し出やすいサインがあります。どれも、わざとではありません。もう傷つかないように、心が自動的に身を守っているのです。

1. 好きになりそうになると、ブレーキをかける
いいなと思う人が現れても、「どうせまた傷つく」と、気持ちが動く前に自分で止めてしまう。出会いの場に行かない、誘いを断る、好意を向けられると急に冷めてしまう。好きになることそのものが、痛みの入り口に見えている状態です。
2. 相手を信じられない・確かめずにいられない
優しい言葉の裏を読もうとしてしまう。返信の速さやSNSの動きが気になって、何度も確かめてしまう。「男性はみんな浮気する」「女性は信用できない」と、ひとりの人への不信が、異性全体への不信(男性不信・女性不信)に広がることもあります。
確かめると一瞬ほっとしますが、安心は長く続きません。そして、問いつめられた相手が疲れてしまい、関係がぎくしゃくすることもあります。
3. 「わたしが悪かった」と自分を責める
「わたしにもっと魅力があれば」「もっと尽くしていれば、別れなかったはず」。恋が終わった理由を、すべて自分のせいにしてしまう。そうして、「わたしなんて、大切にされるはずがない」という思いこみが、次の恋にも影を落とします。
4. 似た恋をくり返す
気づくと、前の恋人と似たタイプの人を好きになっている。我慢しすぎる、尽くしすぎる、相手に合わせすぎる。そして、同じような終わり方をくり返してしまう。先ほどお話しした「トラウマの再演」が起きているのかもしれません。
5. 似た場面で、体と心が反応する
元恋人に似た声やにおい、思い出の場所、別れを告げられた季節。そうしたものに出会うと、急に動悸がしたり、息苦しくなったり、涙が出たりする。当時の場面が、勝手によみがえることもあります。頭では「もう終わったこと」とわかっていても、体はまだ覚えているのです。
こうした反応が強く、長く続いているときは、このあとの受診・相談の目安も読んでみてください。
恋愛にトラウマがある男性の特徴
恋愛のトラウマそのものに、男女で大きなちがいがあるわけではありません。ただ、男性は女性にくらべて、心の悩みで専門家に助けを求めることが少なく、その背景には「男は弱音を吐くものではない」といった思いこみもあると考えられています(アディスとマハリク、2003年)。そのため、男性の恋愛のトラウマは、外から見えにくい形で出やすいのです。

・「いまは恋愛はいい」「仕事が忙しい」と、恋愛から距離をとる
・深い関係になりそうになると、連絡が減ったり、そっけなくなったりする
・軽い関係にとどめて、本気にならないようにする
・過去の恋の話を避ける、または冗談にしてしまう
・不安を言葉にできず、疑いや束縛のような態度で出てしまう
恋愛にトラウマがある女性の特徴
・「どうせわたしなんて」と、うまくいく前からあきらめてしまう
・嫌われないように、相手に合わせすぎる・尽くしすぎる
・不安になると、何度も気持ちを確かめたくなる
・好意を向けられたとたんに、気持ちが冷めてしまう
・恋愛の話題になると、明るくふるまって本心を隠す
これらは、あくまでよく見られる傾向です。男性でも女性のような出方をすることがあり、その逆もあります。「男性だから」「女性だから」と決めつけずに、目の前のその人を見ることが大切です。
恋愛のトラウマを克服する方法|5つのステップ
つらい出来事のあとも、人には、時間をかけて立ち直っていく力があります。トラウマの研究者ボナーノは、大切な人との死別や、命にかかわるような出来事のあとでも、大きく崩れずに日常を保っていく人(レジリエンス)は、これまで考えられていたよりずっと多く、場合によっては半数以上にのぼると述べています(2004年)。
恋愛のトラウマを克服するとは、つらい記憶を消すことではありません。思い出しても、いまの恋愛や生活が、大きくゆさぶられなくなることです。そのための5つのステップをご紹介します。

ステップ1:体を落ち着かせて、「いまは安全」と確かめる
警報が鳴っているとき、頭で考えようとしても、なかなかうまくいきません。まずは、体を落ち着かせることから始めます。
・吐く息を長くする:4つ数えながら鼻から吸って、6〜8つ数えながら、口からゆっくり吐く。これを5回
・まわりを見る:目に見えるものを5つ、聞こえる音を4つ、さわれるものを3つ、心の中で言ってみる
・足の裏を感じる:床についている足の裏の感覚に、意識を向ける
そして、「いまは〇年〇月。ここは自分の部屋。あのときとはちがう」と、いまいる場所と時間を、言葉にして確かめてみてください。
ただし、いまも暴力や暴言、つきまといを受けているときは、心のワークよりも先に、安全を確保することがいちばんです。この記事の相談窓口を頼ってください。
ステップ2:警報に名前をつけ、「あの人」と「この人」を分ける
胸がざわざわしたら、心の中で「いま、昔の傷が反応している」とつぶやいてみてください。怒りや恐れの表情の写真を見て、その感情を言葉で表すと、恐れにかかわる脳の扁桃体(へんとうたい)の反応がおだやかになったという脳画像の研究があります(リーバーマンら、2007年)。自分の気持ちに名前をつけることにも、同じような働きが期待できます。
少し落ち着いたら、「あの人」と「この人」を分けてみます。
・前の人は:嘘をついて、浮気をしていた
・この人は:忙しくなることを、前もって伝えてくれていた
・この人が、実際にしたこと:約束の日には、ちゃんと会いに来てくれている
「この人もきっと…」という想像ではなく、目の前の人が、実際にしたことに目を向けるのがコツです。ワークシートの1枚目に、そのまま書きこめる欄を用意しています。
ステップ3:気持ちを書いて、外に出す
心の中だけでぐるぐる考えていると、つらい記憶は、なかなか整理されません。紙に書き出すと、気持ちを外から眺められるようになります。
心理学者のペネベーカーらの実験では、つらい出来事について、事実とそのときの気持ちの両方を、4日間続けて15分ずつ書いた大学生は、書いた直後こそ気持ちが落ちこんだものの、その後の約半年、病気で保健センターを訪れる回数が、ほかのグループより少なかったと報告されています(1986年。46人の小さな研究です)。また、最近失恋した87人を対象にした実験では、別れの「よかった面」について書いた人は、つらかった面や関係のないことを書いた人よりも、書いた直後の前向きな気持ちが増えていました(レワンドウスキー、2009年)。
最初は、つらかったこと、悔しかったことを、思いつくまま書いてかまいません。何回か書いて少し落ち着いてきたら、「あの恋や別れから、得たものは何だろう」と書いてみてください。
※書いている途中や書いた直後は、一時的に気持ちが落ちこむこともあります。苦しくなったら、そこでやめて大丈夫です。暴力や性被害など、とても強い出来事の記憶は、ひとりで書き出さずに、専門家と一緒に取り組んでください。
ステップ4:自分を責める声を、いたわる声に変える
「わたしが悪かった」「見る目がなかった」。そうやって自分を責める声は、傷を深くしてしまいます。
離婚に向けて別居したばかりの約100人を追った研究では、別れについて話すときに、自分へのやさしさ(セルフ・コンパッション)が見られた人ほど、その後9か月にわたって、別れのつらさにとらわれにくい傾向がありました(スバラら、2012年)。
もし、大切な友だちが同じ経験をして、「わたしが悪かったの」と泣いていたら、あなたは何と声をかけるでしょう。その言葉を、そのまま自分にかけてあげてください。「怖くなるのは、それだけ傷ついたから。よく、ここまでがんばってきたね」。
ステップ5:安全な人と、小さく信じる練習をする
警報を小さくするいちばんの方法は、「信じても大丈夫だった」という経験を、少しずつ重ねることです。いきなり恋人にすべてをさらけ出す必要はありません。信頼できる友人や家族、カウンセラーとの小さな練習から始めましょう。

たとえば、不安になったとき、責める言い方ではなく「少し不安になっちゃった」と伝えてみる。小さな約束をして、それが守られるのを見届ける。そうした経験のひとつひとつが、「人は、信じてもいい」という感覚を、体に戻していきます。
ただし、信じる力を取りもどすことは、誰でも信じることではありません。次のようなサインがある相手とは、距離をとってかまいません。
・暴言や、見下すような言い方をする
・交友関係やスマホ、お金を細かく管理しようとする
・小さな嘘や、言うこととすることのちがいが多い
・出会ってすぐに、強すぎる愛情表現で距離を一気につめてくる
過去の傷があるからこそ、あなたの警報は、本当に危ない相手を見分ける力にもなります。大切なのは、警報を消すことではなく、「本当に危ないとき」と「昔の傷が反応しているだけのとき」を見分けられるようになることです。
カウンセリング・トラウマ治療という選択肢
フラッシュバックや悪夢が続くなど、PTSDのような症状があるときは、専門の治療が役に立ちます。イギリスの国立医療技術評価機構(NICE)の指針では、PTSDの治療として、トラウマに焦点をあてた認知行動療法や、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)がすすめられています。
また、症状がそこまで強くなくても、安心できるカウンセラーとの関係そのものが、「人を信じても大丈夫」と体で覚えなおす、安全な練習の場になります。
恋愛のトラウマは消えない?克服までの期間
「何年たっても、恋愛のトラウマが消えない」と悩む方は少なくありません。克服までの期間は、出来事の重さや、その後に支えてくれる人がいたかどうかによって、人それぞれです。「何か月で立ち直れる」という決まりはありません。
そして、記憶そのものが消えることは、あまりありません。けれども、思い出したときの痛みや、体の反応は、少しずつ小さくしていけます。「思い出しても、もう大丈夫」と思える日が増えていくこと。それが、克服のしるしです。
夜、思い出して眠れないときにできること
恋愛のトラウマは、静かな夜に、ふいに顔を出すことがあります。「早く寝なきゃ」と思うほど、目がさえてしまう。そんな夜のために、その場でできることをまとめました。
その場で1:呼吸と、瞑想の音声
ステップ1の、吐く息を長くする呼吸を、布団の中でくり返してみてください。それでも考えが止まらないときは、瞑想のガイド音声を流して、声についていくのもひとつの方法です。
ただ、フラッシュバックが強いときは、目を閉じて自分の内側に意識を向けると、かえって苦しくなる人もいます。そのときは、目を開けたまま、まわりの物の色や形を数えるほうが合っています。
その場で2:誰かと話す
ひとりで考えていると、つらい場面ばかりが大きくなっていきます。夜中でも話を聞いてもらえる窓口があります。「死にたい」とまでは思っていなくても、「眠れなくてつらい」という理由で電話していいのです。
・よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
・#いのちSOS:0120-061-338(24時間・無料)
・こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(通話料がかかります。受付時間は地域によってちがいます)
反対に、夜中に元恋人のSNSを見る、お酒の力で眠ろうとする、といったことは、警報をかえって強くしてしまいがちです。できるだけ避けましょう。
恋愛にトラウマがある人を好きになったとき|接し方とアプローチ
「好きな人が、過去の恋愛がトラウマで、いまは恋愛する気がないと言っている」。そんな悩みで、この記事にたどり着いた方もいると思います。相手の心の警報を、少しずつ小さくしていけるのは、「この人といても、怖いことは起きなかった」という経験の積み重ねです。

・急がない:関係を進めるペースは、相手に合わせる
・過去を無理に聞き出さない:話してくれたら、否定せずに聞く
・前の人と比べない:「おれは、前の彼とはちがう」と言うより、行動で見せる
・予測できる安心をつくる:小さな約束を守る、態度を急に変えない
・「治そう」としない:トラウマをどうするかは、相手自身が決めること
・あなた自身の気持ちも大切にする:待ちつづけて、自分がすり減らないように
恋愛にトラウマがある男性・女性へのアプローチ
相手が男性でも女性でも、基本は同じです。好意は、重くなりすぎない言葉で、おだやかに伝える。連絡の頻度や会う回数で、相手を試したり、しばったりしない。そして、断られたときには、きちんと引くこと。「この人は、わたしの『いや』を大切にしてくれる」という安心が、何よりの近道になります。
心をひらいてくれるまでの時間は、人によってちがいます。いつまで待つかは、相手ではなく、あなたの心と人生を基準に決めていいのです。
看護師として伝えたい、受診・相談の目安
次のようなときは、ひとりで抱えずに、心療内科や精神科に相談してください。
・当時の場面がよみがえる、悪夢を見る、ちょっとしたことでびくっとする状態が1か月以上続いている
・眠れない、食べられない状態が2週間以上続いている
・仕事や学校、家のことが手につかない
・つらさをまぎらわすために、お酒や薬、買いものなどにのめりこんでいる
・「消えてしまいたい」という気持ちが浮かぶ
ひとりで抱えきれないとき、相談できる窓口
いま暴力や暴言、つきまといを受けているときは、この記事のワークよりも先に、安全を確保してください。
・DV相談ナビ:#8008(お近くの配偶者暴力相談支援センターにつながります。通話料がかかります)
・DV相談+(プラス):0120-279-889(24時間・無料。チャットやメールでも相談できます)
・性暴力の被害:#8891(性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターにつながります。無料。受付時間は地域によってちがいます。ひかり電話からは 0120-8891-77)
・よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
・こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(通話料がかかります。受付時間は地域によってちがいます)
・「消えたい」と感じるとき:#いのちSOS(電話 0120-061-338・24時間・無料)
受診は、弱さではありません。安心して人を好きになれる自分を、取りもどしていくための、ひとつの手段です。
ディマティーニメソッドで見る恋愛のトラウマ|元恋人を両面から見る

恋愛のトラウマを抱えているとき、わたしたちは、元恋人を「わたしを傷つけたひどい人」という、片方の面からだけ見ていることが多いものです。そして、その見方が、「男の人は(女の人は)みんなそう」と、まだ出会っていない人にまで広がっていきます。
わたしがファシリテーターを務めるディマティーニメソッドでは、人や出来事の片方の面だけが見えているとき、わたしたちは恐れや怒りの中にいると考えます。恋のはじまりに相手を「この人しかいない」と持ち上げすぎて、裏切られたとたんに「最低の人」と見下す。その大きな揺れが、心に深い傷を残します。
だからこそ、元恋人とのことの、もう片方の面に、ゆっくり光をあてていきます。あの恋とその終わりが、あなたに何をもたらしたのか。相手は、何を大切にして、そうしていたのか。両方の面が見えてきたとき、「恋愛は怖いもの」という思いこみが、少しずつほどけていきます。
父への45年の憎しみが、ほどけたとき
冒頭でお話ししたように、わたしは、父の浮気によって生まれた憎しみを、45年以上持ち続けていました。父は、わたしに何も愛情を注いでくれなかった。暴力でわたしを黙らせる人だった。ずっと、そう思っていました。
それが、ディマティーニメソッドのたった1回のセッションで、父がわたしにしてくれていたことが、ハートでわかったのです。父から、愛されていた。頭ではなく、胸の奥の温かな直感ともいえる、真実の扉が開いた瞬間でした。
父を許すとか、許せないとかいう考えではありませんでした。生まれて初めて、無条件の愛を体験したのです。その後、わたしは父の介護をしながら、愛と感謝の中で、父を看取ることができました。
恋人に裏切られた痛みも、親から受けた傷も、心の中では、同じように「片方の面」に固まっています。セッションを受けてくださった方からも、こんな声をいただいています。3年前に、恋人から突然別れを告げられ、その後、男性不信になっていた方です。
以前は、私のここが駄目ね。私がもっと綺麗だったら・・私がもっと彼のことを思いやっていたら、彼と別れなかったはず。もう、恋愛なんかしない。男性は信じられない。そんなことを繰り返していました。彼のことが忘れられないのと同時に、彼を憎んでいました。(中略)1回目のセッションで彼が私にもたらしてくれた、大きな贈り物が見えたのです!(中略)今は自分を愛して、好きになりました。
カオリさん(27歳・会社員)
※個人の感想です。感じ方は人それぞれで、同じ結果をお約束できるものではありません。
ひとりでできる「元恋人を両面から見る」ワーク
恋愛が怖くなったきっかけの人がいるときは、気持ちが落ち着いている時間に、次の順番で書き出してみてください。
- きっかけの人(元恋人など)を、ひとり選ぶ
- 思い出したときのつらさを、0〜10でつける
- その人とのことで、つらかったことを書く
- それがあなたにもたらしたもの(身についた力・気づけたこと・出会えた人)を、3と同じ数になるまで探す
- その人は何を大切にして、そうしていたのかを想像して書く
- 書き終えたら、もう一度、つらさを0〜10でつける
例:浮気をしていた元恋人
→ つらかったこと:信じていた分、深く傷ついた/自分に自信がなくなった
→ もたらしたもの:恋愛で大切にしたいもの(誠実さ)がはっきりした/支えてくれた友人のありがたさに気づけた/ひとりの時間を楽しめるようになった
→ 相手が大切にしていたこと:人から求められている実感。自分の弱さと向き合うのが、怖かったのかもしれない
最初は、つらかったことばかりが浮かぶと思います。それで大丈夫です。傷が深いほど、いやな面が大きく見えるものだからです。同じくらいの数になるまで、ゆっくり探してみてください。
※両面を見るのは、浮気や暴力を正当化したり、「許さなければ」と自分に強いたりするためではありません。いまも暴力や暴言、つきまといを受けている相手については、まず離れて、安全を確保することがいちばんです。デートDVや性暴力のように、思い出すだけで強く苦しくなる出来事は、ひとりで進めず、専門家と一緒に取り組んでください。
参考
- American Psychiatric Association (2022). Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition, Text Revision (DSM-5-TR).(日本語版:日本精神神経学会 監修『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院、2023年)
- Roos, L. G., O’Connor, V., Canevello, A., & Bennett, J. M. (2019). Post-traumatic stress and psychological health following infidelity in unmarried young adults. Stress and Health, 35(4), 468–479.
- Dymond, S., Dunsmoor, J. E., Vervliet, B., Roche, B., & Hermans, D. (2015). Fear generalization in humans: Systematic review and implications for anxiety disorder research. Behavior Therapy, 46(5), 561–582.
- van der Kolk, B. A. (1989). The compulsion to repeat the trauma: Re-enactment, revictimization, and masochism. Psychiatric Clinics of North America, 12(2), 389–411.
- Lieberman, M. D., et al. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421–428.
- Pennebaker, J. W., & Beall, S. K. (1986). Confronting a traumatic event: Toward an understanding of inhibition and disease. Journal of Abnormal Psychology, 95(3), 274–281.
- Lewandowski, G. W., Jr. (2009). Promoting positive emotions following relationship dissolution through writing. The Journal of Positive Psychology, 4(1), 21–31.
- Sbarra, D. A., Smith, H. L., & Mehl, M. R. (2012). When leaving your ex, love yourself: Observational ratings of self-compassion predict the course of emotional recovery following marital separation. Psychological Science, 23(3), 261–269.
- Bonanno, G. A. (2004). Loss, trauma, and human resilience: Have we underestimated the human capacity to thrive after extremely aversive events? American Psychologist, 59(1), 20–28.
- National Institute for Health and Care Excellence (2018). Post-traumatic stress disorder (NICE guideline NG116).
- Dutton, D. G., & Painter, S. L. (1981). Traumatic bonding: The development of emotional attachments in battered women and other relationships of intermittent abuse. Victimology, 6, 139–155.
- Addis, M. E., & Mahalik, J. R. (2003). Men, masculinity, and the contexts of help seeking. American Psychologist, 58(1), 5–14.
- 藤澤伸介(2004)「女子が恋愛過程で遭遇する蛙化現象」『日本心理学会第68回大会発表論文集』1095.
- 内閣府男女共同参画局「DV相談について」「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」/厚生労働省「まもろうよ こころ」
- Dr. John Demartini 公式サイト(日本語)
恋愛のトラウマをほどくワークシート(無料PDF)
この記事でご紹介した方法を、そのまま試せるワークシートを用意しました。印刷して、書き込んで使えます。
1枚目は「心の警報に気づく」です。最近、恋愛で怖くなった場面と怖さの強さ(0〜10)、そのとき浮かんだ考えや体の反応を書き、「あの人」と「この人」を分けて、目の前の人が実際にしたことを書き出します。最後に、いまの自分にかけたいやさしい言葉と、小さな一歩を決めます。
2枚目は「元恋人とのことを両面から見る」です。恋愛が怖くなったきっかけの人とのことで、つらかったことと、それがあなたにもたらしたものを、同じ数だけ書き出します。最後に、次の恋で大切にしたいことを書きます。
無料ダウンロード
恋愛のトラウマをほどくワークシート(PDF・A4/2枚)
1枚目は「心の警報に気づく」。怖くなった場面と心の動きを書き、「あの人」と「この人」を分けます。2枚目は「元恋人とのことを両面から見る」。つらかったことと、それがもたらしたものを、同じ数だけ書き出します。
※2枚目は、ディマティーニメソッドの考え方をもとにした愛原百麗オリジナルのものです(公式教材ではありません)。医療の診断や治療の代わりにはなりません。
よくある質問

Q. 恋愛のトラウマは、消えますか?
記憶そのものが消えることは、あまりありません。けれども、思い出したときの痛みや体の反応は、小さくしていけます。体を落ち着かせる、「あの人」と「この人」を分ける、自分を責めない、安全な人と小さく信じる経験を重ねる。そうしているうちに、「思い出しても大丈夫」と思える日が増えていきます。症状が強いときは、トラウマの専門治療も役に立ちます。
Q. 恋愛のトラウマには、どんな症状がありますか?
心の面では、好きになるのが怖い、相手を信じられない、自分を責めてしまう、といったものがあります。体の面では、元恋人に似た人や場所に出会ったときの動悸、息苦しさ、涙、眠れない、などです。当時の場面が勝手によみがえる、悪夢を見るといった状態が1か月以上続くときは、心療内科や精神科に相談してください。
Q. 恋愛のトラウマで、蛙化現象が起きるのはなぜですか?
好きだった相手から好意を返されたとたんに、気持ちが冷めてしまう。これを「蛙化現象」と呼びます。もともとは、心理学者の藤澤伸介さんが2004年の学会で発表した言葉で、いまは、相手のちょっとした言動で冷めることを指す使い方も広がっています。理由は人それぞれですが、恋愛のトラウマがある人の場合、関係が近づくことそのものが「また傷つくかもしれない」という警報を鳴らしていることがあります。冷めたのではなく、怖くなっているのかもしれない、と気づくだけでも、自分を責めずにすみます。
Q. トラウマボンドとは?恋愛でも起こりますか?
トラウマボンド(トラウマティック・ボンディング)は、力の差がある関係の中で、暴力やひどい扱いと、優しさがくり返されるうちに、相手への強い結びつきが生まれてしまうことを指す言葉です(ダットンとペインター、1981年)。もともと、暴力のある関係を説明するために生まれた考え方で、恋人や夫婦のあいだでも起こります。つらい恋愛すべてにあてはまるわけではなく、暴力や支配がある関係についての言葉です。「ひどいことをされるのに、離れられない」と感じているときは、あなたの意志が弱いからではありません。DV相談ナビ(#8008)など、外の窓口を頼ってください。
Q. 過去の恋愛のトラウマは、恋人に話したほうがいいですか?
話さなければいけない、ということはありません。話すかどうか、どこまで話すかは、あなたが決めていいのです。ただ、「返信が遅いと不安になりやすい」「急に大きな声を出されると怖い」など、出来事そのものより、あなたが安心できるために知っておいてほしいことを伝えると、相手も接し方がわかり、関係が楽になることが多いです。
Q. 恋愛のトラウマがあっても、結婚できますか?
できます。トラウマを完全に克服してからでないと恋愛や結婚ができない、ということはありません。むしろ、安心できるパートナーとの関係の中で、「信じても大丈夫だった」という経験を重ねることが、いちばんの回復になることもあります。焦らず、あなたのペースで進んでいきましょう。
恋愛が怖くなったあなたへ
人を好きになるのが怖い自分を、「もう恋愛なんてできない」と責めてきたかもしれません。
でも、恋愛が怖いのは、あなたが冷たいからでも、弱いからでもありません。それだけ真剣に、人を大切にしてきたしるしです。そして、その怖さは、傷ついたあなたを、ここまで守ってきてくれたものでもあります。
今日は、もし胸がざわざわしたら、「いま、昔の傷が反応している」と、そっとつぶやいてみてください。それだけで、警報と、目の前の現実のあいだに、小さなすき間が生まれます。ひとりでは、元恋人とのことのもう片方の面が、なかなか見えないこともあります。そんなときは、誰かと一緒に探したほうが見つかりやすくなります。
恋愛のトラウマを克服する方法|まとめ
- 恋愛のトラウマは、つらい恋の経験を脳が「危ない」と覚えていて、警報を鳴らしている状態。弱さでも、恋愛に向いていないしるしでもない
- サインは、好きになるのが怖い・相手を信じられない・自分を責める・似た恋をくり返す・体と心が反応する、の5つ
- 克服する方法は、体を落ち着かせる→警報に名前をつけ「あの人」と「この人」を分ける→気持ちを書き出す→責める声をいたわる声に→安全な人と小さく信じる練習
- フラッシュバックや悪夢が1か月以上続く、眠れない・食べられない状態が2週間以上続くときは、心療内科・精神科へ。暴力や性被害は、まず安全と相談を
- 好きな人が恋愛のトラウマを抱えているなら、急がず、比べず、約束を守る。そして、あなた自身の心も大切に
今日は、ワークシートの1枚目のSTEP 4に、「あの人」と「この人」のちがいを書いてみてください。
恋愛の傷を、ひとりで抱えなくて大丈夫です
父への45年の憎しみがほどけた経験をもつ、看護師歴39年のわたしが、元恋人とのことのもう片方の面を、あなたと一緒に探していきます。
まずは無料のZoom相談(30分)で、お話ししてみませんか。カメラオフでも大丈夫です。無理な勧誘はいたしません。
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