「街を歩いていても、すれ違う人の顔や体型を、つい心の中でジャッジしてしまう」
「SNSできれいな人を見るたびに、鏡の中の自分が嫌になる」
「見た目の話ばかりの職場やママ友の輪に、正直もう疲れた」

ルッキズムをやめたい。そう思ってこの記事にたどり着いたあなたは、見た目で決めつけられる痛みを、きっと知っている人です。人にも自分にも、もう少しやさしくなりたい。その気持ちが、もう変わりはじめているしるしです。
こんにちは、看護師でライフコーチ、ディマティーニメソッドのファシリテーターの愛原百麗です。看護師として働いて、39年になります(2026年時点)。

じつは、わたし自身も、子どものころから顔にコンプレックスを抱えてきた一人です。思春期には、顔のことを言われるたびに傷ついてきました(そのときの話は、記事の中でお伝えします)。
看護師として長く働いていると、病気や治療で見た目が変わり、そのことに深く傷つく方に出会います。見た目の悩みは、「気にしすぎ」のひと言で片づけられるものではないと感じてきました。
ルッキズムについての記事の多くは、意味や社会問題の解説が中心です。この記事では、「やめたいのにやめられない」心のしくみと、今日からできる抜け出し方を、看護師とコーチの目線でお伝えします。
この記事では
・ルッキズムの意味と、身近な例
・「ルッキズムをやめたい」3つのタイプ
・やめたいのにやめられない理由
・ルッキズムは何が悪い? 見た目を気にするのはダメなこと?
・ルッキズムから抜け出す、今日からできる5つのこと
・ディマティーニメソッドの「両面」で見る、見た目の悩み
・美人になれば幸せになれる? 美容整形を考える前に知っておきたいこと
・娘さんが自分の見た目を嫌っているとき、お母さんにできること
・書き込める「見た目の両面ワークシート」
について解説します。
無料PDFこの記事はワークシート付きです
記事の中でご紹介する『ルッキズムを手放す 見た目の両面ワークシート』(PDF・A4/2枚)を、無料でダウンロードできます。印刷して、そのまま書き込めます。
ルッキズムとは? 意味をかんたんに
ルッキズム(lookism)は、人を見た目で評価したり、見た目によって扱いを変えたりすることです。日本語では「外見至上主義」「容姿差別」などと訳されます。
英語の look(見た目)に、「〜主義」をあらわす -ism をつけた言葉です。1970年代のアメリカで、太っていることで差別を受けていた人たちのあいだから広まったといわれています。
身近なルッキズムの例
- 「太った?」「老けたね」と、体型や顔について口にする
- 見た目をネタにして笑いをとる(容姿いじり)
- 「かわいいから得してるよね」と、見た目でその人の努力を決めつける
- 採用や接客で、見た目のいい人を優先する
- 見た目だけで「性格がきつそう」「だらしなさそう」と思いこむ
自分に向けたルッキズムもある
ルッキズムは、他人に向けるものだけではありません。
「この顔じゃ、誰にも好かれない」「やせないと、人前に出られない」。こんなふうに、見た目で自分の価値を決めてしまうことも、自分に向けたルッキズムです。
「ルッキズムをやめたい」と悩む人の多くが、この両方を抱えています。人を見た目で判断してしまうのは、自分も見た目で判断されることを、心のどこかでおそれているからかもしれません。
「ルッキズムをやめたい」3つのタイプ
「ルッキズムをやめたい」という悩みは、大きく3つのタイプに分かれます。

① 人を見た目で判断してしまう自分が嫌
街を歩いていても、職場でも、つい人の顔や体型をチェックしてしまう。好きになる人も、見た目から入ってしまう。そんな自分を「失礼だ」「性格が悪い」と責めているタイプです。
② 自分の見た目を責めるのをやめたい
鏡を見るたびにため息が出る。写真に写るのが苦手。SNSで見るきれいな人と比べて、落ちこんでしまう。見た目を整えることでしか、自分を保てないと感じているタイプです。
③ 周りのルッキズムに疲れた・しんどい
職場の見た目のうわさ話、ママ友の「やせた?」「太った?」の会話、メイクをしないとだらしないと見られる空気。自分は気にしたくないのに、周りの見た目の話に巻きこまれて疲れているタイプです。
どのタイプにも共通しているのは、「見た目=その人の価値」という思いこみに、自分が苦しめられていることです。
ルッキズムをやめたいのに、やめられない理由
見た目に反応するのは、人の自然なはたらき
まず知っておいてほしいのは、見た目に目がいくこと自体は、人として自然なはたらきだということです。
アメリカの心理学者ラングロワらの研究では、生後2〜3か月の赤ちゃんでも、大人が「魅力的」と評価した顔のほうを長く見つめることがわかりました(Langlois ら, 1987)。
また、見た目が整った人は、性格もよく、成功しそうだと思われやすいこともわかっています(Dion ら, 1972)。心理学では、ひとつの目立つ特徴に引っぱられて、全体の評価がゆがむことを「ハロー効果」と呼びます。
つまり、見た目に反応してしまうのは、あなたの性格が悪いからではありません。「見た目に目がいかない人」を目指すと、かえって苦しくなります。
SNSや広告が、毎日「比べる材料」を届けてくる
国際NGOプラン・インターナショナルのユース団体「プラン・ユースグループ」が全国のユース196人に行った調査では、自分の容姿について悩んだことがある人は、女性で92.8%、男性で74.2%でした。容姿に関心をもったきっかけには、友人との会話(52.0%)と並んで、SNS(51.5%)があげられています(2022年11〜12月)。
スマホを開けば、加工された顔や、整った体型の写真が次々に流れてきます。「毛穴」「二の腕」の広告は、悩みに気づかせて、その解決策を売りこみます。比べる材料が毎日届く環境では、見た目が気になるのは無理もないことです。
「やめなきゃ」と責めるほど、見た目に囚われる

Q&Aサイトには、高校生の女の子のこんな悩みが寄せられていました。メイクをしないとダサいと思われる空気がしんどい。でも、そうやって悩んでいる自分もルッキズムだと感じて、よけいに嫌な気分になる──。
ルッキズムをやめたい人ほど、この「責めるループ」にはまりがちです。見た目で判断した自分を「最低」と責めると、見た目のことがますます頭から離れなくなります。そして、また見た目に目がいく。
ループから抜け出すコツは、責めるのをやめて、「いま見た目で判断したな」と気づくだけで止めることです。気づけたなら、もう半分は抜け出せています。
見た目が「自分の価値」と結びついている
小さいころに容姿をからかわれた。「女の子はかわいくしていないと」と言われて育った。見た目を褒められたときだけ、自分に価値があると感じられた。
こうした経験があると、見た目が「自分の価値」とつながってしまいます。見た目へのこだわりを手放すことが、自分の価値を手放すことのように感じて、こわくなるのです。
だから、ルッキズムをやめるには、「見た目以外にも、自分には価値がある」と感じられる場面を、少しずつ増やしていくことが大切です。
わたしが「月のマーク」と笑われた日
ここで、わたし自身の話をさせてください。
わたしは、顎が長くて受け口です。高校生のとき、初対面の他の高校の男子に「月のマークの石けん」と言われ、その男子たちに大笑いされました。とても大きな心の傷になりました。
そのとき一緒にいた友人は、芸能人に似たかわいい女の子ばかりでした。そのぶん、自己肯定感も、自分には価値があると思える気持ちも、下がっていきました。
それから数年たって、あのときわたしをからかった男子と再会し、話す機会がありました。驚いたことに、相手は、目の前のわたしが、あのときからかった相手だとは思っていませんでした。
何年も心に残っていた言葉も、言った側にとっては、その場かぎりのものだったのかもしれません。見た目についての言葉は、言われた人の心にだけ、長く残ることがあります。
ルッキズムは何が悪い? 見た目を気にするのはダメなこと?
「ルッキズムの何が悪いの?」「見た目で選ぶのは当たり前でしょ」という声もあります。その気持ちも、わからなくはありません。
きれいになりたい気持ちは、悪くない
おしゃれを楽しむこと、メイクで気分を上げること、清潔にしておくこと。見た目を大切にすること自体は、悪いことではありません。
看護の世界には、「アピアランスケア」という言葉があります。がんの治療などで髪が抜けたり、肌や爪の色が変わったりした患者さんの、見た目の変化による苦痛をやわらげるケアです。国立がん研究センター中央病院には、2013年に「アピアランス支援センター」がつくられました。
見た目は、その人が自分らしく生きることと深く結びついています。だから医療の現場でも、見た目のケアを大切にしているのです。
問題は、見た目「だけ」で価値を決めること
ルッキズムの問題は、見た目を気にすることではなく、見た目だけで、人の中身や価値を決めつけることにあります。
- 見た目で、人を笑ったり、扱いを変えたりする
- 見た目で、性格や能力を決めつける
- 見た目で、自分には価値がないと思いこむ
見た目に反応するのは自然なことです。でも、そのあとに「見た目以外のその人」を見にいけるかどうかは、自分で選べます。
やめるのは「見た目を気にすること」ではなく、「見た目だけで決めつけること」です。
何気ないひと言が、本人も家族も苦しめる
ルッキズムのいちばんの問題は、言った側には何気ないひと言でも、言われた側には何年も残ることです。
前の章でお話ししたように、わたしが高校生のときに「月のマークの石けん」と笑われた言葉も、言った男子は、数年後に再会したとき、目の前のわたしがあのときの相手だと気づいていませんでした。言った側にとってはその場かぎりのことでも、言われた側は、その言葉を抱えたまま大人になっていきます。
そして、見た目の苦しみは、本人だけにとどまりません。娘さんが「自分の顔が嫌い」と悩む姿を見て、苦しんでいるお母さんもいます。代わってあげられないつらさ、「わたしに似たせいかもしれない」という自分への責め。子どもの見た目の悩みは、家族の悩みにもなっていきます。
先ほどの調査でも、容姿について悩んだことがある若い女性は、92.8%にのぼりました。ほとんどの女の子が見た目に悩む社会は、その家族も悩む社会です。
ルッキズムは、「気にしすぎ」という一人ひとりの問題ではありません。何気ない言葉や、毎日届く「理想の見た目」が、本人と、その家族の心まで少しずつ削っていく。だからこそ、社会の問題として考える必要があるのです。
社会を変えるには時間がかかります。でも、わたしたち一人ひとりが、人の見た目について軽はずみなひと言を口にしないことは、今日からできます。
「ルッキズムはどうしようもない」と感じるとき
「見た目で判断されるのは当たり前」「ルッキズムはどうしようもない」と、あきらめたくなることもあると思います。社会全体を変えるのはむずかしくても、自分の中のルッキズムとの付き合い方は、今日から変えられます。次の章で、その方法をお伝えします。
ルッキズムから抜け出す方法|今日からできる5つのこと

1. 気づいたら、責めずに実況する
人の見た目をジャッジしたとき、自分の見た目にダメ出ししたとき、心の中で「いま、見た目で判断したな」と実況します。
ポイントは、そのあとに「最低」「性格が悪い」と続けないことです。天気を伝えるアナウンサーのように、見たままを言葉にして終わりにします。責めないことで、ループが止まりやすくなります。
2. 見た目以外のよさを1つ探す
見た目で判断したことに気づいたら、その人の見た目以外のよさを1つ探してみます。「声がやさしい」「いつも先にあいさつしてくれる」「仕事がていねい」。
自分の見た目にダメ出ししたときも同じです。「後輩の話を最後まで聞ける」「料理の段取りがいい」。小さなことで大丈夫です。見た目以外の物差しが増えるほど、見た目の物差しは小さくなっていきます。
3. SNSの見方を変える
SNSをやめる必要はありません。見方を変えるだけで、比べる回数はぐっと減ります。
- 見るたびに落ちこむアカウントは、ミュートする(相手には知られません)
- 寝る前と朝いちばんは、SNSを開かない
- 「加工されているかもしれない」と思いながら見る
- 見た目より、暮らしや考え方を発信している人をフォローする

4. 体を「はたらき」でねぎらう

看護師として、いちばんおすすめしたいのがこれです。
体を「どう見えるか」ではなく、「何をしてくれているか」で見てみます。きょうも階段を上ってくれた足。子どものおでこにふれて、熱に気づけた手。友だちの話に笑い返せた顔。
オランダの研究者アレバらは、体のはたらきについて書く短いワークを1週間ほど続けた女性たちで、見た目への満足感や、体への感謝の気持ちが高まったと報告しています(Alleva ら, 2015)。
看護の現場では、歩けなくなったり、食べられなくなったりして、はじめて体のありがたさに気づく方が少なくありません。いま動いてくれている体に、「ありがとう」を言ってあげてください。
5. 見た目の話題の返し方を決めておく

周りのルッキズムに疲れているときは、返し方を先に決めておくと楽になります。
- 「そうかな? それより、この前の話なんだけど…」と話を変える
- 「わたしは見た目より、〇〇さんの〇〇なところが好きだな」と、見た目以外の話にずらす
- 自分の見た目をいじられたら、「それ、ちょっと気になるから、やめてほしいな」と短く伝える
相手を変えようとしなくて大丈夫です。自分がその話に乗らないだけで、心の消耗はずいぶん減ります。
ディマティーニメソッドの「両面」で見る、見た目の悩み

ここからは、わたしがファシリテーターを務めるディマティーニメソッドの考え方で、見た目の悩みを見ていきます。
ディマティーニメソッドには、A面・B面・C面という3つの見方があります。A面は、相手の好きで賞賛している(すごい、うらやましいと感じる)言動を扱い、そこに隠れたデメリットを見つけていきます。
きれいな人と比べて落ちこむのは、まさにA面で扱うテーマです。相手を持ち上げすぎた気持ちと、自分を小さくする気持ちを、同じ高さに戻していきます。

憧れの見た目の人を「両面」で見る
まず、あなたが憧れている見た目の人を1人思い浮かべてください。職場の同僚、ママ友、SNSで見るあの人。
そして、その見た目ゆえに、その人が抱えている大変なことを書き出していきます。
- 見た目だけで近づいてくる人を、見分けなければならない
- 何をしても「きれいなのに」「美人だから」と、見た目とセットで語られる
- 保つために、時間とお金がかかる
- 年齢を重ねて、見た目が変わっていくことへのこわさ
- 中身を見てもらえない、さみしさ
10個ほど書いていくと、「あの人はすべてを持っている」という思いこみが、少しずつゆるんでいきます。それは相手を下げることではありません。持ち上げすぎていた相手を、等身大の一人の人として見られるようになるということです。
自分の気になる見た目にも、役立ってきた面がある
同じ見方は、自分の見た目にも使えます。気になっている見た目が、これまでのあなたをどう助けてきたかを探してみてください。
- 丸顔で、初対面でも話しかけてもらいやすい
- 見た目で勝負しないぶん、話す力や仕事の力を磨いてきた
- 見た目で悩んだからこそ、人の痛みに気づけるようになった
無理に前向きになる必要はありません。嫌なところと、役立ってきたところ。その両方があると気づくだけで、自分を責める力は弱まっていきます。
見た目へのこだわりは、価値の序列から生まれる
ディマティーニメソッドでは、人それぞれが持つ「何を大切にするかの順番」を価値の序列(価値観の優先順位)と呼びます。
美しいものが好き、おしゃれが好き、という人にとって、見た目は価値の序列の上のほうにあります。それは悪いことではなく、あなたらしさのひとつです。
苦しくなるのは、他人やSNSの価値観をそのまま自分の中に取り込んで、「もっと細くなければ」「きれいでなければ」と、自分を縛ってしまうときです。ディマティーニ博士は、自分を人と比べて、他人の価値観を自分の基準にしてしまうと、「〜すべき」「〜しなければ」が増えて苦しくなる、と説明しています。
「わたしは本当は、何を大切にしたいんだろう?」。そう問い直すことが、見た目に縛られない生き方の第一歩になります。
美人になれば、幸せになれる? 美容整形を考える前に知っておきたいこと

最近は、プチ整形など、美容医療を気軽に受けられるようになりました。見た目の悩みが軽くなって、前向きになれる人もいます。ドイツで美容整形を受けた544人を1年間追った研究では、不安が減り、自己肯定感や生活の満足度が上がったと報告されています(Margraf ら, 2013)。
それでも、「美人になれば幸せになれる」とは言い切れません。理由を6つあげます。

1. 人は、新しい顔にも慣れてしまう
うれしい変化にも、人はやがて慣れます。宝くじに当たった人も、当たっていない人とくらべて、幸福感はそれほど高くなかったという研究があります(Brickman ら, 1978)。顔が変わった喜びも、しばらくすると「当たり前」になりやすいのです。
2. 幸福感は、見た目の点数と関係が薄い
大学生を対象にした研究では、他人が顔写真を見てつけた魅力の点数と、本人の幸福感には、ほとんど関係がありませんでした。関係が強かったのは、本人が自分の見た目をどう評価しているかのほうでした(Diener ら, 1995)。顔が変わっても、自分を見る目が変わらなければ、満たされにくいのです。
3. 比べる相手は、いなくならない
上には上がいて、SNSを開けば、また誰かと比べてしまいます。見た目へのとらわれが強い「身体醜形症」の人では、美容の治療の約7割で、症状が変わらないか悪くなっていました。満足しても、今度は別の場所が気になりはじめることが多いといわれます(Phillips ら, 2001)。
4. 美しさにも「大変な面」がある
見た目だけで近づいてくる人がいる、妬まれる、何をしても「美人だから」と言われる、保つためにお金と時間がかかる。前の章でお伝えしたように、美しさにも、助けになる面と大変な面の両方があります。
5. 見た目は、年齢とともに必ず変わる
変わっていくものに自分の価値を預けると、それを失うこわさも、一緒についてきます。
6. 幸せを大きく左右するのは、人との関係
80年以上続くハーバード大学の研究では、幸福と健康にいちばん関係していたのは、よい人間関係でした。見た目は関係のきっかけにはなっても、関係を育てていくのは、別の力です。
あなたが尊敬している人は、美人やイケメンばかりですか?

ここで、ひとつ質問させてください。
あなたが尊敬している同性や異性の人を、何人か思い浮かべてみてください。その人たちは、美人やイケメンばかりでしょうか。
思い浮かぶのは、困っているときに手を差しのべてくれた人、いつも笑顔で周りを明るくしてくれる人、仕事や生き方に筋が通っている人。見た目ではなく、その人のあり方に惹かれている人が多いのではないでしょうか。
わたしたちは、人を尊敬するとき、見た目では選んでいません。それなら、自分自身のことも、見た目だけで決めなくていいはずです。
顔が変わっても、言葉の傷は消えるとはかぎらない
見た目のことで笑われた記憶は、顔を変えても、消えるとはかぎりません。癒やす必要があるのは顔ではなく、そのときの心の傷のほうかもしれません。
整形をするかどうかは、あなたが決めていいことです。そのうえで、「何のために変えたいのか」を、一度紙に書き出してみてください。誰かに言われた言葉を消すためなのか、自分が心地よくいるためなのか。答えによって、まず向き合うものが変わってきます。
持病のある方は、主治医にもしっかり相談を
看護師として、ここはお伝えしておきたいところです。持病があって治療を受けている方は、美容外科の医師だけでなく、主治医からもしっかり説明を受けてから決めてください。
- 心臓や肺の病気などで、麻酔に体が耐えられるか
- 血をさらさらにするお薬を飲んでいるときの、出血のしやすさ
- 糖尿病やステロイドのお薬の影響による、傷の治りにくさや感染
- 手術の前に、お薬を止めたり調整したりする必要があるか
美容外科の医師は、あなたの持病のすべてを知っているわけではありません。かかっている病気や、飲んでいるお薬は、すべて伝えてください。
娘さんが自分の見た目を嫌っているとき、お母さんにできること

「ルッキズムは何が悪い?」の章でもふれたように、娘さんが「自分の顔が嫌い」と悩む姿を見て、苦しんでいるお母さんもいます。代われるものなら代わってあげたい。そう願いながら、どう声をかければいいのか迷っている方に、お伝えしたいことがあります。
「そんなことないよ」より、まず気持ちを受けとめる
「かわいいよ」「気にしすぎだよ」と励ましたくなりますが、娘さんには「わかってもらえなかった」と届くことがあります。まずは「そう感じて、つらいんだね」と、気持ちをそのまま受けとめてください。
お母さん自身の、見た目の言葉を見直す
「また太っちゃった」「しわが増えて嫌だ」。お母さんが自分の見た目を責める言葉を、娘さんはよく聞いています。家族やテレビに映る人の見た目へのひと言も同じです。
見た目以外の「あなたらしさ」を言葉にする
「友だち思いだね」「最後まであきらめなかったね」。見た目以外のよさを言葉にしてもらえると、娘さんの中に、見た目以外の物差しが育っていきます。
生活に影響が出ているときは、専門家へ
鏡の前から離れられない、学校に行けない、食事を極端に減らしている。そんな様子があるときは、ひとりで抱えずに、かかりつけ医やスクールカウンセラー、心療内科・精神科(児童精神科)に相談してください。
お母さん自身の心も、整えていい
娘さんの苦しむ姿を見ていると、お母さん自身が昔、見た目のことで傷ついた記憶がよみがえることもあります。娘さんを支えるためにも、お母さん自身の気持ちを整える時間を持ってください。
見た目の悩みが、生活に影響しているときは

看護師として、ここはお伝えしておきたいところです。
見た目の悩みが強くなると、毎日の生活に影響が出ることがあります。次のようなことが続いていませんか。
- 1日に何時間も鏡を見たり、見た目を確かめたりしてしまう
- 見た目が気になって、外出や人に会うことを避けている
- 食事を極端に減らしたり、食べては吐いたりしている
- 見た目のことで、「消えてしまいたい」と思うことがある
自分の見た目の欠点が頭から離れず、何時間も悩んでしまう状態は、「身体醜形症(醜形恐怖症)」という病気のことがあります。MSDマニュアルによると、およそ1.7〜2.9%の人にみられ、多くは思春期に始まります。認知行動療法やお薬による治療があります。
当てはまるものがあるときは、ひとりで抱えずに、心療内科や精神科に相談してください。つらい気持ちを今すぐ誰かに聞いてほしいときは、厚生労働省の「まもろうよ こころ」で、電話やSNSの相談窓口を探せます。
参考
- Langlois, J. H., et al. (1987). Infant preferences for attractive faces: Rudiments of a stereotype? Developmental Psychology, 23(3), 363–369.
- Dion, K., Berscheid, E., & Walster, E. (1972). What is beautiful is good. Journal of Personality and Social Psychology, 24(3), 285–290.
- Alleva, J. M., et al. (2015). Expand Your Horizon: A programme that improves body image and reduces self-objectification by training women to focus on body functionality. Body Image, 15, 81–89.
- Margraf, J., Meyer, A. H., & Lavallee, K. L. (2013). Well-being from the knife? Psychological effects of aesthetic surgery. Clinical Psychological Science, 1(3), 239–252.
- Brickman, P., Coates, D., & Janoff-Bulman, R. (1978). Lottery winners and accident victims: Is happiness relative? Journal of Personality and Social Psychology, 36(8), 917–927.
- Diener, E., Wolsic, B., & Fujita, F. (1995). Physical attractiveness and subjective well-being. Journal of Personality and Social Psychology, 69(1), 120–129.
- Phillips, K. A., et al. (2001). Surgical and nonpsychiatric medical treatment of patients with body dysmorphic disorder. Psychosomatics, 42(6), 504–510.
- The Harvard Gazette「Things money can’t buy, like happiness and better health」(ハーバード成人発達研究)
- 公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン「ルッキズムに関する意識調査報告書~プラン・ユースグループが発表~」
- 国立がん研究センター「中央病院に「アピアランス支援センター」を新設」
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「身体醜形症」
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」
ルッキズムを手放す「見た目の両面ワークシート」(無料PDF)
この記事でご紹介した方法を、紙に書きながら試せるワークシートを用意しました。
1枚目は「気づきの記録」です。いまの心のざわつき(0〜10)、見た目で判断した・比べた場面と、そのとき浮かんだ言葉、見た目以外のよさを書きます。体の「はたらき」へのありがとうを書く欄もあります。
2枚目は「両面を見る」です。憧れている見た目の人の「大変なこと」を10個、自分の気になる見た目が「役立ってきたこと」を10個書き出します。最後に、もう一度心のざわつきに○をつけて、1枚目とくらべます。印刷して、そのまま書き込めます。
無料ダウンロード
ルッキズムを手放す 見た目の両面ワークシート(PDF・A4/2枚)
1枚目は「気づきの記録」。見た目で判断した・比べた場面と、見た目以外のよさ、体のはたらきへのありがとうを書きます。2枚目は「両面を見る」。憧れの見た目の大変なことと、自分の気になる見た目が役立ってきたことを、10個ずつ書き出します。
※ディマティーニメソッドの考え方をもとにした、愛原百麗オリジナルのワークシートです(公式教材ではありません)。
よくある質問

Q. ルッキズムは、何が悪いのですか?
見た目を気にすること自体は悪くありません。問題になるのは、見た目だけで人の中身や価値を決めつけたり、見た目で扱いを変えたりすることです。言われた人の自信を奪ったり、仕事や人間関係で不公平が生まれたりします。
Q. 見た目を褒めるのも、ルッキズムですか?
褒めること自体が悪いわけではありません。ただ、体型や顔立ちは本人が変えにくく、褒め言葉でもプレッシャーになることがあります。「その服の色、似合うね」「髪型を変えた? いい感じ」のように、本人が選んだものを褒めると、相手も受け取りやすくなります。
Q. 人を見た目で判断してしまうわたしは、性格が悪いのでしょうか?
いいえ。見た目に目がいくのは、赤ちゃんにもみられる自然なはたらきです。性格が悪いのではなく、そのあとの見方を選び直せばいいのです。「やめたい」と思えている時点で、あなたはもう変わりはじめています。
Q. 恋人を見た目で選ぶのは、ルッキズムですか?
見た目に惹かれるのは自然なことで、それだけでルッキズムとはいえません。ただ、見た目「だけ」で相手を選んだり、つき合ったあとも見た目で相手の価値を測ったりすると、関係が苦しくなりやすいです。見た目以外に惹かれているところも、言葉にしてみてください。
Q. メイクやダイエット、整形をするのは、ルッキズムに負けたことになりますか?
なりません。自分が心地よくいるために見た目を整えるのは、あなたの自由です。ただ、「こうしないと価値がない」という不安から続けているなら、一度立ち止まってみてください。体を傷つけるほどのダイエットは、看護師としておすすめできません。
Q. 子どもに、見た目のことを言ってしまいます。
「太るよ」「かわいくしなさい」などの言葉は、子どもが見た目を自分の価値と結びつけるきっかけになることがあります。気づいたときに「ごめんね、見た目のことを言いすぎたね」と伝え直せば大丈夫です。見た目より、「がんばったね」「やさしいね」と、行動や気持ちに目を向けた言葉を増やしてみてください。
ルッキズムをやめたいときのまとめ
- ルッキズムは、見た目で人を評価したり、扱いを変えたりすること。自分に向けたルッキズムもある
- 見た目に目がいくのは、人の自然なはたらき。性格が悪いからではない
- 「やめなきゃ」と責めるほど、見た目に囚われる。気づくだけで止める
- 問題は見た目を気にすることではなく、見た目「だけ」で価値を決めること
- 見た目への何気ないひと言は、言われた本人にも、その家族にも長く残る。ルッキズムは社会の問題
- 見た目以外のよさを探す、SNSの見方を変える、体を「はたらき」でねぎらう
- 憧れの見た目にも、自分の気になる見た目にも、両面がある
- 美人になっても、幸せになれるとはかぎらない。癒やしたいのは、顔より心の傷のほう。持病のある方は、整形の前に主治医にも相談を
- 娘さんが見た目に悩んでいるときは、励ますより、まず気持ちを受けとめる
- 見た目の悩みで生活に支障があるときは、心療内科や精神科へ
見た目を気にしない人になる必要はありません。見た目「だけ」で決めない自分に、少しずつなっていけば大丈夫です。
見た目で自分の価値を決めてしまう苦しさを、ひとりで抱えていませんか
くり返し比べてしまう相手や、どうしても好きになれない自分の見た目には、あなたが本当に大切にしたいものが隠れています。その正体を、一緒に言葉にしてみませんか。
まずは無料のZoom相談(30分)で、お話ししてみませんか。無理な勧誘はいたしません。
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