初詣で手を合わせるとき、心の中で「〜しますように」とつぶやく。手紙の最後に「ご活躍をお祈りしています」と書く。
どちらも、何かが「そうなりますように」と思う言葉です。でも、ふと「祈る」と「願う」は、何が違うのだろうと気になったことはありませんか。
言葉の使い分けに迷った方もいれば、「願っても叶わなくて苦しい」「祈るって、どういうことだろう」と、心のあり方として知りたくなった方もいると思います。
こんにちは、看護師でライフコーチ、ディマティーニメソッドのファシリテーターの愛原百麗です。

わたしは看護師として39年、急変や看取りの場面に立ち会ってきました。家族としても、義父を自宅で、義母を病院で見送りました。
この記事では、まず辞書の意味と使い分けをわかりやすく整理します。そのうえで、人の力ではどうにもならない時間の中で、わたしが感じてきた「願い」と「祈り」の違いと、苦しい願いを祈りに変えていく方法をお伝えします。
この記事では
・「祈る」と「願う」の違いを一言でいうと
・辞書の意味と語源から見る違い
・「祈る」と「願う」の使い分けと例文(ビジネスメール・手紙)
・スピリチュアルな視点で見る「願い」と「祈り」の違い
・看護師39年のわたしが、看取りの現場で知った「祈り」
・願いを祈りに変える3つのステップとワークシート
・毎日の暮らしに祈りを取り入れる4つのヒント
について解説します。
ノートとペンを用意して、読み進めてみてください。
無料PDFこの記事はワークシート付きです
記事の中でご紹介する『願いを祈りに変える ワークシート』(PDF・A4/2枚)を、無料でダウンロードできます。印刷して、そのまま書き込めます。
「祈る」と「願う」の違いを一言でいうと

先に、答えからお伝えします。
願う:「こうなってほしい」と望むこと。神さま・仏さまにも、人にも使える(「お願いします」)。心は望む結果に向かう。
祈る:神さま・仏さまなど、人の力をこえたものに、心をこめて申し上げること。相手の幸せや無事など、自分では左右できないことに使うことが多い。心は結果をゆだね、相手のしあわせに向かう。
迷ったときは、人に何かを頼むなら「願う」、相手のしあわせを思うなら「祈る」と覚えておくと使い分けやすくなります。
ただし、この2つの言葉は、もともと意味がとても近い言葉です。辞書と語源から、もう少しくわしく見ていきましょう。

辞書では、おたがいを使って説明されている
『デジタル大辞泉』(小学館)では、2つの言葉がこう説明されています。
- 祈る:①神や仏に請い願う。神仏に祈願する。②心から望む。願う。
- 願う:①神仏に、希望の実現することを祈る。②望みがかなうように請い求める。③こうしてほしいことを人に頼む。助力や配慮を求める。(ほかに、申請する・品物を買ってもらうなどの意味)
「祈る」の説明に「願う」が、「願う」の説明に「祈る」が出てきます。それだけ、2つの言葉は重なりが大きいということです。
はっきり違うのは、「願う」には「人に頼む」という意味があることです。「お手伝いをお願いします」とは言いますが、「お手伝いをお祈りします」とは言いません。
語源から見る違い:「祈る」は清らかな心で言葉にすること
語源をたどると、2つの言葉の「心の向き」の違いが見えてきます。
- 祈る:接頭語「い(斎)」+動詞「のる(宣る)」からできた言葉。「斎」は神聖で清らかなこと、「宣る」は言葉にして告げることです。
- 願う:「ねぐ(祈ぐ)」に、くり返しや続くことを表す「ふ」がついた言葉。「ねぐ」は、神さまの心をなごませて加護を願うことで、神職の「禰宜(ねぎ)」も同じ「ねぐ」からきています。
「祈る」は、心を清めて、神さまに言葉で申し上げること。「願う」は、望みが叶うように、くり返し求めること。どちらも、もとは神さまに向かう言葉でしたが、「願う」はやがて、人に頼むときにも使われるようになりました。
「祈る」と「願う」の使い分けと例文
ふだんの会話や、ビジネスメール・手紙での使い分けを、例文で見てみましょう。
人に何かを頼むときは「願う」
- ご確認のほど、よろしくお願いいたします。
- 引き続きご協力をお願い申し上げます。
相手に何かをしてもらうときは、「願う」を使います。ここで「お祈りいたします」と書くと、意味が通じなくなります。
相手のしあわせや成功を思うときは「祈る」
- 皆さまのご健勝を、心よりお祈り申し上げます。
- 新しい場所でのご活躍をお祈りしております。
- 一日も早いご回復をお祈りしています。
相手の健康や成功は、自分の力で決められるものではありません。だからこそ、心をこめて、ゆだねる「祈る」がよく合います。「ご多幸を願っております」のように「願う」も使えますが、手紙やあいさつの結びでは「お祈り申し上げます」が改まった言い方としてよく使われます。
就職活動の不採用の通知が「お祈りメール」と呼ばれるのも、最後が「今後のご活躍をお祈り申し上げます」で結ばれることが多いからです。
自分の望みには「願う」、力を尽くしたあとは「祈る」
- 志望校に合格できるよう願って、毎日勉強している。
- できることはすべてやった。あとは合格を祈るだけだ。
自分の望みに向かって進むときは「願う」がしっくりきます。いっぽう「祈る」には、自分にできることを尽くしたあと、結果を大きなものにゆだねる響きがあります。この感覚の違いが、次にお話しする「心のあり方」の違いにつながっていきます。
スピリチュアルな視点で見る「願い」と「祈り」の違い
言葉の意味を知ったうえで、もう一歩、心の中で起きていることに目を向けてみましょう。
願いは「未来」に、祈りは「今」に心を向ける
願いは、「こうなってほしい」という未来に向かいます。そして多くの場合、「今はまだ足りない」という気持ちから生まれます。
祈りは、結果を手放して、今ここで、相手や自分のしあわせを思うことです。「〜でありますように」と祈るとき、心は不足よりも、すでにある大切なものに向いています。だから祈りは、「ありがとう」という感謝と、とても近いところにあります。
願いが苦しくなるのは「こうでなければ」とかたくなったとき
願いそのものが悪いわけではありません。願いがあるから、人は努力できますし、前に進めます。
ただ、願いが「こうでなければ」「あの人が変わってくれなければ」とかたくなると、叶わない毎日に、焦りやいら立ちが積み重なっていきます。願うほど苦しくなるのは、このときです。
そんなとき、願いを無理に捨てる必要はありません。願いを「祈り」に変えていくと、同じ思いを持ったまま、心が少しずつ整っていきます。
願いは「結果を求める心」。祈りは「結果をゆだねて、相手と今に心を向ける心」。どちらが正しいということではなく、願いの奥にある大切なものに気づいたとき、願いは祈りに変わるのだと、わたしは感じています。
「願う」「祈る」とよく似た言葉に、「意図する」があります。3つの違いは、こちらの記事でまとめています。
看護師39年のわたしが、看取りの現場で知った「祈り」
病棟では、いまも急変や看取りに立ち会います。患者さんが急変したとき、ご家族は「助かってほしい」と願い、わたしたち医療者も、できることをすべて尽くします。
それでも、人の力ではどうにもならない時があります。願いが叶わなかったとき、そのあとに残るもの。わたしにとって、それが「祈り」でした。
お寺で、患者さんとご家族の安寧を祈った日
わたしは、お寺を訪ねたことがあります。お布施とお供えを持って伺い、ご住職から、人の命について仏教の視点からお話をうかがいました。そして、これまで関わった患者さんとご家族の安寧を祈りました。
そのとき祈ったのは、何かを叶えてほしいということではありませんでした。見送った方々が安らかであるように。残されたご家族が、穏やかに過ごせるように。ただ、その方々のしあわせを思う時間でした。
義母の胸をさすりながら、願いが祈りに変わっていった
義母を病院で見送る前、わたしは、近いうちに義母を失う不安と悲しみで、すっかり落ち込んでいました。そのとき義母には、もう意識がありませんでした。

意識のない義母の胸を、さすっていたとき
それでも義母の胸をさすっているうちに、不思議と、わたし自身の心が癒されていくのを感じました。
いま振り返ると、あの時間は、「もっと生きていてほしい」という願いから、近いうちに訪れる義母との別れを少しずつ受け入れ、「どうか安らかに」という祈りへ、わたしの心が移っていった時間だったように思います。
義父は、自宅で見送りました。亡くなる間際、義父は「ありがとう」と言って、何度もわたしの手を握ってくれました。
祈りとは、相手の安寧や安楽を思い、その人を大切に思う気持ちです。そう考えると、義父のそばで過ごした最期の時間も、わたしにとっては祈りの時間だったのだと思います。
願いを祈りに変える3つのステップ
「どうして叶わないの」「あの人が変わってくれない」。願うほど苦しくなっているときは、次の3つのステップで、願いを祈りに変えてみてください。

ステップ1:願いを、そのまま書く
まずは、いまいちばん叶えたい願いを、本音のまま書き出します。人に見せるものではないので、きれいな言葉にしなくて大丈夫です。
たとえば、「夫に、もっと優しくなってほしい」「母の病気がよくなってほしい」「子どもに、わたしの気持ちをわかってほしい」。その願いを思うときに出てくる焦りや不安も、一緒に書いておきましょう。
ステップ2:その願いが叶ったら、何が満たされる?

次に、「その願いが叶ったら、わたしの何が満たされるだろう」と自分に聞いてみます。
わたしがファシリテーターを務めるディマティーニメソッドでは、人それぞれが持つ「何を大切にするかの順番」を価値の序列(価値観の優先順位)と呼びます。そして、人は「足りない」と感じているものに、大きな価値を置くと考えます。
「夫に優しくなってほしい」の奥には、「安心して、家族と笑って過ごしたい」という思いがあるかもしれません。願いの奥にあるのは、あなたが本当に大切にしたいものです。
そして、それが今の暮らしの中にも、少しはないかを探してみてください。夫が黙ってゴミを出してくれた。家族で同じテレビを見て笑った。形を変えて、大切なものはもうそばにあることに気づくと、「足りない」という焦りがゆるんでいきます。
ステップ3:結果をゆだね、祈りの言葉にする
最後に、願いを「〜でありますように」という祈りの言葉に書き換えます。相手を変えようとする言葉ではなく、相手や自分のしあわせを思う言葉にするのがポイントです。
・「夫に、もっと優しくなってほしい」
→「家族みんなが、安心して過ごせますように。今日も一緒にごはんを食べられて、ありがとう」
・「母の病気がよくなってほしい」
→「母が、痛みなく穏やかに過ごせますように。今日も母と話せて、ありがとう」
わたしは、六方拝という感謝の瞑想のあとに、こんな祈りの言葉を心の中で唱えています。
私にとって、今日が素晴らしい1日でありますように
一緒に瞑想をした仲間、そして周りの大切な人たちにとって、今日が素晴らしい1日でありますように
生きとし生ける全てのものが幸せでありますように
自分から、身近な人へ、そしてすべてのいのちへ。祈りの輪を少しずつ広げていくと、ひとつの願いにとらわれていた心が、ふっと軽くなります。
ここまでの流れを、ワークシートにまとめました。前半では、いまの願いと、その奥にある大切なものを書き出し、後半では、願いを祈りの言葉に書き換えて、今日の「ありがとう」と、今日できる小さなことを書きます。印刷して、書き込みながら進めてみてください。
無料ダウンロード
願いを祈りに変える ワークシート(PDF・A4/2枚)
いまの願いと、その奥にある「本当に大切にしたいもの」を書き出し、願いを「〜でありますように」という祈りの言葉に書き換えるシートです。今日の「ありがとう」と、祈ったあとにできる小さなことも書き込めます。
※愛原百麗オリジナルのワークシートです。
毎日の暮らしに祈りを取り入れる4つのヒント
祈りに、特別な場所や決まった言葉はいりません。毎日の暮らしの中で、こんなふうに取り入れてみてください。

1. 朝、手を合わせて「ありがとう」から始める
目が覚めたこと、今日という日があること。朝いちばんに手を合わせて、「ありがとう」から一日を始めます。
わたしは、毎月1日と毎週月曜日の朝に、六つの方角に感謝を届ける六方拝をしています。月のはじめ、週のはじめを感謝から始めると、心が自然と整っていきます。
2. 寝る前に、大切な人の顔を思い浮かべる
布団に入ったら、家族や友だち、気になっている人の顔をひとりずつ思い浮かべて、「〜でありますように」と心の中で祈ります。うまくいかない相手のことも、その人のしあわせを思うと、張りつめていた気持ちが少しやわらぎます。
3. 神社やお寺では、お願いの前に感謝を伝える
お参りでお願いごとをするのは、悪いことではありません。そのうえで、お願いの前に「いつも、ありがとうございます」と感謝を伝えてから手を合わせると、願いが自然と祈りに近づいていきます。
4. 祈ったら、今日できることをひとつする
祈りは、行動のかわりではありません。病棟でも、患者さんの回復を祈る気持ちと、目の前のケアを尽くすことは、いつも一緒にあります。
結果はゆだねて、今日の自分にできることを、ひとつだけ選びましょう。夫に「ありがとう」を伝える、母に電話をする、早めに寝てからだを休める。小さな行動が、祈りを毎日の暮らしにつないでくれます。
よくある質問

Q. ビジネスメールでは「お祈り」と「お願い」のどちらを使えばいい?
相手に何かをしてほしいときは「お願いいたします」、相手の健康や成功を思う結びのあいさつには「お祈り申し上げます」を使います。
「ご活躍を願っております」も間違いではありませんが、目上の方への改まった結びでは「お祈り申し上げます」がよく使われます。
Q. 神社でお願いごとをしてはいけないの?
そんなことはありません。辞書でも、「願う」のいちばん最初の意味は「神仏に、希望の実現することを祈る」です。お願いごとをしてもかまいません。
そのうえで、まず日ごろの感謝を伝えてからお願いをする、という方も多くいます。心が落ち着くほうで大丈夫です。
Q. 祈っても叶わないときは、どう考えればいい?
祈りは、何かと引きかえに結果を手に入れるためのものではありません。叶う・叶わないで心が揺れているときは、まだ「願い」の中にいるのかもしれません。
結果はゆだねて、祈っている自分の心が、少しでも穏やかになっているかに目を向けてみてください。祈りは、あなたの心を整える時間でもあります。
Q. 特定の宗教を信じていなくても、祈っていいの?
もちろんです。大切な人のしあわせを心から思う気持ちは、それだけで祈りです。決まった作法や言葉がなくても、手を合わせて「〜でありますように」と思うことから始めてみてください。
願いが叶わず、苦しいあなたへ
願いが強いのは、それだけ大切にしたいものがあるからです。叶わない苦しさを抱えているあなたは、それだけ真剣に、誰かや何かを大切に思ってきたのだと思います。
願いを手放す必要はありません。その奥にある大切なものに気づいて、結果をゆだねる。そうすると、同じ思いを持ったまま、心は少しずつ穏やかになっていきます。
ひとりで願いの奥を探すのがむずかしいときは、誰かと一緒に探したほうが早いところだと思っています。
「祈る」と「願う」の違いのまとめ
- 願うは「こうなってほしい」と望むこと。神仏にも人にも使え、人に頼むときは「お願いします」
- 祈るは、人の力をこえたものに心をこめて申し上げること。相手の幸せや無事など、自分では左右できないことによく使う
- 語源は、祈る=「斎(い)」+「宣る(のる)」、願う=「祈ぐ(ねぐ)」+くり返しの「ふ」
- ビジネスでは、頼みごとは「お願いいたします」、結びのあいさつは「お祈り申し上げます」
- 心のあり方では、願いは「結果を求める心」、祈りは「結果をゆだねて、相手と今に心を向ける心」
- 苦しい願いは、「そのまま書く→叶ったら満たされるものを探す→祈りの言葉にする」の3ステップで祈りに変えられる
今夜、眠る前に、大切な人の顔をひとり思い浮かべて、「〜でありますように」と祈ってみてください。
叶わない願いに、心が疲れてしまったあなたへ
「どうして叶わないの」「あの人が変わってくれない」。そんな苦しさを、安心して話してみませんか。看護師として39年、多くの患者さんとご家族に寄り添ってきたわたしが、願いの奥にある、あなたの大切なものを一緒に見つけていきます。
文章でのご相談もできます。無理な勧誘はいたしません。
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