自宅の机でノートパソコンに手をのせたまま、まちがえるのが怖くて手が止まり、不安そうに画面を見つめる女性の写真。「失敗恐怖症とは? 失敗が怖い原因と克服する方法 セルフチェック・ワークシート付き」

「失敗するのが怖くて、やりたいことに手が出せない」

「仕事でミスをしたらと思うと、前の晩から眠れない」

「人前でまちがえるくらいなら、最初からやらないほうがいい」

そんな自分を、情けなく感じていませんか。

こんにちは、看護師でライフコーチ、ディマティーニメソッドのファシリテーターの愛原百麗です。看護師として働いて、39年になります(2026年時点)。いまも病棟で働いています。

ドクター・ディマティーニ・メソッド トレインド・ファシリテーター 愛原百麗(看護師×ライフコーチ)

看護の仕事は、小さなまちがいが、患者さんの命にかかわることもある仕事です。急変の場面や、はじめての処置の前には、わたしも「まちがえたらどうしよう」という怖さと向き合ってきました。

そしてわたしには、子どものころの忘れられない出来事があります。小学1年生のとき、クラスで算数の問題を解いている最中に、先生がうしろから両手でわたしの目をふさぎました。何も見えないまま当てられ、わたしは答えられませんでした。その後の面談で、先生は母に「ももかさんは、計算ができません」と伝えたそうです。家に帰ってその出来事を話しても、母は「先生がそんなことするわけがない」と、信じてくれませんでした。

「できない子」と見られる怖さ、まちがえることへの怖さは、わたしにとっても、よく知っている気持ちです。

この記事では、失敗が怖くて動けないあなたに、何が怖いのかがわかるセルフチェックと、失敗恐怖症とは何か、失敗が怖くなる原因、今日からできる克服の5つのステップをお伝えします。

先に結論をお伝えすると、失敗が怖いのは、あなたが弱いからでも、だめな人だからでもありません。多くの場合、怖いのは失敗そのものより、失敗した「あと」に起こると思っていることです。恥をかく、「わたしはダメだ」と思う、将来がだめになる、大切な人に見放される、期待を裏切る。何が怖いのかを知り、失敗しても困らない小さな場面で試して、「思ったほどではなかった」を積み重ねること。そして、失敗したときに自分を責めるのではなく、思いやること。それだけで、失敗の怖さは少しずつ小さくなっていきます。

この記事では

・失敗恐怖症の診断テスト(5つのタイプのセルフチェック)

・失敗恐怖症とは?病気なの?失敗を恐れる人の特徴と原因

・失敗が怖いのは完璧主義のせい?

・失敗恐怖症を克服する5つのステップ

・看護師として伝えたい、受診・相談の目安

・ディマティーニメソッドで見る失敗

・書き込める『失敗の怖さをほどくワークシート』

について解説します。

セルフチェックこの記事はセルフチェック付きです

あなたの「失敗が怖い」のタイプを、12問でチェックできます。チェックを入れるだけで、いちばん強い怖さと、それに合う克服のしかたがわかります。

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無料PDFこの記事はワークシート付きです

記事の中でご紹介する『失敗の怖さをほどくワークシート』(PDF・A4/2枚)を、無料でダウンロードできます。印刷して、そのまま書き込めます。

ワークシートのダウンロードへ ▼

失敗恐怖症の診断テスト|あなたの「失敗が怖い」を5つのタイプでチェック

失敗恐怖症には、病院で使う決まった診断テストはありません。ただ、心理学には、失敗の怖さを「失敗したあとに起こると思っていること」で5つに分けて考える方法があります(コンロイら、2002年)。その考え方をもとに、セルフチェックを作りました。最後の2問は、心と体のSOSを確かめるための質問です。

セルフチェック

あなたの「失敗が怖い」は、どのタイプ?

あてはまるものに、チェックを入れてください(12問)。

※この結果は、いまの気持ちをふり返るための目安です。医学的な診断ではありません。

チェックした項目は、次の5つの怖さにわかれています。ひとつずつ見ていきましょう。

「失敗が怖い」5つの正体(怖いのは、失敗そのものより「失敗のあと」)。1 恥をかく:みんなの前で、まちがえたくない 2 「わたしはダメだ」と思う:失敗が、自分の価値を下げる気がする 3 将来がだめになる:ひとつの失敗で、全部が終わる気がする 4 大切な人に見放される:できないわたしは、愛されない気がする 5 期待を裏切る・怒られる:がっかりさせるのが、何より怖い。どの怖さかで、ほどき方が変わる。何が怖いかがわかれば、一歩が選べる

1. 「恥をかく」のが怖い

人前でまちがえるところを見られたくない。笑われたら、どうしよう。会議で発言するとき、はじめての場所に行くとき、この怖さで足がすくむ方は多いものです。

アメリカのコーネル大学で行われた実験があります。学生に、ちょっと恥ずかしいTシャツを着て、ほかの学生がいる部屋に入ってもらいました。すると着た本人は、「Tシャツに気づいた人」の数を、実際よりかなり多く見積もっていたのです(ギロビッチら、2000年)。人は、自分にスポットライトが当たっているように感じてしまう。これを「スポットライト効果」といいます。

オフィスで書類を抱えた女性が、自分だけにスポットライトが当たっているように感じて緊張しているが、まわりの同僚は書類を読んだり、コーヒーを飲んだり、パソコンを打ったりしていて、誰も彼女を見ていない水彩イラスト

あなたが気にしている失敗も、まわりの人は、思っているほど見ていませんし、覚えてもいません。恥の怖さは、「みんなに見られている」という感じ方で、大きくなっていることが多いのです。

2. 「わたしはダメだ」と思うのが怖い

小さなミスをしただけなのに、「やっぱりわたしはダメだ」と、自分のすべてを否定してしまう。この怖さを持つ方は、失敗を「行動」ではなく「自分の価値」と結びつけてしまいがちです。

アメリカの心理学者ネフらの研究では、失敗したときに自分を思いやれる人(セルフ・コンパッションが高い人)ほど、失敗への恐れが小さい傾向がありました。自分にきびしい人ほど、失敗が怖くなるのです。

失敗したのは、あなたの「やり方」や「その日の行動」です。あなたという人の価値が、それで下がるわけではありません。

3. 「将来がだめになる」のが怖い

「この失敗で、すべてが終わってしまう」「取り返しがつかなかったら、どうしよう」。ひとつの失敗が、頭の中でどんどん大きくなっていく。そんな怖さです。

認知行動療法では、ものごとを最悪の結果へと一気に結びつけてしまう考えのくせを、「破局的思考(はきょくてきしこう)」と呼びます。慎重で、先のことまで考えられる人ほど、このくせが出やすいものです。

けれども、その場では大きく見えた失敗も、ふり返ると、ほとんどはあとから取り返しがついています。頭の中の「最悪のこと」と、実際に「たぶん起こること」は、たいてい別物です。

4. 「大切な人に見放される」のが怖い

失敗したら、嫌われる。できない自分は、愛されない。この怖さの奥には、「うまくできたときだけ、認めてもらえる」という思いこみがかくれていることがあります。

アメリカの心理学者エリオットとスラッシュの研究では、親と子どもの失敗への恐れは、似る傾向がありました。そして母親の場合は、その一因として、子どもが失敗したときに愛情を引っこめるような関わりがあったと報告されています。子どものころ、テストの点が悪いと口をきいてもらえなかった。できたときだけほめられた。そんな経験は、おとなになってからも「失敗したら、見放される」という怖さとして残ることがあります。

ただ、これは「親のせい」と決めつけるためのお話ではありません。親もまた、失敗を恐れながら、精いっぱい子育てをしていたのかもしれないのです。

5. 「期待を裏切る・怒られる」のが怖い

家族や上司をがっかりさせたくない。怒られるのが怖い。この怖さが強いと、ミスをしたときに言い出せず、ひとりで抱えこんでしまいます。

医療の世界には、「人は誰でもまちがえる」という考え方があります。アメリカの医学研究所が1999年に出した報告書『To Err Is Human(人は誰でもまちがえる)』は、医療事故の多くは、悪い人が起こすのではなく、まちがいが起こりやすいしくみの中で起きていると伝えました。だから病院では、ミスを個人の責任にして終わらせるのではなく、しくみで防ぐことが大切にされています。

わたしが働く病院にも、インシデント報告やカンファレンスなど、チームでふり返るしくみがあります。ミスは、ひとりで背負うものではありません。怒られるのが怖くてミスを隠すと、かえって大きな事故につながります。だからこそ、早く伝えた人が責められないことが大切なのです。

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職場がつらいとき、「甘え」かどうかの見分け方と、価値観のズレについて書いています。

失敗が怖いのは、完璧主義のせい?

「失敗が怖いのは、完璧主義だから」と言われることがあります。けれども、完璧主義には2つの面があります。「高い目標をもって、がんばる」面と、「ミスをしてはいけない、まわりにどう見られるかが気になる」面です。

完璧主義の研究をまとめたストーバーとオットーは、高い目標をもつ面は、ミスや人の評価を気にしすぎなければ、むしろよい面もあると報告しています。苦しさにつながりやすいのは、主に「ミスや評価を気にしすぎる」面です。失敗への恐れについての研究でも、とくに強く結びついていたのは、「まわりから完璧を求められている」と感じるタイプの完璧主義でした(コンロイら、2007年)。目標が高いこと自体は、悪いことではありません。苦しくなるのは、「ミスをしたら終わり」という思いが重なったときです。

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失敗恐怖症とは?病気なの?

失敗への怖さが強すぎて、挑戦を避けたり、なかなか決められなかったり、毎日の暮らしに支障が出てしまう状態を、「失敗恐怖症」と呼ぶことがあります。英語では「アティキフォビア(atychiphobia)」といいます。

ただし、失敗恐怖症は通称で、正式な病名ではありません。生活に支障が出るほど強い場合は、専門家が、恐怖症(限局性恐怖症)や社交不安症などとして評価します。全般不安症や強迫症、うつ病などが背景にあることもあります。くわしくは、このあとの「受診・相談の目安」を見てください。

失敗を恐れる人の特徴

失敗を恐れる人には、次のような行動が見られることがあります。どれも、失敗から自分を守ろうとして身につけた「くせ」です。

・やるべきことを、ぎりぎりまで先のばしにする

・準備や確認に、時間をかけすぎる

・挑戦する前に「どうせ無理」とあきらめる

・人に頼めず、ひとりで抱えこむ

・うまくいかなかったときの言い訳を、先に用意しておく

・ミスをしても、言い出せない

・ほめられても「たまたまです」と受けとれない

失敗が怖くなる原因

失敗が怖くなる原因は、ひとつではありません。いくつかが重なっていることがほとんどです。

・育ち:結果だけで評価された、失敗すると冷たくされた、くらべられて育った

・過去の経験:大きな失敗で強く責められた、笑われた(失敗がトラウマのように残っている)

・いまの環境:ミスを許さない職場や家庭、怒られることが多い毎日

・生まれもった気質や特性:不安を感じやすい気質。発達の特性があり、ミスや注意を受ける経験が重なってきた

環境の影響もありそうです。内閣府が2018年に13〜29歳の若者を対象に行った国際調査では、「うまくいくかわからないことにも意欲的に取り組む」と答えた人は、日本が51.5%でした。韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン(62.9〜87.4%)とくらべて、7か国の中でもっとも低い結果です。失敗をしにくい空気の中で育つと、失敗はどうしても怖くなります。

原因がわかると、「わたしの性格が弱いからだ」と自分を責める気持ちが、少しゆるみます。怖さには、ちゃんと理由があるのです。

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失敗恐怖症を克服する5つのステップ|怖さを消すより、怖さと一緒に一歩を

ここからは、失敗恐怖症を克服する5つのステップをお伝えします。目標は、失敗の怖さをゼロにすることではありません。怖さがあっても、一歩を踏み出せるようになることです。

失敗恐怖症を克服する5つのステップ(怖さを消すより、怖さと一緒に一歩を)。1 何が怖いかを書く:5つの怖さのうち、どれ? 2 「最悪」と「たぶん」を分ける:最悪のこと・たぶん起こること・起きたらどうする 3 小さく試す:失敗しても困らない練習から 4 友だちにかける言葉を、自分に:「誰でもまちがえるよ」 5 「誰が悪い」より「次どうする」:看護の現場の、ふり返り方。自分を責める(「なんでできないの」)と、次はもっと怖くなりやすい。自分を思いやる(「誰でもまちがえる」)と、次に向かいやすくなる

ステップ1:何が怖いかを書く

まず、失敗が怖くて手が出せていないことを、紙に書きます。そして、セルフチェックの5つの怖さのうち、どれがいちばん強いかを選びます。

「なんとなく怖い」ままだと、怖さは大きくふくらみます。感情を言葉にすると、不安や恐れにかかわる脳の扁桃体(へんとうたい)の反応がおだやかになることが、研究で確かめられています。怖さに名前をつけるだけで、怖さとの距離が少しとれます。

ステップ2:「最悪」と「たぶん」を分ける

次に、3つのことを書きます。①考えられる最悪のこと、②実際にたぶん起こること、③もし最悪のことが起きたらどうするか、です。

例:職場の勉強会で、事例の発表をたのまれた

→ 最悪のこと:頭が真っ白になって、何も話せない

→ たぶん起こること:少しつかえるけれど、最後まで話せる

→ 起きたらどうする:メモを見ながら話す。最初に「緊張しています」と言ってしまう

「起きたらどうするか」まで決めておくと、最悪のことは「想像するだけで怖いもの」から、「起きても対処できるもの」に変わります。

ステップ3:小さく試す

失敗が怖いものほど、避けていると、怖さは育っていきます。反対に、失敗しても困らない小さな場面で試し、「思ったほどではなかった」を経験すると、怖さは小さくなっていきます。認知行動療法でも、予想と実際の結果をくらべる「行動実験」として使われている方法です。

小川にならぶ小さな飛び石の最初のひとつに、両手でバランスをとりながら、少し勇気を出した笑顔で足をのせる女性の水彩イラスト。向こう岸には花が咲いている

発表が怖いなら、まず家族の前で1分だけ話してみる。料理の失敗が怖いなら、ひとりの日に新しい料理を作ってみる。いきなり大きな挑戦をする必要はありません。いちばん小さな一歩からで大丈夫です。

ステップ4:友だちにかける言葉を、自分に

失敗したとき、友だちになら「誰でもまちがえるよ」「よくがんばったね」と言えるのに、自分には「なんでできないの」と言ってしまう。そんな方は多いものです。

カリフォルニア大学の研究では、むずかしいテストで失敗した学生のうち、自分を思いやるように促されたグループは、自尊心を高めるように促されたグループなど、ほかのグループよりも、次のテストに向けて長く勉強しました(ブラインズとチェン、2012年)。自分を責めるより、思いやるほうが、次に向かう力がわいてくるのです。

ソファに座った女性が、両手を胸の真ん中にそっと重ねて目を閉じ、やさしくほほえみながら自分をいたわっている水彩イラスト。テーブルには丸めた紙と温かいお茶

失敗したら、胸に手を当てて、「誰でもまちがえる」「よくがんばった」と、友だちにかけるような言葉を、自分にかけてあげてください。

ステップ5:「誰が悪い」より「次どうする」

失敗をふり返るとき、「誰が悪かったのか」「わたしのどこがダメだったのか」を考えると、怖さが強くなります。看護の現場でミスやヒヤリとした出来事をふり返るときは、次の3つの順番で考えます。

1. 何が起きたか(事実だけを書く)

2. なぜ起きたか(人ではなく、手順・時間・環境などのしくみを見る)

3. 次はどうするか(具体的な工夫をひとつ決める)

この順番でふり返ると、失敗は「わたしがダメな証拠」ではなく、「次をよくするための材料」に変わります。家事や子育て、仕事の失敗にも、そのまま使えます。

子どもが失敗を怖がるとき、親ができること

お子さんが失敗を怖がって挑戦しないときは、ほめ方を見なおしてみてください。小学5年生を対象にしたアメリカの研究では、「頭がいいね」と能力をほめられた子は、「よくがんばったね」と努力をほめられた子よりも、失敗したあとにあきらめやすく、楽しめなくなっていました(ミューラーとドゥエック、1998年)。

結果より、工夫したことや、がんばったことをほめる。失敗しても、態度や愛情は変わらないと伝える。そして、親自身の失敗談を、笑いながら話してあげる。それが、失敗を怖がりすぎない心を育てます。

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看護師として伝えたい、受診・相談の目安

次のようなときは、ひとりで抱えずに、心療内科や精神科に相談してください。

・失敗が怖くて、仕事や学校に行けない日がある

・失敗のことを考えると、動悸や吐き気、ふるえが出る

・眠れない、食べられない、気分が落ちこむ状態が2週間以上続いている

・何度確認しても不安が消えず、確認がやめられない

・人前に出る場面が怖くて、避けるようになった

・「消えてしまいたい」という気持ちが浮かぶ

職場のことで悩んでいるときは、職場の産業医や保健師、厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」でも相談できます。お子さんの場合は、小児科やスクールカウンセラーに相談してみてください。

ひとりで抱えきれないときの相談窓口

・こころの耳電話相談(働く人のための相談):0120-565-455(平日17時〜22時、土・日10時〜16時。祝日・年末年始を除く)

・よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)

・こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556

・「消えたい」と感じるとき:#いのちSOS 0120-061-338(24時間・無料)

受診は、弱さではありません。怖さに飲みこまれずに、毎日を過ごす力を取りもどすための、ひとつの手段です。

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ディマティーニメソッドで見る失敗|「失敗」にも両方の面がある

ドクター・ジョン・F・ディマティーニ
ドクター・ジョン・F・ディマティーニ(出典:ディマティーニ公式サイト https://drdemartini.com/ja/)

ここまでの方法は、失敗の怖さと向き合うための、いわば「行動」の工夫です。最後に、失敗そのものの見え方を変える視点をお伝えします。

わたしがファシリテーターを務めるディマティーニメソッドでは、人は、自分が大切にしているもの(価値の序列)を失うと感じたときに、強い恐れを感じると考えます。仕事を大切にしている人は仕事の失敗を、家族を大切にしている人は子育ての失敗を、強く恐れます。失敗が怖いのは、それだけ大切にしているものがあるからなのです。

また、ディマティーニ博士は、他人の価値観を自分の基準にしてしまうと、「〜すべき」「〜しなければ」が増えて苦しくなる、と説明しています。親や上司の期待を、いつのまにか自分の基準にしていないか。それも、失敗の怖さをほどく手がかりになります。

「失敗」にも、両方の面がある(いやな面だけが見えると、怖さは大きくなる)。恥ずかしかった → 準備の大切さを知った。自信をなくした → 人のつらさがわかるようになった。怒られた → 助けてくれる人がわかった。遠回りをした → 自分に合う道が見えてきた。失敗は、あなたの価値を下げない。見えていなかった面が、次の一歩をくれる

そしてディマティーニメソッドでは、物事には必ず両方の面があると考えます。失敗にも、いやな面と、あなたにもたらしたものの両方があります。失敗が怖くてたまらないとき、わたしたちには、失敗のいやな面だけが見えています。見えていなかったもう片方の面に光をあてていくと、怖さは、我慢しなくても少しずつ落ち着いていきます。

「計算ができない子」だったわたしが、看護師になるまで

わたしは、学習障害をかかえ、家庭の中でもけんかや暴力が絶えない環境で育ちました。小学校から高校まで、いじめられることも多くありました。冒頭の目隠しの出来事のあと、わたしは「計算ができない子」として見られていました。

それでも、中学生のころには、少しずつ学力が伸びていきました。そして1987年に准看護師の免許を取り、働きながら学んで、2011年に正看護師の免許を取りました。

いまふり返ると、「できない子」と見られた悔しさがあったからこそ、学ぶことをあきらめなかったのかもしれません。わたしにとって、あの日の出来事は、いやなだけの出来事ではなかったのです。

庭で、ひびの入った植木鉢を両手で持つ女性が、ひびから伸びて花を咲かせた芽を見つけて、うれしそうにほほえんでいる水彩イラスト

そして、ディマティーニメソッドのグループワークで、亡くなった母とのつらい出来事に向き合ったとき、わたしは号泣しながら、こう思いました。

私が私を愛してなかった……ごめんなさい私。ありがとう私。

失敗した自分、できなかった自分をいちばん責めていたのは、ほかの誰でもなく、わたし自身だったのだと思います。

セッションを受けてくださった方からも、こんな声をいただいています。

長男、次男の小さな頃にしてしまった出来事に対し、自己否定し続けて、今でもずっと罪悪感を感じていたけど、その出来事から今現在の彼らの心身の成長や素晴らしい特性に気付けて、当時の自分を昇華してあげることができたことが、ものすごく大きかった。

ひーくん(30代)

人の価値を仕事で判断する癖があり、父はすごい、母は専業主婦だからすごくないという見方をしていました。しかし優劣ではなく役割であり、バランスを保っていたことに気づけました。

マイ(40代)

※個人の感想です。感じ方は人それぞれで、同じ結果をお約束できるものではありません。

ひとりでできる「失敗の両面」ワーク

いまも思い出すと苦しい失敗があるときは、気持ちが落ち着いている時間に、次の順番で書き出してみてください。

  1. 思い出すと苦しい失敗を、ひとつ選ぶ
  2. 思い出したときのつらさを、0〜10でつける
  3. その失敗で、いやだったことを書く
  4. その失敗があなたにもたらしたもの(身についた力・学んだこと・出会えた人)を、3と同じ数になるまで探す
  5. その失敗がなかったら、いまのあなたに足りないものを書く
  6. 書き終えたら、もう一度、つらさを0〜10でつける

例:新人のころ、みんなの前で注意された

→ いやだったこと:恥ずかしかった/自信をなくした

→ もたらしたもの:確認の手順を自分で作るようになった/後輩がまちがえたとき、責めずに声をかけられるようになった

→ なかったら足りないもの:人のつらさに気づく力

最初は、いやだったことばかりが浮かぶと思います。それで大丈夫です。怖さが強いときほど、いやな面が大きく見えるものだからです。同じくらいの数になるまで、ゆっくり探してみてください。

※このワークは、失敗を「よかった」と思いこむためのものではありません。誰かから強く責められたり、傷つけられたりした出来事を、正当化するためのものでもありません。書いている途中で苦しくなったら、そこでやめて大丈夫です。

参考

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失敗の怖さをほどくワークシート(無料PDF)

この記事でご紹介した方法を、そのまま試せるワークシートを用意しました。印刷して、書き込んで使えます。

1枚目は「怖さを見つめて、小さく試す」です。失敗が怖くて手が出せていないことと怖さの強さ(0〜10)、いちばん怖いこと、「最悪のこと」「たぶん起こること」「起きたらどうするか」、いちばん小さな一歩、友だちにかける言葉を書きます。

2枚目は「失敗の両面を見る」です。いまも思い出すと苦しい失敗の、いやだったことと、それがあなたにもたらしたものを、同じ数だけ書き出します。最後に、あのときの自分にかけたいひと言を書きます。

無料ダウンロード

失敗の怖さをほどくワークシート(PDF・A4/2枚)

1枚目は「怖さを見つめて、小さく試す」。いちばん怖いこと、「最悪」と「たぶん」、いちばん小さな一歩を書きます。2枚目は「失敗の両面を見る」。苦しい失敗のいやだったことと、それがもたらしたものを、同じ数だけ書き出します。

PDFをダウンロードする ›

※2枚目は、ディマティーニメソッドの考え方をもとにした愛原百麗オリジナルのものです(公式教材ではありません)。医療の診断や治療の代わりにはなりません。

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よくある質問

木製のクエスチョンマーク

Q. 失敗恐怖症は病気ですか?治りますか?

失敗恐怖症は、正式な病名ではありません。失敗を怖いと思う気持ちは誰にでもあり、多くの場合は、この記事のステップのように、何が怖いかを知って小さく試すことで、少しずつやわらいでいきます。ただ、怖さで仕事や学校に行けない、眠れない状態が続くときは、不安症やうつ病などがかくれていることもあります。心療内科や精神科に相談してください。

Q. 失敗恐怖症と完璧主義には、どんな関係がありますか?

完璧主義には、「高い目標をもってがんばる」面と、「ミスをしてはいけない、どう見られるかが気になる」面があります。失敗への恐れと強く結びついているのは、主に後者です。高い目標は持ったままで大丈夫です。「ミスをしたら終わり」ではなく、「ミスをしたら、次どうするかを考えればいい」と思えるようになると、苦しさがやわらぎます。

Q. 失敗を恐れないメンタルは、どうすれば作れますか?

失敗をまったく恐れない人は、ほとんどいません。目指したいのは、怖さがあっても動けることです。そのためには、失敗しても困らない小さな場面で試して「思ったほどではなかった」を積み重ねること、そして失敗したときに自分を責めずに思いやることが役に立ちます。自分を思いやれる人ほど、失敗への恐れが小さいことも、研究でわかっています。

Q. 仕事でミスが怖くて、何度も確認してしまいます

確認は大切です。看護の現場でも、ダブルチェックや指さし確認をしています。ただ、確認しても不安が消えず、何度もくり返して仕事が進まないときは、確認の手順をチェックリストにして「この順番で1回確認したら終わり」と決めてみてください。上司や同僚と手順を共有しておくと、ひとりで抱えずにすみます。それでも確認がやめられず、生活に支障が出ているときは、強迫症のこともあるので、心療内科や精神科に相談してください。

Q. 発達障害があると、失敗が怖くなりやすいですか?

ADHDやASDなどの発達の特性があると、うっかりミスや、まわりとのすれちがいから注意を受ける経験が重なりやすく、失敗が怖くなることがあります。それは、あなたの努力が足りないからではありません。ミスを責めるより、特性に合った工夫(メモやアラーム、手順の見える化など)を一緒に考えてくれる人を頼ってください。主治医や、各地の発達障害者支援センターでも相談できます。

Q. 子どもが失敗を怖がって、挑戦しません

結果ではなく、工夫したことやがんばったことをほめてあげてください。研究では、能力をほめられた子は、努力をほめられた子よりも、失敗したあとにあきらめやすくなっていました。失敗しても、親の態度や愛情は変わらないと伝えること、親自身の失敗談を話してあげることも、子どもの安心につながります。

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失敗が怖いと感じているあなたへ

失敗が怖くて動けない自分を、情けなく思ってきたかもしれません。

でも、失敗が怖いのは、あなたがまじめで、責任感が強くて、まわりの人や、自分の大切なものを守ろうとしてきたしるしです。

怖さを、すぐに消そうとしなくて大丈夫です。今日は、失敗しても困らない、いちばん小さな一歩をひとつだけ選んでみてください。そして、うまくいってもいかなくても、「よくやったね」と自分に声をかけてあげてください。ひとりでは、失敗のもう片方の面がなかなか見えないこともあります。そんなときは、誰かと一緒に探したほうが見つかりやすくなります。

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失敗恐怖症を克服するには|まとめ

  • 失敗が怖いのは、弱さではない。怖いのは失敗そのものより、失敗の「あと」に起こると思っていること
  • 失敗の怖さは、恥をかく・「わたしはダメだ」と思う・将来がだめになる・大切な人に見放される・期待を裏切る、怒られるの5つ
  • 失敗恐怖症は正式な病名ではない。完璧主義のうち「ミスや評価を気にしすぎる」面と結びつきやすい
  • 克服の5ステップは、何が怖いかを書く→「最悪」と「たぶん」を分ける→小さく試す→自分を思いやる→「次どうする」でふり返る
  • 失敗にも両方の面がある。怖さが強いのは、それだけ大切にしているものがあるから

今日は、ワークシートの1枚目に、失敗が怖くて手が出せていないことと、いちばん小さな一歩を書いてみてください。

最後までお読みくださりありがとうございました。

失敗が怖い気持ちを、ひとりで抱えなくて大丈夫です

「計算ができない子」と言われた子ども時代から、看護師として39年働いてきたわたしが、失敗の怖さの奥にある、あなたの大切なものを一緒に見つけていきます。
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